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マイ視点で続くのですが、ちょっとだけ下品な表現があります。それでも宜しかったらどうぞ!
そんな訳で、楽しくるぅるぅ遊んでる闇の精霊暴食のグラトニーを≪テイム≫しようと、モエちゃんがしゃがみ込んで視線を近付ける。柴犬位の大きさのハリネズミが背中を押してお互いに見詰め合う。
「えっと……あ、君も名前付けたら良いんだ。なら……うーん。ルーちゃんだとルシファー君と被っちゃうから……あ、ルルちゃん? ……嫌かぁ。なら竜種らしくりゅうちゃんは? ……微妙かぁ。……そもそもオスとかメスってあるの?」
「言い出したの、確かに俺だけどさ……なあモエ。頼むからもうちょい、この世界での普通っぽい名前にしてやれよ」
……何か意外。モエちゃん名付けとか苦手なんや。ショータがマトモに見える。
「む、どういう意味?」
「そこから? ……敵だったけどさ、同情でもないけどさ、なんとかちゃんって……流石に哀れ過ぎるんだけど」
「うーん……あ! ねぇ、ちびちゃんは?」
「お前ぜんっぜん聞いてないな!?」
「るぅ……るるる」
「っ……あ! ほらほらショータ! ちびちゃんが良いって! ちびちゃんで契約するって表示されたよ! 本人から了承したって文字出たよ! ふふ……これから宜しくね、ちびちゃん! ≪テイム≫!」
「るぅるるる〜」
こうして、口元をへの字に曲げたショータの前でモエちゃんのテイム・モンスターに闇の精霊『ちびちゃん』が加わった。
保護者なユーリ王子と黒騎士アルフレッドさんがモエちゃんに精霊とは〜って色々説明し始めてすぐ、各地で闘っていた冒険者達が徐々にギルド目指して帰って来た。
綺麗な公園みたいだった広場の惨状に驚いたり、寝てるファイアドラゴン姿のセイロンさんに若干ビビりながらもリカルドさんや私達の姿を見付けた皆で無事を喜び合って。
特に≪結界≫施した私は感謝されてるらしく、お礼って言いながらボディタッチ多いスキンシップな獣人系冒険者達に群がられた。よくディルの尻尾や虎耳もふもふしてる私の姿が目撃されてるそうで、動物耳や尻尾や羽を差し出そうとするヒト(勿論女性)が多くて多くて。特に北門への助力求めて単身で町を飛び回っていたパーティー≪漆黒の翼≫のマルルは、惜しげもなく純白の翼で感謝の抱擁してくれた。……おっかしいなぁ戦闘後やのにめっちゃ良い匂いでふあふあやねんけど!?
無意識に欲望のまま動きそうになる右腕にどうしようかと思った。
「ぐるるる……マイが触っていいの、俺なのに……ぐるるぅ……うー! それ、浮気! 女の人でもダメだもん!」
……まぁ。嫉妬したディルが男女関係無くぐるぐる唸りながらの威嚇で追い払ったけど。抱き締めてくれたマルルさん今も追い掛けてるけど。装備の効果とかもあるかもやけど、ディルより素早いらしく逃げ切れてる。
そんでこの時。
まだ年若い猫系の獣人さんが、リカルドさんの姿を見付けて駆け足になりながらかけた第一声が……。
「リカルドさぁぁん! 報酬のスキルポイントが大盤振る舞いの20pなんですけどおおおお!!?」
「「「「「なぁにぃ!!?」」」」」
特殊スキルと魔法スキルを成長させるスキルポイントが!?
確か、今までの緊急依頼だと最高でも10p配布やったのが、倍!?
その場の全員、勿論私含めて慌ててステータスを確認し始めたのは言うまでもない。
――――
●マイ
●レベル:63
●MaxHP:1140
●MaxMP:2490
●力20
●魔69
●守95
●護95
●早35
●運63
使用MP半減
状態異常無効(即死含)
世界樹の加護
月の女神の寵愛
≪特殊スキル≫
レア:結界Max50p使用
鑑定Max10p使用
鷹の目Max10p使用
薬師Max20p使用(スキル変化可能)
アイテムボックスMax20p使用
≪魔法スキル≫
聖魔法Max80p使用
火魔法1p使用
水魔法1p使用
≪武器スキル≫
異世界武器:銃1段階2p使用
計194p
余り26p
――――
「……ん?」
確かに20p貰えてる。これは後で、新たに魔法スキルに振り分けて……って、あれ何か違う。
私のステータス、数字と文字の羅列がオカシイ。あ、疲労から視界が歪んでんのか。そっかそっか、と目と目の間、鼻の付け根部分を指で挟んでぐりぐりマッサージしてからもう一度ステータスを確認。うんうん……………………変わらへん、やと!?
「ひぃいいレベルが60超えとる上がり過ぎてる何か増えてる変わってるオカシイなんで!?」
私の記憶正しかったらレベル20代やった筈やけんけど!?
あと何か増えてる、加護とか寵愛とかいつの間にか増えてるし細かい所何か仕様変更されてるうううう!
おやつ完食し腹這いに伏せるルシファーを半分寝てるサーリーと共に背凭れにしながら絶叫した私の頭を、ノーランが苦笑しながらぽんぽんと軽く撫でてくれた。
「今回はマイ大活躍してるからなぁ……モンスター討伐数もだが、お前は町を覆う≪結界≫乗っ取りやり遂げただろうが。オマケに、乗っ取った≪結界≫利用しての町全体に超広範囲の回復魔法してるし。あー、理由は知らんが運の数値が高い奴はレベル上がりやすいって言うしな。だからそんくらい上がっても不思議じゃねぇよ。……多分」
「多分!?」
「ははっ、細かい事は気にすんな。マイは将来の事考えても、レベルはディルムッドに近い方が良いって!」
闘ってる時は怖い位に輝いて見える明るいペリドットのノーランの瞳が、今はマイナスイオン発生させてるのか、穏やかで優しい色合いに感じる。感情で目力って変わるの?
「……、…………うん」
……私、びっくりする位落ち着いてもうたやん。ノーランの頭ナデナデで。何それ悔しい。
だって……帰って来たディルも、私の隣にしゃがんで首傾げながら頭撫ででアピールしてるから。そこは私に触るのダメって言わんのや。嫉妬しても良い所の筈やのに……何やねんその顔、撫で待ち顔めっちゃ可愛い。そういうめっちゃ可愛い顔、勿論私にもしてくれるけど!
……やっぱディル、間違いなくにぃねえちゃんと双子や。好みが似て……似て、るぅぅゔもやもやってするぅ! ディルこそ浮気や! 後でディルの尻尾揉みまくったる! 逆撫でてやる!
「……負けへん」
「ん? 何が?」
恨めしげに見上げる私に、ディルの頭ぽんぽんしながらノーランは首を傾げてる。ディルがご機嫌に尻尾振ってる何それかあいい羨まし……くないし!
チクショウ、これがディルを魅了するお兄ちゃん精神……タチ悪い。にいねぇちゃんであるアオツキちゃん虜にしてるだけあるわ……私の旦那様並みに罪作りな上、その旦那様ががっつり誑し込まれてるのが何とも言えん。
「ありがとうノーラン……でも私の事よりソレなんとかしようや」
そうやねん。ノーランの首に甘噛み通り越して牙突き立ててるっぽいアオツキちゃん、気になってしゃあないから何とかしよう? てか私の頭ぽんぽんする前、ついさっきまで口元舐め回されるの通り越してガチちゅーされてなかった? オマケにノーラン、アオツキちゃんに顎クイしてからがっつりしっかり応えてなかった? リカルドさんと双子が見慣れた自分が嫌だ、とか言いながら遠い目してたの見えてた? てかこの短期間で見慣れる程ナニシテンノ……向こうの高校生2人顔真っ赤やねんけど未成年にも何見せてんの? ただでさえ顔色悪かったユーリ王子様が顔面蒼白やねんけどせめて隠せ!? もしくは恥じらいを持って!?
口にするのも憚れる内容を全て私の目力に込めてノーランを睨み上げれば。
「……ん? ああ、やっと幾分か素直になったよな。可愛いもんだろ?」
「そこやない」
可愛いのは認めるけど、そこやない。惚気で返さんといて!
……うん。流し目を甘く蕩かせながら伸ばした指先でアオツキちゃんの喉撫でさするのヤメテ。年齢指定入る雰囲気宿ってる何それ怖い。そんでアオツキちゃん、そんな喉ゴロゴロ鳴らしてもうご機嫌やんか。チョロ過ぎやん。
……ノーラン……何処のエロ・テロリスト?
因みに、何でアオツキちゃんが人前で、こんな血迷った事したかと言うと。
私がお礼に〜って女性陣に突進されたら……そりゃあディルとノーランも突撃されるやん? 男性陣ばっかやったけど、女性も少数混ざってたので。
良かったね、にいねぇちゃん。周知で羞恥な嫁として紹介されたよ!
まぁ、私とサーリーとディルには上級者過ぎるからやめて欲しい。考える事いっぱいあるのに思考が止まるから。私、器用ちゃうから。取り敢えずサーリーの目を手のひらで隠しながら苦しげに呻いた私、悪くないと思う。
「「「ちょっとギルド長! 遊んでないでさっさとこっちに来て指示! 段取りもして下さい」」」
「うおおおマリ・リ・アントリオが酷い!!!」
私達の状況が雑談っぽいのに一応落ち着いたと感じたのか、ギルド職員の制服を着た女性3人に呼ばれたリカルドさんはヒューリッヒさんを伴って(引き摺って)ギルドの中に入っていった。ちなみにギルドで人気の受付嬢マリリン、リリィ、アンナさんの3人を表してるこのトリオ呼びはリカルドさん命名。
そうしてやっと、リカルドさんの指示の下フェールさん達が地下シェルターから大人達を呼びに行って何にも無くなった広場に野営用のテント設置したり女性陣が炊き出しとかの準備を始めてくれた。我先にと飛び出して来たアニスさんは、双子に縄でぐるぐる巻きにされてたのを拳骨1発で許してから泣きながら私とサーリーに抱き付いて無事を喜んでくれた。サーリーはされるがまま。……もう寝てるなこれ。
「ありがとう……私もマイも、カールも、キールも、皆……みんな、生きてる……ありがとぅ……生きててくれて、ありがとうねぇ、マイ」
アニスさんの鼻声混じりの言葉に、こっちも引き摺られる。
……ぐすっ、頑張って、良かった。でもまぁその感慨深い感情も、直ぐに安定のディルセ○ムに引き剥がされて四散してんけどな。
「アニスでも俺のマイにスリスリするの駄目なの。マイが減るでしょ!」
瞬き程の静寂を私が感じた後。
「減る訳あるか!」
アニスさんの拳骨がディルにがっつり振り下ろされた。




