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 サーリーのパーティー加入を決めたその後。



 実は今年で7歳だったサーリーは、まだ教会でスキル振り分け儀式を受けていない事が発覚。



 どうやってここまで来たのか聞いてみると、……お金は沢山あったから乗合馬車を使っていたらしい。


 乗り合わせた周囲の大人達は、親を亡くしていたサーリーに同情し、進んで手助けしてくれてなんとか来れたらしく。

 1人の時も『モンスターの尻尾』を大量買いしていたから難を逃れてたんやって。



 アイテム『モンスターの尻尾』は、トカゲの尻尾切りと同じ原理かな。


 大体の動物系モンスターに投げつけると、この尻尾に噛み付いて夢中になるのでこの隙に逃げられる弱小冒険者には有難いアイテム。


 ……フェールさん曰く、必要な材料の中に腐った獣骨、あるんだぜ?



「無事に辿り着いて、良かったのぅ」



 ポルクさんの言葉に、サーリー以外の大人組は大きく頷いた。



「…………あれ、でも手荷物少ないよね? 宿に置いて来たの?」



 スキルの振り分けまだだから、≪アイテムボックス≫持ってるわけ無いし。


 私の質問に、サーリーはおにぎり食べる時も床に置かなかった黒いショルダーバッグを見せてくれた。



「ううん。……このカバンは『アイテムバッグ』なの。……父さまが、偶然出来たからって。私にくれたの」


「へぇ、ちょっと見せて……ふむ! サーリーのお父上は凄いな」



 サーリーの許可をもらってからフェールさんがショルダーバッグに触れると、驚いた様にすぐその手を離した。

 どうやら、彼のスキルである≪錬金≫で反応があったらしい。



「……そんなに凄いんですか?」



 確か、『アイテムバッグ』は道具屋か鍛冶屋でお金出したら買える。……数十万円から数百万、と中々の高額ですが。



「確かに、スキルポイントの節約で『アイテムバッグ』を利用する者もいるが……値段の割に容量はそのバッグの3倍くらいしか入らないし、時間停止も無いからな。……サーリーの物は、高魔力が働いて容量が段違いに多そうだし、おそらく劣化スピードもかなり緩やかだ……お父上は、才能溢れる素晴らしいお方だったのだろう」



 フェールさん。べた褒めである。

 自分が作ったわけじゃないからやけど、おそらく≪アイテムボックス≫の5段階……スキルポイント10p使用したくらいの容量と劣化スピードちゃうかなって。


 ……容量の目安が貴族じゃない、4人家族の家一軒分っていうよく分からん説明やってんけどね。



「……そ、そう? ……父さま、凄い?」


「ああ。同じ≪錬金≫を持つ者としては、一度ご教授願いたかった」


「……えへへ」


「……」



 うんうん。私には分かる。無表情でも分かるよ。

 ディルが慈愛のこもった顔で、照れてるサーリーの頭を撫でてるって。

 その姿は、可愛いを通り越して、尊い。


 ……どうしてこの世界にはカメラが無いのか、と。

 私は絶望した(心の中で血涙流してる)




 そんなこんなで、フェールさんに当初の予定通りアンデット素材買い取ってもらってから。


 私とディル、その間に手を繋いだサーリーの3人(もう仲良し親子にしか見えない)で教会に行って儀式を受ける事になった。



 ……そういえば私、教会行くの初めてやなぁ。



 脳内知恵袋によると教会は国とは別の組織、騎士団を所有している。その発祥の地は≪ユートピア≫にある小さな町。


 長い年月の間に教会の本拠地は王都エイデンに変わってしまったけど……一応、表向きは別組織。

 今は、困った事があったら協力する間柄に落ち着いているみたい。



 それぞれの国が保有する軍隊。

 世界各地の教会が保有する騎士団。

 世界各地のギルドに登録している冒険者。



 一応この3つが、この世界でモンスターに対抗しうる勢力になってる。


 まあ、私達が今居る≪デカラビア≫には軍隊は無いけど。

 6つの代表的な種族の族長達で(まつりごと)を行なっているらしい。


 元々獣人は冒険者になってる人が多いのもあって、大体自分の生まれた町や村、その周辺を拠点にして行動する。


 人に頼る前に、自分でなんとかしよう精神が強いみたいやな。



 そんなこんなで歩く事数十分。

 町外れに到着した私達は、木々の隙間から見える白い建物を発見した。


 教会は、私の想像通りの姿でちょっと安心。

 教会と同じ敷地に住居スペースっぽい2階建ての建物があるから、サルーの町に居る騎士団の人達はここで生活してるのかな?



 そして教会の入り口には、白い甲冑を着込んだ騎士が2人立っていた。



「おや、これは珍しい」


「英雄殿が教会に何用か?」



 声だけ聞くと若い砕けた雰囲気の騎士と、同じく若い古めかしい雰囲気の騎士それぞれに声をかけられた。



 ……む?


 何やろ。相手は普通の言葉を使って、普通の声音で話しかけた筈やねんけど。


 ……何で私、今イラっとした?



 私だけやなくて、サーリーの可愛い顔も、ちょっとむっつりしてる。私と繋がれた手に力を込めてる。


 ……私とサーリー、もしかせんでも気が合うなぁ。



 私達の変化に気付く事なく、ディルは少し気まずそうに声を出した。



「……俺じゃなくて、……この子の、付き添い。…………マイ」


「何?」


「……2人は、先に…………中のシスターに、声掛けて」


「え、おう……あ、ディルはっ、……一緒に、……入らないの?」


「…………ディル」



 ほらほら。サーリーが悲しげに見上げてるよ!

 繋いだ手、めっちゃくいくいしてるよ!!?


 それでもディルは、申し訳無さそうな雰囲気を醸し出しながら離れようとする。



「…………お、俺は……」


「けっ、化け物が殊勝な事で」


「おい、子供の前でやめよ」


「「……ぁあん?」」



 私とサーリーは、鎧兜のせいで顔の見えない騎士相手に、しっかりがっつりガン飛ばした。







追記

内容はあまり変えずに少し書き直しました。

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