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98:ギルド前広場11


今回からマイ視点で進みます。

それでも宜しかったらどうぞ!


 


 リカルドさんの号令で、ディルは号泣し続ける私を抱えてギルドの屋根から降りてくれた。

 様子のおかしい私の側にヒューリッヒさん達も来てくれたみたいやけど……ごめん、私も意味が分からんねん。



「うっ……うぇっ……いゃやあ……ざーりぃどこ……のーらっどご……ひっぐ……」



 ああどうしよう、涙が止まらん。

 だってサーリーが危険な場所に私の≪結界≫が無い状態で居るのも怖いし、ノーランがサーリーをちゃんと守ってくれてるか不安やし、そもそもノーランの≪結界≫も半分になっててホンマに無事なんか、……怖い。怖くて怖くて、たまらん。



「うえええ……っ、ごわぃ……こわいよぅ、ディル……うわあああ……ぁあああん!」



 号泣してる私を、ディルの優しい手が頬や背中を撫でていく。それを、頭の隅っこに居るちっこい冷静な私が見てる。変な感覚や。

 ……私、ホンマにどうしたんや? さっきまでノーランとサーリーが合流してるって聞いて、ちょっぴりだけ安心して……周囲に目を向ける余裕が戻って来てたのに。

 ≪結界≫の向こう側で、ゾンビ軍団と入れ替る様に現れた真っ黒いヒト形のモンスターを見た瞬間……怖いって、私の心がそれだけになってもうた。



『『『『ああぁああぇえいぃあああいいいいいぃ!!!』』』』



 誰かが泣いてる。

 男の人が、女の人が、男の子が、女の子が、お爺ちゃんが、お婆ちゃんが……産まれたばっかの赤ちゃんが、めっちゃ泣いてる。


 私は、あんなにも頼って縋り付いていたディルの服から手を離した。……あったかい体温が、どうしても、怖くて怖くて堪らなくなったから。



「マイ……?」


「ぅああ、あ……うぇっ、……か、かぇっ……!」



 伸ばされるディルの手を拒んだ私は、一歩二歩と後退りながら両耳を塞いで頭を振る。私の鼓膜が破れそうな位の大音量で泣き叫んでる……知らない誰かが、私の中に沢山居る!

 ……怖い。痛い。止めて。助けて。酷い事しないで。……かえして。



「…………っかぇ、りたい……」



 帰りたい。何処に?

 帰りたい。誰の所に?

 分からない。もう()()()()()。でも、帰りたいの。帰れるだけで良いの。それ以外、何も望まないから。


 帰りたい。帰りたい。帰りたい帰りたい帰りたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたいかえりたい!!!



「かえしてえええええっ! ()()()()()をかえしてえええええっ!!!」


「…………っ何処にも帰さない!!!」



 そんな、()()()唯一の望みを全力で否定したのは……………………()の、素敵ボイスで、カッコ良くて、食いしん坊な所も、虎耳虎尻尾も、性格(なかみ)もとっても可愛い、私の旦那様やった。


 私が、両耳塞いでてもディルの叫びが聞こえたのは……私が彼の、腕の中に戻って来たから。



「マイはっ、誰にもあげない……っマイは、俺のお嫁さんになったんだから………………帰るの、俺の所以外、ダメ!!!」



 ぎゅぎゅっと力一杯抱き竦められた私は、色気の無い呻き声をあげながらもディルの顔を見上げた。

 もっさりとした前髪に隠れがちな眉は釣り上がり、金色の猫目は怒りを宿しながら爛々と輝いて、歯を剥き出しにした口から覗く尖った八重歯は肉食獣のソレで…………そう、ディルは怒ってる。



「ほ、他の男の所もダメ! 浮気、ダメ! 絶対、ぜぇったい、ダメにゃんだから!!!」



 びったんびったん、と地面に自慢の虎尻尾を叩き付けながら。ディルは私の頭にぐりぐり頬を擦り付けながら憤慨していた。



「マイは! 俺の! お嫁さんで! サーリーとルシファーの! お母さんで! ノーランとにいねぇちゃんの! 妹分なの! ……俺達のっマイなの!!!」


「……、………………………………、……ディル?」



 泣き過ぎてカッスカスになった声で、私はディルを呼ぶ。

 私はこの時……頭の隅っこに居たのが本当の私で、やっと自分の口でディルを呼べたんだと思った。


 そんな私と目を合わせたディルは、憤怒の表情から一転、うるうるに金目を潤ませたかあいい顔に変化。同時に私の頭にぱしゃん、と液体を振り掛けた。



「……俺のマイを、(そそのか)すな! 出て行け!!!」


 ディルの言葉に反応する様に、ばちばちっと激しい静電気みたいな音と衝撃が私の体に走った。

 直後、あんなにも怖い怖いと感じていた心がふっと軽くなる。



「あ……あれ、私……?」


「にゃ……マイ……」


「ご、ごめんディルっ、私、何か変やったみたいで……」



 私の言葉を遮る様に、ディルは自身の腕の中に私を閉じ込める。



「ぐるるるっマイ…………帰さないもん……俺のマイだもん……!」


「はっはっはっ! 良かったなあディルムッド! ヒューリッヒの予想が当たってて! ……今のが抑圧されたマイの本音とかだったら離婚の危機だったぞ!」


「みぎゃっ!?」


「ぐっふぇ」


「落ち着けディルムッド!」

「それ以上はマイの首が限界!」



 変になってた間に攻撃されてたのか、私の≪結界≫使い切ってたみたいでディルの愛ある抱擁はダメージ伴うモノになってた。口と首から変な音出たぞおい。

 まぁ双子の言葉で、意識が遠退きかけてた私は急死に一生を得た。ありがとう。お礼に色々終わったら、双子にはオヤツを振る舞うわ。サーリーと一緒に食べてたマフィンで良いやんな。


 そうしてヒューリッヒさんから説明されたのは……あんまり信じたくない事やった。



「リカルドは踏み止まった様だが……どうやら、一定の条件を満たした状態であのモンスターを視認すると混乱・魅了に良く似た症状が出る様だな」


「条件って……いや、それ以前に私、神様から状態異常無効ってステータス貰ってんですけど……?」



 思わず呟いた私の言葉に、愛らしい幼女な天の声が脳内に響く。



『……ああ。状態異常じゃない。マイはあのモンスター達に≪憑依≫されていたんだ』


「≪憑依≫……それって私の世界で言う、幽霊に取り憑かれる的な……!?」


『うむ。概ねそうだ』



 だから霊体モンスターに効果抜群の聖水をぶっ掛け呼び掛け正気に戻してくれた、と。説明してくれた天の声チックに響く神様(マイは知らないだけでにいねぇちゃん)の声を聞きながら、私は知りたい事柄を脳内知恵袋に問い掛けた。


 取り敢えず、状態異常って何あるん?



 ――――――


 ●存在するステータス異常

 火傷・凍傷・麻痺・毒・眠・混乱(魅了)・呪

 ステータスの低下(力・魔・守・護・早・運)


 ――――――



「ほ、ホンマや≪憑依≫ってステータス異常に載ってない……!」


『う、うむ。≪憑依≫は特殊スキルだな。マイの≪結界≫や勇者の≪飛ぶ斬撃≫みたいな感じの』



 そんな……私の唯一の強みが崩れた!!!



「ど、どうしたらええのっツクヨミ様! こっち時間無いねん!」



 黒いボードのメッセージとか制限時間とか色々あんねんで!? このままじゃ私達ゾンビまっしぐらやねんで!!?

 ヒント! ヒントプリーズ!!!



「にゃ。そんなマイに、残念なお知らせ。……マイがさっきから喋ってるの、俺のにいねぇちゃん」


「……はぁ!?」



 な ん で す と!!?



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― 新着の感想 ―
[一言] うんうん良かった良かった!……抑圧された不平不満な「実家に帰らせてイタダキマス!( ・`д・´)」発言じゃなくて、良かったねぇぇ( ̄▽ ̄;) ディル坊のアレがイヤだとかコレがイヤだとか…ねぇ…
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