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お久しぶりです。

遅くなりましたが暇つぶしにどうぞ


私もなりましたが、皆様も熱中症には気を付けて。

なったから分かる。めちゃ苦しい。鞄手荷物にお茶と塩分タブレット入れときましょう


前半マイ視点、後半ノーラン視点になります


 

 私の思わず出てしまった叫びに、ファレンちゃんはキョトンとした顔で首を傾げてる。



「だって1番強いのが王様であるセイロンなんだから、戦わないなんて選択肢あるの?」



 と続いた発言に、可愛いかあいいファレンちゃんも、弱肉強食ちっくなお国柄らしいデスペリア出身のお人なんやなぁと私は思い直した。うん、これが噂の戦闘民族。



「えっと、つまりどういう……?」


「……此度の異変の元凶が、我が国にある。ならば王たる私は、コレを排除せねばならない…………異世界の者に頼らずとも我等は戦える、と。……女神に見せ付けなければならないと、今回の戦いで私は強く思っている」



 セイロンさんはガルガディア王とはまた違った、断定的で此方も為政者らしい物言いなんやと思う。

 ……でもそこに、そこまで表情にも声音にも出てる訳でもないけど……ホンマに、何となく、申し訳なさそうな雰囲気が含まれてるのを私はセイロンさんから感じた。


 ……黒く染められ囚われていた、彼等彼女らの事を想ってそう言ってくれたのなら。不憫だと、可哀想だと……もうそんな事しなくていいんだと、自分達で何とかするから、もう大丈夫なんだ、と。

 言外に伝えようとしてくれてるんなら。


 ……帰っていったあの人達が、ほんのちょっとでも報われたらいいな。



「だから進み、戦うのはデスペリアに住む私達の役目。でも私達だけじゃダンジョンに入れない……だからサーリーには、不可侵の城へ入る手助けをしてほしいの」



 ファレンちゃんが言うには、元々デカラビアに来た目的はダークエルフ……もっと言えば(いにしえ)のデスペリア王家に連なる子孫、もしくは所縁ある品物を探しに来ていたらしい。

 自国は数年かけて調べに調べ尽くし、ダークエルフの存在が確認されなくて次は隣国デカラビア……それも王様自身が武者修行もかねて探しに来ていたらしい。

 確かに、言われてみればラスボス前にレベル上げはやるよね普通! だって死にたくないし!



「サーリー連れてくなら、俺達も行く」



 ディルの言葉に、私達も大きく頷く。そりゃあちっちゃい子に保護者同伴するんは当たり前なんで!



「……これは、我が国に発生した問題だ。我等だけで対処出来る……そう言いたい。しかし正直に言えば、今回の立役者たるお前達が一緒だと心強い。…………お前達は、()()()の私よりも強いだろうから」


「違う!!!」



 セイロンさんの自身を貶めるような言葉に、ファレンちゃんが即答する。その声はファレンちゃんが出すにはあまりにも悲痛に満ちていた。



「何言ってるのっ!? セイロンは強いの! セイロンは凄いのっ! セイロンはっ! ……セイロンが何を奪ったって言うの!? 貴方は()()()()のにまだっ! まだそんな事思ってたのっ!? まだ分かってなかったのっ!? この頭トンカチ!!!」


「……はぁ……ファレン、私は頭が硬いと言いたいのか」


「いやそこじゃねぇだろ」


「……ぅぅううゔセイロンのバカーーうわあーーーん!!!」


「いや幼児の泣き方かよ」



 ノーランのツッコミに私も同意である。絶対そこと違うし、セイロンさんの肩の上での地団駄&ギャン泣きはサーリーと同年代やった。ファレンちゃん何歳やったかな?


 ま、まあ何やファレンちゃんの泣き方悲壮感たっぷりやし込み入った話もありそうなんやけど……こっちにも物理的に時間無いしな、困った。



「……」



 地団駄後の興奮が少し落ち着いたファレンちゃんは、気にしないでの一点張りで……取り敢えず沈まない太陽問題を解決したら、サーリーと一緒に私達もデスペリアに行く事になった。

 勿論、ガルガディア王に報告しにいく約束もあるから、諸々の報告もその時にね。


 今回は世界の異変の解決に関わる事やし報酬は要らないってサーリーもディルも言うんで、それなら聖域まで行く運搬係と戦力になってくれるって。

 これも修行になるってセイロンさんが言うてる……うん。

 セイロンさん、王様っていうより修行鍛錬大好きな某戦闘民族アニメに出てきそうな感じに……何でそう思ってもうたんや私。もうそんな眼でしか見られへんやん私!!!


 ……ま、まあそれは置いといて。アオツキちゃんも止めなかったし、手伝ってもらうのは段取り的にも多分大丈夫なんやろう……なんかセイロンさん見ながら考え事してたけど、大丈夫かな。

 ノーランの目付きが物騒やねんけど、修羅場ってないかな???


 そんな心配をしながら、ディルとルシファーにはちょと大きめのリンゴ、私とサーリーは小ぶりのを皆一緒に齧りながら空の旅を進んでいた。



 ――――――――――――



「……」



 オレンジ色のドラゴンの背中に跨った俺にへばり付きながら思考の渦に沈んでるアオツキは、やっぱりオレンジ色のドラゴンの頭を見詰めている様に見える。

 何か重要な事に気付いたんだろうが……やっぱ俺じゃない(オス)見てるの腹立つな。ディルムッドとルシファーは平気なんだが……これはセイロンの頭に付いてる鱗と鬣、円形に毟り取ったら気分も晴れるか?

 そんな事を考えていた俺の耳に。



「精霊の双子」


「っ!?」



 と言うアオツキの呟きにはやや大きめの声が聞こえ、ファレンが青褪めた顔で俺達に振り返った。



「なんで……っ」


「ディルの中にいた時は分からなかったが……その様子だと、僕にも野生的な勘があったらしいな」



 アオツキの言葉に、ムカムカしていた俺の思考は綺麗さっぱり切り替わった。自分ながら現金だと思う。


 精霊の双子とは、人と精霊が共に産まれる事。俺の知る中ではアオツキとディルだけだった。

 精霊の双子はその恩恵で強力なスキルや身体能力に恵まれやすい。それ故に、精霊の双子は大昔に戦争で利用されてきた。


 精霊に人の体を持つ片割れの肉体を奪わせ、能力の飛躍的な底上げをし強力な戦力として扱われていた。……人の体を持つ片割れの魂は、喰らわれ奪われる。

 アオツキとディルムッドが迎えるかもしれなかった、もしかしたらの結末。


 サーリーのくれた人形は驚く程にアオツキに馴染んで、もうディルムッドを欲する事が無くなったらしいし……ヒューリッヒの旦那には、どんなに感謝しても足りない。今回のドタバタでちゃんと挨拶も出来なかった。

 また何処かで逢えたら何かしらの礼をしないとな。


 ……確かデスペリアは、だいぶマシになったが未だに小競り合いが続いているんだったか。王が決まる前はもっと血みどろな争いが頻発していたらしいが……つまりそういう事、か?



『…………兄は。争いとは無縁の優しい人だった』



 セイロンが静かに言葉にするのを、ファレンは泣きそうな顔で大人しくなった。



『……何が原因だったのか。エルフの血が濃かったのか、それとも竜種の力が強過ぎたのか……その両方か。いつだって兄は火傷で血みどろで、いつも周囲を……自身の腕や顔を焼け焦がしていた。しかし竜種の回復力も半端に強くその傷は半ばまで癒え、しかし治りきる前にまた血みどろになって…………私は、火の精霊として産まれた。兄が周囲を焼く炎をほんの少し取り込む事しか出来ない、その身を守ってやれない……出来損ないの、火の精霊だった。己の無能さを目の当たりにし続けていた……ファレンが産まれるまで、そんな日々の繰り返しだった』


「竜の巫女……聖女は全てを癒す者だが、巫女は特定の存在の癒す者、だったか」



 アオツキが言えば、セイロンの首が軽く上下した。



『そうだ……まだ幼かったが、ファレンが歌えば兄を傷付ける竜種の力を随分と鎮められた。兄も心穏やかに過ごす時間が格段に増えていたと思う……ファレンには……感謝している』



 成程……あの歌、竜種の暴走を抑えられるのか。ガキの頃、俺に封印を施した偉い魔法使いも竜の巫女って奴だったのかもな。

 ……だが、それなら今セイロンが兄の体を手に入れているのはどういう訳だ?

 俺の疑問は顔に出てたのか、ファレンがへの字の口でこっちを睨んでくる。



「……私達の生まれた村も、紛争に巻き込まれたの。周囲の小さな村が寄せ集まって、何とかギリギリ乗り切っていたみたいだけど、もう皆限界だった。……()()()()()も、限界だった……っ」


「お兄……って、じゃあお前ら」



 まさかだった。

 俺、てっきりデキてるのかファレンの片恋かと思ってたのに。



「……ファレンは私達の……随分と遅くに生まれた、腹違いの妹だ」





次回は番外編、セイロンサイド投稿予定です

いつもより早めに投稿したいと思ってはいるんですが……社員さんの長期休暇取得の為に私が連続出勤するってどういう(´;ω;`)

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