123:決戦、決着:ディルムッドサイド
第三者視点で進みます。これで一応緊急依頼終了です!
そして予約投稿するの忘れてましたごめんなさい!仕事行く前にチェックして良かった…。
それでも宜しかったらどうぞ!
ナナシとの勝負を終えたノーランが空を見上げたその時、ディルムッドはごうごうと風を切る音を聞きながらルシファーの大蛇を思わせる胴体に跨りながら共に空を駆けていた。
ちらちらと降る白い雪に視える魔力の粒は、ディルムッド達の傷に触れると回復を促してくる。ルシファーの剥げた鱗も再生を始めて、ディルムッドは雪の正体がマイの施す回復魔法と確信していた。
「マイ……っ、ルシファー! もっと早く!」
『るるぅっこれがルシファーのMaxなの!』
そう言ったルシファーの視線の先、ほんの5メートル程上空には闇色の飛龍の姿があった。元々剥き出しだった頭蓋骨は砕け頭部の3割は失っている。胴体にも風穴はいくつも開いている為必要な臓器も少なくなっているだろう。そして雪に触れた部分から魔力が抜けているらしく、今では進化したルシファーよりもずっとずっと小さくなっていた。
「……っにゃ、マイ!」
ディルムッドは闇色の飛龍が向かう先、流れていった雲の向こうに愛しい姿を見付けた。明るい朱色のドラゴンに跨りながら、自身の魔力を空に向けて送り続けている。ヒューリッヒが切羽詰まった様に「何とか保たせろ!」と叫んでいたが、ディルムッドの虎耳には届かなかった。
『グギャオオオオオォオオオオオオオオオオオオ!!!』
そう。マイ達を見付けたのは闇色の飛龍の咆哮に掻き消されていた。その姿を進化する前のルシファーを思わせるまでに縮めた闇色の飛龍は、マイ達に向け漆黒のドラゴンブレスを放っていた。
『あ。緊急回避なのおおおおおっ!!!』
『ぐるるるがあああああぁああっ!!!』
漆黒のドラゴンブレスに、朱色のドラゴンが放つドラゴンブレスが衝突する。ごお、と恐ろしいまでの熱風がディルムッドとルシファーに襲いかかる。
ブレスの被害に遭わない様にディルムッドの指示の下、ルシファーはジグザグに飛びながらマイ達の居る上空を目指していた、が。
ディルムッド達の視線の先で朱色のドラゴンが突然、その巨大な体躯を傾けたかと思うとそのまま落下し始めたのだ。
当然、その背中に乗っていた2人も無事では済まない。ヒューリッヒは近くに居た空飛ぶ藁人形に支えられて無事だった。しかし……。
「ぃぃいいいいいいやあああああああああああああああっ!!?」
ヒューリッヒの伸ばした腕が間に合わず、白いヴェールに彩られた聖なる魔力宿す雪舞う空へとマイは投げ落とされていた。落下するマイに、闇色の飛龍が接近する。
「ルシファー。後、お願い!」
そうなれば、ディルムッドのすべき事は決まっていた。
『えっ!? ままま待つのディルっ、ディル!!?』
「≪ゲイル≫」
ルシファーの背を蹴る様に飛び降りる瞬間、ディルムッドは自身の素早さを上げる風魔法を使用し瞬間的に加速する。
瞬時に左手に聖槍を装備したディルムッドは、落下するマイ目掛けて文字通り空を駆けた。
『グギャオオオオオ!』
「……ふぅしゃあああああっ!!!」
ディルムッドの伸ばした右腕は、マイの腕を掴み引き寄せた。魔力がもう残り少ないのか、闇色の飛龍が大口を開けて噛み付こうと接近してくるが、マイを引き寄せた時の遠心力そのままに一回転したディルムッドは左手に握った聖槍でその下顎を閉じる様に叩き上げた。
ディルムッドは知らないだろうが、もう何度目かのダメージに飛龍の下顎は砕けた。それでも鬼気迫る形相で迫る闇色の飛龍へ、ルシファーは行手を遮る様にその尻尾を叩き付けていた。
ディルムッドと、その腕に抱え込まれたマイは2人一緒に雲の中を落ちて行く。
「うあああああ!?」
「マイ! マイ! もう大丈夫だよ!」
「ぅああああディル! ……えディル!!? あかん白昼夢見てるぅぅ死ぬんやーー死ぬのいややーーーっ!?」
血や涙、その他諸々の体液で汚しながら泣き叫ぶマイの背中をぎゅっと抱きながらディルムッドは声を掛け続ける。
「ふにゃっ、まだ死んでないよ! 俺とマイ生きてるよ! 落ちてるけど!」
「うあああん夢の中でもディルが天然で可愛くてカッコ良いぃ! でも今はその天然がにくいぃいいいいいぃ!!!」
マイは気付いていない。ごうごうと風を切りながら落下していくのに会話が成立しているのは≪結界≫が生きている証拠であるのに。確かにディルムッドの≪結界≫は使用済みだった。だからこの状況はマイの≪結界≫のお陰だろう。触れていたら一緒くたになる使用とは、便利だなとディルムッドは大きく頷いていた。
ディルムッドがマイのステータスを確認すれば、マイの≪結界≫は残り1……ここでドラゴンブレスを浴びてしまったらどうなるか分からないが、ヒューリッヒやルシファー達が残っている。何とかしてくれるだろうし、何かあればディルムッドも聖槍を闇色の飛龍目掛けて投擲するのもやぶさかではなかった。
……それに、ディルムッドも色々と限界だった。
「むぅ…………可愛いは、いらにゃい」
マイの涙滲む目尻をぺろりと舐めてから唇をちう、と吸えば岩の様に固まりながら顔全体を赤く染め、口だけを魚の様にぱくぱくし始める。諸々の体液で汚れた顔であっても、ディルムッドの金色の瞳には愛くるしく見えていた。
「? ……………………………? …………………………ディルムッド、さん?」
「にゃ。ディルが良い!」
ディルムッドの満面の笑みにマイの瞳に正気が戻る。
「ぁ、ほん、ものの、ディル? ……………………ぁ…………………………………って、ぃやいや私っ感動してる場合ちゃうし!? めっちゃ普通に落ちてるやないかーーー!!?」
「にゃう。マイの≪結界≫あるから大丈夫だよ?」
「あっ、そっかなら平気……いや残り1回や、ぁああMPほぼゼロやん!? 重ね掛け! エーテルエーテル!」
ディルムッドの腕の中、正気に戻っても明るく元気に慌てるマイにディルムッドはふふっと微笑みながらエーテルを飲み込む姿を眺めていた。
この5分後。
ギルド屋根に開いた大穴の隣にもう1つ大穴が開いてリカルドのリアル土下座で悲しむ姿があったりするが。
全て、ディルムッドには些末な問題だった。
そこはかとなくギャグなテイストで終了してしまいましたが、飢えていたからと許して頂きたく。久し振りにラブコメだけっぽいの書きたいのです。( ̄▽ ̄;)
仕事まだ暫く落ち着かないので突然お休みーとかお願いする時あるかもですが、生温い目で気長にお待ちいただけると嬉しいです!




