105:にいねぇちゃんサイド3
久しぶりの登場でテンション上がってるアニキと、予想以上にアニキにメロメロなアオちゃんのせいで何かアダルティな仕様になってしまいました(え)
直接的な描写は……無いですが、年齢制限怪しいと思われたお方はメッセージとか感想とかでも良いので教えてくれたら嬉しいな!(不安で仕方ない!)
わ、私のせいやないんや……これは全部、アニキのせいなんや( ̄▽ ̄;)
※にいねぇちゃんは体はちっこくても精霊であって幼児にあらず。オトナです。それを踏まえた上で宜しい方だけどうぞ!
「んっ……ぐ……!?」
熱くてやらかい舌に口内を弄られ、水音が耳の奥で木霊する。舌を齧られたのか痛いし、血の味もするし、兎に角苦しくて熱い。なのに……。
「ん、…………んぅ」
涙で歪んだ視界の向こうで、ペリドットの瞳が僕を見てる。
この状況は何だ。白昼夢か。それにしては妄想が立体的過ぎる。空気が足りなくて頭がふわふわする。なのに目尻に溜まった涙が頬を滑り落ちていく感触がやけにリアルで……と、そんな思考をつらつらと続けたけど。
馴染み深いノーランの魔力を唇から感じだおかげで、ノーランは生きていて、ノーランの瞳が僕の瞳を見上げてるのが現実なんだと理解した僕はその瞬間……思考回路が崩壊した。
「ぅ……、ん…………」
ぴちゃぴちゃと響く水音がいやらしいと思うのに、僕はやめないで欲しいと切実に願ってしまう。
出来る事なら僕を、僕と認識して与えられてるだろうこの口付けの間に殺してくれないだろうか、と。思考を蕩かした僕は本気で考えていた。
力が抜け、寝転んだままだったノーランの顔と上半身に完全に身を預けてしまった僕は、ノーランが何をしたのか、現在進行形で何をやらかしてるのか全く気付かなかった。
「ん……まだ、だな…………おい、逃げるな。も少しじっとしてろ」
「……ぅ、…………み、みぃ?」
「ぶっ…………あ〜、はいはい。ほら……もっと舌出せよ」
僕の息継ぎの為に1度離れた口が、何かぶつぶつ言ってる。少し身動いだのを逃げと思われたのが嫌だった僕は、無意識にノーランの頬に擦り寄った。そんな僕を見たノーランは色っぽく笑い、また僕の口を塞ごうと……。
「「いやコレいつまで見とけば良いの俺らーーー!!?」」
双子冒険者の鼻声混じりの叫びと外で苛烈さを増す銃撃音に、僕の理性は少し帰ってきた。
「ノーランのアニキ!」
「精霊さんの生死に関わるって聞いたから! 俺達モンスターの血や麻酔薬提供して協力もしたのに!」
「それがなんで精霊さんへのでででディープキスになんの!?」
「オマケに幼女趣味なんて!?」
「この変態!」
「ただのセクハラ現場を見せられた俺達って何!?」
「「ディルムッドとマイにチクるからなーーー!!!」」
怒涛のように口を回す赤面中な双子に、ノーランは僕への口付けを諦め代わりに優しく、僕の頭を撫で始めた。……にゃぅ、きもちい。ごろごろごろ。
「あー……マイは兎も角、ディルムッドに言っても小躍りして喜ばれるだけだぞ?」
「「まさかの弟公認!!?」」
「リカルド……だからロリコンは外に捨てろと言っただろう」
「……うん……そうだっ……って違う! ややこしくなるからヒューリッヒは黙ろうなっ!?」
「おいそこロリコン言うな」
……仲良いなぁ。
…………。
…………………………ん?
「……のぉ、ら……?」
「ん? 何だ?」
「……こにょ、血……ぇ……?」
「あん? ……ああ!」
……ノーランに吸われ過ぎた舌がまだ痺れていて、上手く話せない。
それでも何とか意味は通じたらしく。周囲の反応を無視したまま、歯を爽やかに光らせる様な笑顔を浮かべたノーランは上半身を起き上がらせ、自身の太腿に僕を座らせた。熱に浮かされた様なふわふわした高揚感に満ちた僕の頭を撫でる手と、背中を支える手はそのままだ。
「これはな、ヒトの話を聞かねぇクソ馬鹿精霊の敵前逃亡を阻止する為の小道具だ」
この場合の敵は、俺だな。
そう、器用にも視線だけで言葉を続けたノーランは笑顔だった。それはそれは優しい微笑みを携えている。それを見た僕の胸の鼓動は、一拍早くなった。……高揚からでは無く、恐怖と緊張入り混じった意味合いで。
「……逃、亡」
「そうだ。……身に覚え、あるよなぁ?」
ぎしり、と。僕に触れたノーランの手に力が入ると同時に僕の思考は真面に再開し始め……酩酊というか魅了というか、あのふわふわした高揚感は消え失せた。残ったのは危機感から来る冷や汗を多量に垂れ流す、僕だけ。
「なぁ、アオツキ。俺に言う事、あるよなぁ?」
「……っ」
……どうしよう。色々あり過ぎて分からないぞ!?
僕の額を流れる冷や汗は、必然的に増えた。
「おら、言えよ……俺が、欲しいって」
違う、とは言わせない。
そう、雄弁に語る視線の熱さに。煌めくペリドットに僕は怖気付く、のに……僕の全身はまた、興奮と喜びの熱が渦巻いていく。
何で、そんな事聞くんだよ……僕の一方通行じゃ、無いのか? そりゃあ、悪ふざけや仕返しでノーランは口付けはしないだろう。そもそも、そんな不誠実な事を竜種の血は許さない。獣人だけじゃなく竜種の血を持つ者達も、総じて一途なんだから。
「ぅ……ぅう……」
それでも、どうしても羞恥心が頭をもたげて僕の唇は震えるだけで何も言えない。そんな僕を見て、ノーランの眉間に深いシワが……。
「…………やっぱお前、俺じゃなくてユーリ」
「違う!!!」
ああ、そうだ。
あの時、あの廃墟で、ノーランとは同じ様な会話をした。
……お前は知らないだろう。その勘違いが、その言葉が、お前なんか眼中に無いんだって思われてるみたいで……僕が凄く惨めに感じていた事なんて。
また溢れ出した涙もそのままにノーランを睨み付ければ、僕以上に憤怒を宿した瞳に動けなくなる。
「なら2度と、俺の頭ん中を弄るな……っ! 勝手に俺の中から、消えてんじゃねぇ!!!」
ノーランの、血反吐吐いてる様な苦しげな低い声に僕の心は歓喜と絶望が綯交ぜになる。だって僕は、喜んじゃ駄目なんだ。僕は今日『団長』を倒す為に……この命を使うんだから。さよならなんだから!
僕の不穏な思考を読んでいたのか。
ノーランは僕を捕まえる腕に力を込め、これは最後通告だと言う様にまた声を低めた。
「お前、分かってねぇな……また逃げてみろ。その時は俺も何するか分からんって事だぞ……例えば、な」
そう言いながら何か思い付いたらしく、僕を片手で捕まえたまま、もう片方の手を僕の頭上に持って行き……。
「み!?」
僕の頭上に突如走った鋭い刺激に、僕はまるで驚いた弟の様な声を上げてしまう。何だっ!?
「へぇ? 良い反応だな……」
「みっ……にゃ……にゃにっ……!?」
や、やだっ。僕の頭に何か、何か付いてるのか!? そ、そんな強くっぐにぐに触るな! くっそニヤニヤしやがって! 離せよ変になる!
一体何なんっ……そ、そうだ。最初はノーランのせいだと思ってた、僕のこの、滑舌の悪さ……も、もうしてないのにっ未だに直ってないのもおかしいよな!? それに、どう考えても今の僕は肉体を持ってる……っ! でも『世界樹の葉』はノーランの手の中! 何だ、このノーランの悪戯思い付いたクソ餓鬼顔負けのニヤケ面はっ………………腹立つのにカッコ良いなくそおおおおおっ!?
「逃げたかったら、好きにしろ。捕まえてやるよ。まぁ俺はディルムッドみたいに優しくないんでな……多少手荒いのはご愛嬌ってな?」
「みぎゃっ!?」
こ、今度は……お尻だと!?
意味が分からず何だと思って無理矢理首を捻れば、背中を支えていたノーランの手にとても見慣れた……………………青味がかった灰色と、黒の、虎尻尾が握られてる。……ツクヨミが着ていた様な、白いワンピースチックな僕の服装も……黒いローブに変化していて、ローブの裾から虎尻尾が……………………え???
比喩でも何でもなく、僕の顔から冷や汗が滝の様に吹き出した。
「やっと気付いたか……おめでとう。『王子様』改め、『にいねぇちゃん』アオツキ改め…………『サーリーの妹』のお人形な、アオツキちゃん?」
「死に晒せええええええええええ!!?」
どさくさにまぎれ、おチビのお人形を依代に変更されていた事にやっと気付いた僕に出来たのは、腹の底からノーランを罵倒する事のみ。
「はぁ……マイ達が頑張っているというのに……というか私の人形で何と卑猥な……おい、貴重な10分が無駄になったぞ」
僕の叫びに紛れた無表情エルフの静かなる罵声に、僕は答える事が出来なかった。
ヒューリッヒさんのツッコミが、きっと正解です(笑)
どんな状況だったのかと申しますと。
モンスターの血→アニキのお腹にぶっかけて死体偽装
麻酔薬→アニキがごっくんして死体偽装
世界樹の葉→アニキがゲットだぜ
『サーリーの妹』人形→にいねぇちゃんがゲットだぜ(強制)
こんな感じ。
アニキがまだだなーとか言ってるのは、体の眠気や麻痺具合の加減です。薬物耐性・強持ちのアニキ以外はお勧め出来ません。なので逃亡阻止と実益を兼ねての時間稼ぎちゅっちゅしてました。タノシカッタデス!




