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お久しぶりです!
なのですかまだまだ説明続きます!
それでも良かったら覗いてやって下さい!
「え……?」
私は無言で俯くサーリーの後頭部を見ながらアオツキちゃんの言葉を必死に理解しようとするけど、何だかよく分からん様になって来た。私、話の流れでお母さん的存在が居るならてっきりツクヨミ様やと……。
そんな私から視線を外して、アオツキちゃんはサーリーを見詰めながら溜息ついてた。
「その様子だと、サーリーは薄々気付いてたか……干渉でもされたか?」
「……一回だけ、声、かけられたけど……忙しかったから無視した!」
ふんす、と鼻を鳴らしながら顔を上げたサーリーの顔はドヤ顔や。……母親恋しいって感じやないその様子に、私とディルは安堵の溜息が溢れる。……サーリーが寂しがるなら、会わせた方が良いんかなーとか……嫌やけど考えるとこやったから。そうならんみたいで良かった。
誰が何と言おうともうサーリーは私とディルの娘やもんな。いちゃもん付けるんなら言い返すもんな。色々倍返しやもんな! むしろ連れてこうとしたら私とディルでタコ殴りやな!
「にゃ、サーリー。今度神様的なのから声掛けられたら、教えてね」
「……うーん、もう無いと思」
「教えてね」
「あっはいちゃんとしらせます」
ああ! 瞳孔かっぴらいてるディルに見下ろされたサーリーが敬語&高速で頷いてる! それを見たアオツキちゃんとノーランの顔が酸っぱい物食べてる時の顔に! この似た者幼馴染め!
話、続けて下さい!
「ディルは落ち着け、まったく……あー、何処まで説明したか……アマテラスはこの世界の海、空、大地に魔力を含ませ創造していた。何故なのかは僕も詳しくは知らない。僕等に理由は必要無いと考えたんだろうが……兎に角この世界は魔力で成り立ってる。そんな世界でアマテラスがいくら分割しても、ツクヨミが用意した僕達原初の精霊の力は強過ぎた。……だから、精霊をコントロールさせる存在をアマテラスは急遽用意した。アマテラスは、その場でツクヨミと同じ分け御霊の儀式を行ったんだ。……と言っても、半身って訳じゃない。マイの世界には多種多様な神が存在し、アマテラスは太陽を意味する神だった。星の名を持つ神は偉大で強く、中々に小技を持ってる」
私はうんうん頷きながら次を促した。
「マイの世界ではそれぞれの国で太陽神の名も逸話も多岐に及ぶ。しかし全てが同一の存在だ。ツクヨミも同じ星の名を持つ神で名も逸話も多いが、正気を失いかけた為に狂った部分、『月読命』が切り離された状態だった」
「えっと……つまりツクヨミ様はこの世界に現れた時点で、大元から分け御霊されてた状態やったって事?」
「そうだ」
成る程。
「だから各地で名のある太陽神であるアマテラスも分け御霊がしやすかった。……アマテラスはツクヨミや精霊、人々を見守る事を目的に天から監視する『眼』を逸話に持った『太陽神スーリヤ』の側面をこの世界に切り分けたんだ」
「天から監視、ね。……現在進行形ってか」
ノーランの視線が窓の向こう、燦々と照りつける陽光を睨んでる。
新しい神様の名前や……太陽神スーリヤ、か。聞いた事あるような無いような? 何やったかなー何かのゲームで見た筈やねんけど、どのゲームやったかな……ああ携帯スマホがあればぐぐっと楽やのになぁ!
「スーリヤ単体だと僕等原初の精霊同様力が強過ぎたから、スーリヤ自身も分け御霊の儀式を行った。そして、アマテラスが急遽用意した肉体にその精霊……魂を宿した。これか最初のヒト、ダークエルフだ。与えられた名は紫音。紫紺の瞳、褐色の肌と白銀の髪を持った男の幼児だった。……後の世界で精霊に愛されし者、サタナエル、サタンと呼ばれる男であり、僕の友であり……サーリーの父親だ」
サーリーが隣に座るディルの腕に縋り付くのが見える。背後からルシファーも首を伸ばしてサーリーの頭上から様子を見てる。
「こうして、何とか箱庭は整った。確かに問題も色々とあったが、何とか僕等の力と箱庭のバランスは保たれたんだ。蒼月を産み出したツクヨミも一時的に冷静さを取り戻したし……初めは、上手くいっていたと思う」
切り取られた空間には空と海原、そこに存在する大陸が3つ。これがツクヨミ様に与えられた世界……≪リヴァイヴァル≫という名の世界、箱庭やった。
「北の大陸は他の大陸に比べ平均気温が低く、季節によっては雨や霧、雪が多い。しかし他の大陸と比べて面積は1番広い。資源はそこそこで、平坦な山と平原が多い。ツクヨミはこの大陸を、身体能力に難はあるが知恵絞るヒトの国と定めた」
何処からか取り出した地図をテーブルの上に広げながら、アオツキちゃんは北にある楕円形の大陸を指差す。
「南西にある潰れた星型に似た大陸は亜熱帯に近い気温と湿度のある大陸だった。他と比べても食料等の資源は多いが比例して険しい山や森林が多かった為、ツクヨミはこの大陸を自然に適応出来るだろう獣の性を持つ獣人の国と定めた」
そのままアオツキちゃんは指を滑らせ歪に歪んだ星形の大陸を指差す。
「南東にある美しい正三角形の大陸は、この世界を象る要素である魔力が多かった。ツクヨミはこの大陸を魔力量豊富な種族、エルフやドワーフの国と定めた。ちなみに人種の選定は、元々この世界の要素はマイの世界とは違うと聞いていたのもあるし、隣り合った本来なら交わる事のない様々な世界の種族も愛したい、とツクヨミが望んだのもある。……世界とは、隣り合ってるだけ、人々の紡ぐ物語の数以上に存在するから」
最後に指差されたのは正三角形の大陸で、皆地図に向けていた視線をアオツキちゃんへと戻した。
「ツクヨミは早速人々を生み出そうとしたが、アマテラスはそれに待ったを掛けた。神々が信仰される人の心を糧とする様に、人々が生きる為には衣食住が必要だと説明したからだ。だからまずは人々が暮らせる様に大陸を整える事から始めなければならない、と。ツクヨミは弱っている状態だが、ある程度の森林は既に存在しているのだから少し弄ってみなさい、とか何とか言っていたな。これに成る程、と納得したツクヨミは僕やシオンが居心地が良いと感じた正三角形の大陸を拠点として開拓を始める事にした。……まだこの時、この世界に夜はあっても月はなかった」
この時のツクヨミ様はまだ弱っていたからだとアオツキちゃんは続けた。
「まずその大陸に合った草花や樹木を追加して与えた。美味しい木の実は勿論、毒にも薬にもなる植物も用意して。この時気候や四季を明確にした。細かい調整を続けていけば海原では大小様々な魚が泳ぎ、大陸では小動物や小型の鳥が走り回り飛び回る様になった。……予想外だったのは、世界に漂う魔力と動植物が交わり独自の進化を遂げた事だ。凶暴性に差はあれど、これがモンスターの誕生になった。……ツクヨミは、その生まれた命に感動し涙を零しながら調整を続けていった。こうして基本となる世界が出来上がり、僕等は次の段階に移った」
必要以上に似せてしまうと世界と世界が交わる現象が発生する原因になるだろうから、アオツキちゃんはアマテラス神が隣にあるんだろう私の世界の理とは異なる世界にしたんじゃないかと予想してる。私の世界では科学の進歩したみたいに≪リヴァイヴァル≫では魔法やスキルの開発が急がれたやろうな。
この世界の人々は産まれた時から魔力を持ってたけど、魔力を持っているだけの状態やったらしい。手からそのまま火や水が噴き出すだけで、ちゃんとした魔法として発動出来るモノじゃなかった。
だから人々に魔法として、スキルとして魔力の使い方を教えたいけど、加減を間違えれば暴走し折角生まれた命が危険になる可能性もある。だから先ず、ツクヨミ様は魔法やスキルをサーリーの父親であるサタン……当時シオンを名乗っていた彼に作成と試作をしてもらう事にしてんて。
本当ならシオンを大人の姿でも産み出せたのに、幼い姿にしたのは小さく弱い体でも魔法が使用可能か、また魔力が原因で発育不全などの問題も無く成長出来るのかの確認も兼ねての幼い姿やったらしい。……動物実験みたいで気分はあんまり良くないけど、本人もそれが役割やと納得してたらしい。
そんで、この頃には自我の形成がまだな状態の闇の精霊達も帰って来てたらしい。
「僕達世界樹の精霊は其々の大地に根付き、シオンと精霊達は命ぜられるまま魔法を、スキルを使用する日々を過ごした。大陸を育んでいた時間は凡そ100年。シオンはその間に成人の姿となり、青年の姿に成長した。またこの100年の間にヒトや獣人等様々な存在も産み出した為、 どの大陸にもそれぞれの活気が生まれていた」
ツクヨミ様とシオンは、出来上がった魔法とスキルを人々にこっそり与えながらその都度『夢』と称して使い方を説明し、調整しながら改良してたらしい。魔法によって生活が豊かになり、幸福そうな姿を見てツクヨミ様は泣いて喜んでたんやって。
……でも、ツクヨミ様の幸福は長く続かない。
「魔法とスキルを与えられた人々は、生活の豊かさを手に入れた。そして、向上心がある事こそがヒトの美徳であり、また醜悪な部分でもあった事をツクヨミはあの時知ったんだ」
それぞれの大陸が、魔法とスキルを使っての戦争を始めたんや。




