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6. 手紙 ①

 深夜の宝物殿で起きた謎の爆発事件! それはファインたち警察隊だけでなく、シャロンの街の住民たちにとっても格好の話の種となった。長らく平和を享受してきた住民たちにとっては、その怪事件は枯れかけた感性への程よい刺激となったのだ。


 ファインは現場に居合わせた当事者として、近隣住民の好奇の目にしばしの間晒されることとなった。彼らは壮大な冒険譚でも期待しているかのように、キラキラした瞳をファインに向けた。ファインの方も特に気兼ねなく、彼らが望むままのことを喋った。とはいえ、その場に居合わせたことで得られた情報など大して無く、大半はクリエンツェが後日公表した事故概要と同じ内容であったのだけれども。


 消防隊による焼け跡の調査も、警察隊の人間による情報収集も、ファイン達の関心を惹くような追加情報をもたらすには至らなかった。事件から一週間が過ぎ、事件の続報も途切れがちになると、ファインを始め多くの隊員たちが次第に事件への関心を失っていった。しかし幾人かのゴシップ好きの人間は、あくなき探求心で情報収集に努めていた――医務官のアンヌもその一人だった。


 ファインは事件以降、一日に一回医療室へと立ち寄り、腕に巻いた包帯を交換してもらっていた。アンヌはファインが医療室に顔を出すたびに、どこからか仕入れてきた様々な情報を、ファインが尋ねもしない内からペラペラと喋った。ファインは話の大半を苦笑いで聞き流していたのだけれども、宝物殿の中で整理活動をしていたという例の二人組についての話題は、少しだけファインの関心を惹いた。


「……その爆発に巻き込まれた管理部の人――マネさんという人なんだけどね――西にある聖シャングトリネ病院で治療を受けているんです。なんでも、吹っ飛ばされた時に頭でも打ったのか、その時のことを全然覚えていないんですって。それどころか、管理を命じた上司の事や、同行していたはずの助手の事も、なーんにも覚えていないって。大変よねえ。だから、中で何が起こったのか、未だ何にも分かってないって。消防隊の調査でも、内部の損傷が激しすぎて、結局原因未解明だってねえ。あなたも、本当に幸運だったわ。それこそ打ち所が悪かったら、どうなっていたことやら……」


「そうですね」ファインは淡白に言った。


「本当にそうよ。……それから、結局その助手さんの遺体というのも、燃え跡からは発見されなかったらしいわ。宝物殿の中は酷い状態で、古い金属の盾や甲冑なんかもグニャグニャに溶けてたらしくってね。そんな状態だから、もう中で遺体が焼失して灰になったんじゃないかって結論を出したみたい。恐ろしい話! その人、マネさんがどこかから連れてきた人らしいんだけど、身元すら分からず仕舞いなんだってね」


「あれ、その助手さんって、役所の人ではなかったんですか?」


 ファインは僅かに眉を顰めてそう尋ねた。


「ええ、そうみたい。マネさんの知り合いだったらしいけど、誰だったんでしょうね。まあ、彼女の記憶が戻れば明らかになるんでしょうけど……」


 アンヌは消毒液の並々入ったガラス瓶を眺めながら、呟くようにそう言った。


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