【元旦SS】一番最初の「あけまして」
あけましておめでとうございます!
今年も『加茂さんは喋らない』をよろしくお願いします!
そして新年一発目の更新はSSです!
……が、ここで注意書きを。
※本編から○年後、こんな未来があり得るかもしれない、そんな感じの"IFストーリー"ということで、本編とは切り離して読むことを推奨します。
それでもよろしければ、スクロール!↓
「3、2、1、あけおめー」
大晦日、俺は一人カウントダウンをして新年を迎える。
そして、分かってはいたが、虚しいこと極まりない。やるんじゃなかったと、俺は今更ながら後悔していた。
こんなことなら少し五月蝿いの我慢して、あいつに電話繋いだ方が良かっただろうか。
……でも、お邪魔するのも悪いよな。やっぱり繋がなくて正解か。
「寝るか……」
気分で新年まで起きていたものの、これ以上起きていている理由はない。ライナーの通知は何件も来ているが、返信は明日済ませよう。眠いし。
それに明日……今日は午前中から初詣に行く約束もしているから、夜更かしをするわけにもいかない。
〜♪
寝ようと布団に潜り込んだ矢先、スマホに電話がかかってきた。
俺は寝たままスマホを手に取り、電話に出る。
「もしもし」
「もし、もし。あけまして、おめでと」
「あけましておめでとう」
彼女のたどたどしい新年の挨拶に頰を緩ませながら、俺も挨拶を返す。
「久々だな、電話で話すの」
「そう、だね」
「…………」
「…………」
会話が終わってしまった。
もう少しコミュニケーションが上手くなりたいものだが、なかなか上手くはいかないものだ。喋る内容が何も出てこない。
――俺は俗に言うコミュ障予備軍らしい。それに気づいた、というか指摘されたのは、大学に入ってからだった。
指摘された時は普通にへこんだ。
電話越しの彼女は事情が事情だから、あまり喋れないのは仕方ない。だから、必然的に、俺から何か喋らなければならないことになる。
しかし、気の利いた言葉一つ浮かばない。そんな自分が情けなくて、悲しくなった。
……いや、ここで諦めるな。もう少し頑張れ、俺――。
「年、明けてから、誰かと、会話……した?」
空っぽの頭を無理矢理にでも回転させようとしたその時、電話越しからそんな言葉が聞こえてくる。
「……いや、まだ」
「じゃあ、私が最初……だねっ」
彼女のその声はどこか嬉しそうで――俺は込み上げる感情を押さえ込みつつ訊ねてみた。
「もしかして、電話かけてきた理由か?」
「うんっ」
「……そっか」
可愛い。
……同時に、これが電話で良かったと心から思った。
もしも彼女が傍に居たら、俺は確実に自制できなかっただろう。
多分、居たら俺は彼女を衝動的に抱き締めてる。恥ずかしいとか倫理観に関する感情は全部置いといて、抱き締めて、ただただ愛で続けてる。そんな自信があった。
「迷惑、だった、かな?」
「んなわけねえだろ」
「よかった……」
ほっと息をつく彼女の声を聞いて、先程と全く同じ感想と衝動が脳内を過る。
……よし、決めた。今日、会ったらまず抱き締めよう。
周りの目なんて気にするものか。むしろ見せつける勢いでやってやる。そうでもしないと、この衝動が収まらない。
「今年も、よろしく、ね」
「ああ、よろしくな」
今回の俺達の通話はそこで終わった。
彼女に会うことが楽しみ過ぎて、俺は横になって目を瞑っても、暫くは眠ることができなかった。
今この時間を過ごしているかもしれない、二人のお話。
このお話に出てきた二人の名前は、敢えて明言はしません。
ご想像にお任せします、というやつです。
……意味ないかもですけど!(´・ω・`)





