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 ――――――――


 異世界≪リヴァイヴァル≫には魔法やスキル、レベルの概念がある。



 個人の基本スキルポイントはMax150p(200p)


 特殊・魔法・武器スキルにポイントを振り分け、様々な恩恵を受け取って人々は生活している。


 産まれた時に多めにスキルポイントを持ってると、才能有りと言われ将来有望視される。

 基本的に10p〜80p(ある国で確認されている最高値が80p)

 それ以降はレベルUPで1〜2p。無い時もある。

 しかしどんなにレベルを上げてもMax150pに到達すると、レベルUPしてもスキルポイントは貰えない。

 最大体力(HP)と最大魔力(MP)等の身体能力がUPしていくのみ。


 …………


 ………


 ……



 ――――――――



「…………」



 脳内で神様にもらった知識を引っ張り出したらやっぱりあった。




 ある国で確認された、初期スキルポイント最高値……80p。


 ディルムッドさんの初期スキルポイント……80p。




「ディルムッドさんの事かいな!!!」


「……っ!」



 私の魂の雄叫びに驚き怯えたのか、股の間にシマシマ模様のふわもこ尻尾を挟んでびくびく縮こまるディルムッドさん、かあいいです。



 あ、話が逸れた。



「お、大声出してごめんなさい。いやー脳内知恵袋の中に、ディルムッドさんの記述があって。国で確認されてる位有望視されてるなんて、凄いですね!」


「っ…………凄く、ない。偶々」



 縮こまった姿のまま、それでも焚き火の前からは移動しない姿に思わず笑みがこぼれてしまう。



「……ふふ。そこは運も実力の内って言って良いと思いますよ?」



 白米がもうすぐ炊けるみたいなので、後は仕上げ。


 アイテムボックスから手鍋を取り出し火にかける。

 レベル上げに行く前に下準備はしといたので、鍋の中がくつくつ音がしたら溶き卵を半分円を描くように流し入れる。


 ちなみに鍋の中身は残っていた野鳥の肉と玉ねぎとキノコ類(そこらに生えてた食用)を一緒に出汁の素や料理酒、醤油、みりん、砂糖で味付けして一度炊いてあります。


 鍋を軽く揺らしてから蓋をして、10秒待って一度火から離す。



 そんな私を見ていたディルムッドさんは、寒かったのか少し頬を赤く染めていた。

 そして、小さく頭を横に振りながら答えてくれた。



「…………俺、凄く、ない。……凄いのは…………にぃ……ぁ、王子様の、方…………」


「へ〜。何処の国の王子様なんです?」



 あ、ディルムッドさんが飯盒取り上げてくれた。

 炊き上がったみたいやね。


 火から離していた鍋を戻し、残りの溶き卵を入れて蓋。

 火のしっかり通ってるのと半熟、私はどっちも美味しいと思う。じゅるり。



  「…………俺の、産まれた国。≪ユートピア≫の……ユーリ、王子様」


「確か≪ユートピア≫は、人族が王様でしたっけ?」



 小さく頷いたディルムッドさんの横で、私は最後の仕上げに取り掛かった。


 ディルムッドさんに自分の器に炊き上がった白米を入れてもらい、そこに手鍋の中身をおたまですくって山盛りに。

 ふふ。半熟部分、多めにしといてあげよう。


 そして大事な薬味ねぎ(関西人はねぎ好き多いと思う)を多めに乗せて。



 野鳥肉の親子丼、完成。



「はい召し上がれ」


「……っ!」



 無言の頷き一つで、ディルムッドさんが結構な勢いで丼をかきこんでいった。

 相変わらず凄い勢い。お腹減ってたんやねぇ。



 ……うん。親子丼が、まるで飲み物のように消費されてるね!?



「あのぅ、ディルムッドさん。美味しく食べてくれてるのはありがたいんですけど、もっとちゃんと噛んでくださいね。体に悪いですから」



 カレーは飲み物、と言ったのはどこの芸能人だったか。

 まさか、丼物も飲み物になり得るの?



「っ!」



 私の言葉にぴた、と食べるのを止めたディルムッドさん。

 そしてもっさり前髪の向こうで私を射抜く勢いで凝視してくる。


 ど、どうしたんかな?


 怒ってるって感じでは無いねんけど……前髪の隙間から覗く綺麗な金色の瞳、また瞳孔開いてるっぽい?



「ディルムッドさん?」



 彼は数十秒、がっつり固まっていたと思う。



「……………………同じ、事」


「え?」


「……王子様に、同じ事……言われてた。懐かしい」

(にぱ〜)


「んぐふっ」



 懐かしいの部分で「にぱ〜」が来やがった!

 もう! 丼吐き出すところやん勿体ない!

 深呼吸、深呼吸、深呼吸は大事!!!



「すぅ…………ふぅ、落ち着いた。ディルムッドさんは王子様に遭う機会があったんですねぇ。……もしかして、お城で働いてたんですか?」



 こんだけ強いんだから、まあ高給取りのお城勤めは当たり前か。

 もしかしてこの森に居るのも、任務なのかも?


 …………あれ、私、まさか仕事の邪魔してる?



「…………昔、働いてた。…………今は、冒険者」


「……よ、良かったー。大事な任務の邪魔してたのかなって、心配しちゃいましたよー。……あ、もう無くなりますね。おかわりします?」



 ディルムッドさんは高速で頷きながら器を差し出して来た。

 朝カレーでも思ったけど、ディルムッドさんは体が大きいから食べる量も多いねんな。また山盛りにしとこう。



「ふふ。今度は初めから、ちゃんと噛んで食べるんですよ?」



 私のお願いに、彼は1つ頷き。

 嬉しそうな雰囲気を醸し出しながら、気持ち程度ゆっくりと丼をかきこみ始めた。



 ふむ…………お城の話は、禁句としよう。



 昔、働いていた……そう口にした時のディルムッドさんの顔。


 とてもとても……淋しそうやったから。




「……ディルムッドさん。美味しいですか?」


「……うん、おいしい」

(にぱ〜)


「ぐふっ……な、なら。私とパーティー組んでくれるなら……ずっと私のご飯、食べれますね?」


「!」




 彼の表情の理由は、まだ分からない。


 分かるまで、……ううん。

 分かった後も、一緒に居たいって思う。




 私の好みのタイプは、分かりやすい。




 声も筋肉もそりゃあ大事やけど、一番重要なのはそこじゃない。


 私の言葉に驚いてなにも言えなくなってる、可愛い可愛い虎獣人さんに、私は追い討ちをかけることにした。



「……返事が無い。……そっかぁ。無理矢理口に詰め込んでるなら、残りは私が頑張って食べま」


「た、食べる! 食べるよ!」


「ぷっは! ……なら、()()()()()宜しくお願いしまーす!」



 親子丼を奪われないように、自分のだけじゃなくて鍋ごと抱え込もうとするディルムッドさんの姿を見て私は吹き出してしまった。




 同じものを食べて、美味しいと言い合える相手。


 食べるのも食べてもらうのも好きな私としては、いっちゃん重要なんですよ!






今回連続投稿します。

次は明日の朝6時です!


追記

内容はほぼ変えず書き直しました。



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