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今回からまたマイ視点に戻ります。


 


 アオツキちゃんの号令でテントから出た私達は、モエちゃん達勇者様御一行と馬獣人親子と結構強引にお別れした後、リカルドさんに一声かけてアニスさんから人数分のシチューを貰って一旦家に帰宅した。

 ちなみに結構強引な方法とは、サーリーを愛してやまない憤怒の精霊さんが活躍したからである。



「其方らは、このサーリーの穏やかな、時間を……妨げると、いうのか? ……()()()()()()()()構わんか?」


「「「「帰ります!!!」」」」



 どうやら北門の所で共闘してる時、ラースさんの特殊スキルで戦闘は助かったんやろうな。それが自分達に向けられるのはヤバい、と即断する程の威力やねんな。アオツキちゃんが言ってた……確か≪激情≫って名前のスキルやったかな。ニュアンス的に感情の昂りで攻撃力上がるんかなーって私は思っててんけど。モエちゃん達の怯え方が尋常じゃないからそれだけじゃないんかな? ……北門周辺、廃墟にはなってないよな?


 触らぬ精霊に祟りなし。キャパオーバーやから、今は深くは聞かんとこう。



「明日から忙しくなる。リカルド、区切りが付いたら冒険者も職員も今日はしっかり、()()()()()()休ませろ。……明日の朝か、寝坊しても昼には僕達もギルドに顔を出すから家には突撃してくれるな」



 まあこのアオツキちゃんの言葉に不穏なモノを感じて素直に応じたって所もあるんかな。ちゃんとリカルドさんにも了承得て、私達は一旦帰路についた。

 アオツキちゃんの言葉に、緊急依頼は終わったけどまだまだこれからなんやって感じる。これから何か始まるんやって私でも分かったから。

 だからか、勇者様御一行……というかユーリ王子と黒騎士アルフレッドさんが率先して動いてサルーの町から旅立って行った。馬獣人親子のムスタファさんとタルファ君を≪デカラビア≫の世界樹近くにあるらしい、獣人の長だけが知ってる集会場に送ってから≪ユートピア≫に報告に帰るねんて。



「ああ〜聖女様とその旦那様、≪聖域≫の近く通った時にでも私かタルファの名前呼べば仲間が集落まで案内してくれると思うんで〜」


『絶対〜来てね〜!』



 馬獣人の長ムスタファさんと動く雪だるまな水の精霊フロストのゆるい声とは正反対の、真剣さを滲ませた瞳が印象的やった。



 そんで現在。時間的には夜8時。


 体を手に入れたラースさんとサラマンダーは、一緒に家の屋根で見張りするねんて。サーリーの憩いの時間を邪魔する不埒な輩は成敗したいラースさんに、敵意持ってる人以外は優しく帰ってもらうだけで良いと説得するサラマンダーとサーリー、とっても偉い。


 何とか我が家に着いて、仮眠してちょっとマシになってるノーランとサーリーも私達と一緒に一階リビングでシチュー食べてる。ちなみに私は半分寝ながら食べてる。体は疲れ過ぎてるって分かるのに、眠いのに寝れない感じが続いてる。

 テントに居る時は寝そうになったけど、今はもう気になる事があり過ぎて無理や。だから心配したディルが甲斐甲斐しく看病よろしく私にあーんしてくれる。普段なら恥ずかしいけど、もう照れよりもしんどいのが勝って私もされるがままや。ディルもご機嫌やし良しにしとこう。



「……確認なんだが、マイはレベル50を超えたんだな。変化可能なスキルがあったりするか?」


「むぐむぐ……変化可能?」



 長方形型で8人掛けの木製リビングテーブルで、私、ディル、サーリーの向かいでノーランの膝上に抱えられたアオツキちゃんに声を掛けられた私はそういえば、とシチューのにんじん飲み込みながら自身のステータスを思い出す。


 ――――


 ●マイ

 ●レベル:63


 ●MaxHP:1140

 ●MaxMP:2490


 ●力20

 ●魔69

 ●守95

 ●護95

 ●早35

 ●運63


 使用MP半減

 状態異常無効(即死含)

 世界樹の加護

 月の女神の寵愛


≪特殊スキル≫

 レア:結界Max50p使用

 鑑定Max10p使用

 鷹の目Max10p使用

 薬師Max20p使用(スキル変化可能)

 アイテムボックスMax20p使用


≪魔法スキル≫

 聖魔法Max80p使用

 火魔法1p使用

 水魔法1p使用


≪武器スキル≫

 異世界武器:銃1段階2p使用


 計194p

 余り26p


 ――――


「加護とか寵愛とか色々言いたい事あんねんけど……えっとスキル変化可能ってやつが≪薬師≫のとこに……?」



 私がそう言えば、脳内でステータスが≪薬師≫に切り替わる。



 ――――


≪薬師≫

 ポイント振り分ける程、薬品系アイテム作成時にボーナス効果を付加。


 変化可能スキル→≪料理人≫


 ――――



「……≪料理人≫?」


「ぶっ」


「あーノーランきちゃない」


『るぅーきちゃないのー』



 私の言葉にシチューが変なとこに入ったらしいノーランがむせて、サーリーと私達の席の後ろでとぐろ巻いてたルシファーの楽しげな声が聞こえる。少し汚れた口元を膝上のアオツキちゃんがハンカチで拭ってあげてる。うんうんちっさいけど良いお嫁さんやね。



「げほっ、マイ、お前≪薬師≫Maxにしてんのに全然スキル使わなかったのか!?」


「へ? 何で知って……まぁうんその、色々あって、使うタイミングが……」



 いや、私も異世界転移したばっかの時はポーションやエーテル作って生計立てようと思っててんで? それやからスキルもMaxにしたし、レベル問題でアレやったけどツクヨミ様に薬の材料豊富なヒヒの森に送ってもらってんから。

 ディルと出逢ってもその考えは変えてなくて、聞けば道具屋さん経営してて≪錬金≫と≪薬師≫どっちも持ってるフェールさんに教えてもらおうって話も、実はしててんで?



「……だってあの時は教えてる時、俺仕事で居ない。俺の、マイなのに……フェールと2人っきりになっちゃう……にゃう、にゃうん」



 そう。

 ディルがこんな風に嫌って言い……もとい、泣きそうな顔でにゃうんにゃうんと鳴いて、その顔見たフェールさんに指導拒否された私はポーションエーテルその他諸々の薬品製作実績、現在進行形でゼロやねん。

 まぁサーリーと出逢った後もディルと一緒の冒険者生活が充実してたし、もうちょい落ち着いてからで良いかなーって思っててんけど。



「……ああ、成る程。全て理解した。愚弟(ディル)がすまないなマイ。……レベル50まで達成すると、これまでの経験で条件を満たした場合、ポイントがMaxになってるスキルを変化させる事が出来る。例えば≪錬金≫や≪薬師≫や≪鍛治≫みたいな作製する時にボーナスが付く様な特殊スキルは、特定のアイテムばかり作製しているとそのアイテム特化で高い効能のボーナスが付きやすいスキルに変化する。多分だがあの無表情エルフ……ヒューリッヒがこれに該当する。僕の体(にんぎょう)の性能があまりに良過ぎる」



 アオツキちゃんの溜息混じりの説明に、これまでのヒューリッヒさんを思い出せば成る程と納得。サーリーの人形だけやなくで、あのカラフルな藁人形も凄かった。



「……ん? じゃあ私の≪料理人≫って」


「薬作るはずの≪薬師≫が! 料理しか作ってなかったっつうのが良っく分かるスキル変化だ!」



 席から立ち上がって身を乗り出したノーランの左腕がディルの虎耳頭を鷲掴みながらギリギリ締め上げてる。

 怒れるノーランにディルも涙目や。



「にゃう〜マイ〜ノーランが〜」


「泣きまねうぜぇ! おいマイ! 今回はディルムッドを甘やかすなよ! 回復に特化してるマイなら≪ポーションマスター≫とか≪エーテルマスター≫とか絶対変化可能だったのに、それをお前は……!」


「ならノーラン! フェールとにいねぇちゃん2人っきりに出来るの!? 手取り足取り教えるフェールに、槍ぶっすりしたくならないの!?」



 可愛くてカッコいいディルが、アホっぽいのにめっちゃ怖い事言ってる。殺人予告してる。フェールさんは断って正解やった。



「……アオツキ」


「まさかの濡れ衣!? 僕はノーランだけなんだが!?」


「だってよ」



 あわあわしてるアオツキちゃんと、ふふんと鼻を鳴らしてご機嫌なノーラン。わー、これが、バカップル。



「にゃうぅ〜」



 まぁイチャイチャしてても頭掴む腕は離さない、と。



「はいはい鳴かない鳴かない。ノーランもやめたって。えっと≪料理人≫は……」



 ――――


≪料理人≫

 作成した料理にボーナス付与


 ――――



 まぁそうなるよな。でも私なら回復系のボーナス付きそうやし、そこまでノーランが怒る事無いやん?

 その事を言えば、ディルの頭から手を離したノーランが明後日の方向に顔を向けて着席。ノーランが立ち上がった拍子にふよふよ浮いてたアオツキちゃんは、ノーランの膝の上に座り直してそのお腹をぺちぺち叩いてた。



「ふん! ノーランの事だ。材料は集めるから上級エーテル作ってくれって言いたかったんだろ」



 ぴくっと体を揺らしたノーランに、アオツキちゃんの表情が呆れに染まる。



「マイにはあまり説明してなかったかもだが、ノーランは竜種特有の≪薬物耐性・強≫を持ってるから、回復アイテムは上級の付く高価なものじゃないとほぼ効かないんだ……大体僕は前々から単身特攻、正面突破しまくりたい戦闘狂精神をどうかと思ってるんだ。まぁディルが大きくなってからは2人で特攻だけどでもディルと2人で先行して良いってわけじゃないんだ避ければ良いとか言って軽装備で死にかけても死んだらそこまでとかホントにふざけ」


「あーあーはいはい俺が悪かったよごめんなさい!」



 仲良いなぁ。幼馴染って感じが凄いする。さっきまで怒鳴られてたディルが今は私の隣でニッコニコやし。

 私以外はレベルちょいちょい上がっただけでスキル変化とかは無いらしく、今は保留。

 ……外も気のせいか騒がしくなって来たし。


 なので、今。

 私達が、町の住人達が……この世界≪リヴァイヴァル≫に生きとし生ける者達が、今1番聞かなきゃならん事をアオツキちゃんに聞こうと思う。



「なぁ、アオツキちゃん」


「何だ」



 きっと何を聞かれるのか分かってる顔で、アオツキちゃんは私を見上げる。



「いつになったら()()()()()?」



 夜8時をとっくに過ぎてるっていうのに、窓の外は燦々と太陽の光が降り注いでる。

 そりゃあ私の眠気も吹っ飛ぶやろ?




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― 新着の感想 ―
[一言] 生息地『夜』な方々が泣きそうな案件(笑) 吸血鬼とかーゴースト系な方とかー……滅べばイイのか?←鬼(笑) 食べたらスゴいんです!なエーテル系料理が出来るかもしれないじゃまいか!希望は捨てち…
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