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7

 


 朝。


 ぼんやりしながら上を向けば、ディルムッドさんの素敵に可愛い寝顔があって心臓に悪かったです。



 私が腕の中からゆっくり逃げ出したらディルムッドさんも起きたらしく、無言で立ち上がって草むらに。……お手洗い的な?



 私も色々準備したかったのでまずはステータスを確認。

 ≪聖結界≫がまだ5時間残ってるのを確認してから教えられていた近くの川に。


 洗顔と歯磨き、もにょもにょを終えて元の場所に戻れば私の気配に気付いていたのかディルムッドさんは慌てる事なく私を出迎えてくれた。


 そして私の前でテキパキと焚き火跡に追加の枝を組み上げ、そこに小さな赤い石を放り込んだ。


 すると、パチパチと煙が発生。

 すぐに焚き火が復活した。



 ディルムッドさんが使ったのは火石(ひいし)と呼ばれる、少しの魔力を込めただけで発火する魔石の一種。

 知り合いの、スキル≪錬金≫を持っている人から貰ったそうです。



 私が持ってるスキル≪薬師≫はポーションとかの薬系、≪錬金≫は今の魔石みたいな便利アイテム作成に有効。

 勿論、武器や装備品用の作成に有効なスキル≪鍛治≫もあるみたい。



 ディルムッドさんの魔法属性は風・聖の2つで、火を持っていないらしい。


 でも冒険する上で、食事をするのに火も水も大切。



 そんな人は、


 発火する火石(ひいし)

 水を生み出す水石(みずいし)

 毒霧などを吹き飛ばす風石(かぜいし)

 底無し泥沼を普通の地面にする土石(どいし)


 などなど、長旅やダンジョン攻略に必要な便利アイテムを多めに持って行くのが常識らしい。








 そう。


 ダンジョン名≪ヒヒの森≫


 実はここ、高ランク冒険者が植物系の素材集めに通うダンジョンだったのです!!!




「…………私、死ぬんでしょうか?」




 思わず神様に向かって恨み言、言うてもうたよ。

 いや、でもさ?

 何でレベル1の異世界初心者をそんな所に落としたんや、神様。



≪結界≫(スキル)が守ってくれるし、旅の道連れもゲットしとるから大丈夫だと思ったんだがのぅ』



 ああ。

 脳内に響く幼女の声に、ツッコミ入れたい。


 それでもレベルに優しいダンジョンからが嬉しいです、と。



『むぅ。そうするとショータ達とかち合ってしまうと思うて≪ヒヒの森≫(ここ)にしたのに。…………それにぃ? 一晩で随分と仲良くなったしのぅ?』



 うっひっひっ、と悪役魔女の様な笑い声を私の脳内で響かせる……初対面の印象めっちゃ変わった神様(幼女姿)を無視して左隣をチラ見。



「……?」

(ご飯、まだ?)



 ディルムッドさんは私の左腕に擦り寄りながら、無表情のまま私と鍋を交互に見つめてくる。


 ……無意識なのか故意なのか分からんけど、私の腕に尻尾絡ませてくるし。


 背の高いディルムッドさんの尻尾は、1メートルと少しくらいの長さ。

 ……日本の虎って硬いごわごわした毛並みって聞いた事あるけど、ディルムッドさんの尻尾は彼の髪質と同じなのかふわふわしてる。

 抱えられた時に私の頭、すりすり頬擦りしてたからね。なんか、いい匂いしたからね!



 ……話が逸れた。



 てか、今気付いたけど。

 ディルムッドさんの顔見ただけで、何を言いたいのか分かった気がする。

 今は「にぱ〜」もしてない、無表情やのに。

 副音声、聞こえたよな? 私?


 ……私の観察力(適応力?)すげぇ。



「はいはいもうできますよー」



 私は、鼻血を我慢する為に無心で鍋をかき混ぜた。




 我が家では肉じゃがの次の日は、少し水足してカレールー投入するのが定番です。今回は中辛を使用。


 この時、前日に糸こんにゃくだけは食べ切るのが私流。

 カレー味のこんにゃくは……私が、個人的にちょっと気になるので。


 この世界には糸こんにゃく無いらしいけど、ディルムッドさんはちゅるちゅる系好きみたいで昨日全部食べてくれた。



 なので朝食は、がっつりな肉じゃがカレー。

 朝カレーは重いって人も居るから大丈夫かなぁって思ったけど、朝からおかわり3回もしてくれた。


 ……カレーにして良かった。




 朝食後の後片付けもささっと終わらせてから、私はディルムッドさんに自分の今の状況を詳しく説明する事に。



 事故に巻き込まれそうな時に、神様にこの異世界≪リヴァイヴァル≫に連れてこられた事。


 神様を名乗る幼女に、優遇されたスキルと能力を与えられた事。


 私以外に連れてこられていた、勇者の少年と気が合わなかったので同行を拒否した事。


 神様にお願いして、素材豊富な場所に行きたいとお願いした事。



「そしてAランクモンスターがうようよ居るこの森に落とされました。例え優位なスキルがあっても、レベル1の私に神様は非道だと思います!!!」


「……っ!」



 説明しながら猛ってしまった私の魂の叫びに、ディルムッドさんは心なしか顔色も青白くさせ激しく頷いてくれた。

 今は無表情では無く。前髪から覗く整った眉はハの字で、金色の猫目は不安げ。



 私のレベル1発言に、本気で心配してくれたみたい。


 心遣いと優しさが、しみる(涙)


 ……だから私も、心からの笑顔を彼に向けられる。



「まあ、その神様のおかげでディルムッドさんに会えたと思ったら……そこまで文句言ったらダメか」


「!」



 うっすら頬をピンクにしながらの、ピーンと伸びた尻尾に……嬉しいとか楽しいとか、プラスの感情やって……私と同じ気持ちって思って、いいかな?

 ああ。それにしてもその尻尾の反応、かあいいなぁ。


 でも私から尻尾触ったら120%セクハラやんなぁ。

 ……ディルムッドさん優しいから、我慢出来なくなって触っても許してくれそうやけど。


 いや。

 セクハラだめぜったい。



 私が脳内で1人漫才してる間に、ディルムッドさんは小さく何度も頷いてから私に声を掛けてくれた。



「……手伝う」


「はい?」



 え、何を?



「素材集めと……レベル上げ。俺、手伝う」


「え、でもそんな……」



 私はすっごいありがたいけど、ええんかな?

 神様は色々言ってたけど……迷惑ちゃうんかな?


 私が返事に困ったのを拒絶と思ったらしいディルムッドさんは、少し喉を震わせながら口元を歪めてしまい。



「っ……………………ぉ……おれ、じゃま?」



 どう聞いても半泣き、いやっもしかせんでも泣いてませんかディルムッドさぁん!!?



「ぜんっぜん! むしろこっちからお願いしたいくらいですよ行きましょうさぁ行きましょう未知の冒険の旅へ!!!」



 ディルムッドさんの言葉を、私は即座に否定した。


 だってあかんやろっ!

 イケメン推しメン素敵ボイスを泣かしたらっあかんやろ!!?(必死)



「……!」

(にぱ〜)


「ぶぐふっ」



 そして。

 私の言葉に復活したディルムッドさんからの「にぱ〜」を頂いた私は、脳内でうっひっひっと笑ってる神様以外の超常的存在(居るかは不明)に願いました。



 ああ誰か、助けて下さい。

 このままだと私の死亡理由、キュン死で確定しちまいます。


 誰でもいいから私のツボを押しまくるこの人、止めて、と。






追記。

内容はほとんど変えず書き直しました。


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