加茂さんとホラーゲーム
三つ目のレビュー貰っちゃいました!
かずよしさん、ありがとうございます!(´ω`)
現在、俺は加茂さんの部屋で肩身の狭い思いをしていた。
「そろそろ機嫌直してくれないでしょうか」
「…………(ぷいっ)」
部屋の隅で体育座りをしている加茂さんは、俺の呼びかけに対してそっぽを向く。
そう、拗ね加茂さん降臨である。俺が調子に乗りすぎたことで、ご機嫌斜めになってしまったのだ。
まあ確かに、お仕置きにしても、もう少し他に何かあったのではないかと思う。そこは反省してます。
でも、加茂さんが俺に油断しすぎていたのが発端でもあるのだ。今回ばかりは、俺が全部悪い訳ではないことを主張させて頂きたい。
……だから、これ以上拗ね続けるつもりなら、俺も更に意地の悪いことをさせてもらう。
「俺、今日は帰るわ」
「…………(えっ)」
折角来たが、いつまでも加茂さんが拗ねているのなら仕方ないのだ。
当然、ゲームも手伝えないが、今回は諦めてもらうしかない。一人で頑張れ。
「じゃあ、また」
おろおろしている加茂さんに手を振ってから、俺はドアノブに手をかける。
――そこで後ろから引っ張られる感覚があり、俺は動きを止める。
後ろを振り向けば、涙目の加茂さんがボードを片手で持ってこちらに向けている。そこに書かれていた文字は、急いで書き殴ったようなものだった。
『ごめんなさい
帰らないで お願い』
「……帰らないから、そんな泣きそうな顔するな。あと、俺もごめんな」
「…………(ふるふる)」
加茂さんは首を横に振って、また文字を書く。
『来てくれて
ありがとう』
「どういたしまして」
感謝の言葉は、素直に受け取っておいた。
「……じゃあ、やるか」
「…………(こくこく)」
加茂さんは頷き、ゲームの準備を始める。俺は再び座り直してその準備を待ちながら、気になっていたことを訊ねてみた。
「ホラー嫌いなのに何でこのゲーム買ったんだ?」
「…………(ぐはっ)」
「加茂さん!?」
突然、加茂さんは胸元を抑えて倒れ込む。
しかし、すぐに何事もなかったかのように起き上がる。そして、ボードに文字を書き、苦笑いを浮かべながらそのボードを俺に見せてきた。
『面白いって勧められて』
「それで一人でできないジャンルのゲームを買う行動力が凄い」
「…………(えへへ)」
「褒めてねえ」
今の言葉で照れる加茂さんも、ある意味凄い。
その後、準備を終え、コントローラーを受け取り、操作方法を教えてもらい、いざ挑戦。
――このゲームは『ゾンビ大発生』という如何にもそのままな名前で、CMで何回か見たことあるぐらいには有名なシリーズだ。
内容は至ってシンプル。邪魔するゾンビを倒しながら館や豪華客船、時によっては街からの脱出をするゲームである。
俺は初プレイになるが、加茂さんはこのシリーズのゲームをいくつか持っているらしい。
……全部途中でギブアップしてお蔵入りになったそうだが。勿体ない。
「でも、これって協力プレイできたんだな」
隣に座ってコントローラーを持つ加茂さんに声をかける。
因みに、俺が1Pで加茂さんが2Pだ。1Pだとストーリーの問題で必然的に先に進まなければならないらしいので、任せられた。
「……始めるぞ?」
隣をチラ見すると、加茂さんは真顔でテレビ画面を見つめている。
ホラー苦手なのに、やけに落ち着いてるな。一人でやって少しは慣れたのだろうか。
とりあえず、始めよう。スタート画面から途中のセーブデータをロードする。
すると、そこは何かの建物の中だった。画面を上下で分割してそれぞれのキャラの視点が表示され、右側に地図があるのだが、それを見てもよく分からない。
「なあ、これってどこに向かえばいいんだ?」
一応周りを見て安全地帯であることを確認した後、所持品を確認しながら加茂さんに訊ねる。
しかし、反応は帰ってこない。というか、2Pの画面が一切動いていない。
「加茂さ……おい」
加茂さんを見れば、目からハイライトが消えている。そして、微動だにしない。
俺の声にも気づいていない……そもそも意識飛んでないかこれ。
「ったく」
本当に、何故このゲームを買ったのか……。
この調子だと、彼女が再起動するまでしばらくかかりそうだ。
俺は加茂さんのコントローラーを勝手に拝借して、2Pの所持品を確認する。
「……近接武器しかないのか」
所持品はたった一本の鉄パイプだけ。
1Pは拳銃も持っていた。弾は残りたった二発しかなかったが。
もしかして、ゾンビって大して強くないのだろうか。CMだと銃で敵を倒してるシーンしか流れなかったけれど、意外に近接武器だけでも倒せるのか?
疑問はあるが、加茂さんはこのザマだ。とりあえず情報なしで挑戦してみるとしよう。
1Pを操作して安全地帯の部屋から出ると、そこは一本道の廊下だった。右の地図に星印がついているので、まずはそこを目指して進んでみる。
「っ……いるよな、やっぱり……」
曲がり角を曲がると、少し大きめのゾンビが通路を塞いでいた。
銃弾はたった二発。ひとまず、この先で弾を拾えることを祈って銃を構える。
「は?」
次の瞬間、いきなり画面は赤く染まり、"GAME OVER"の文字が映し出された――。
こういうゲームって初見殺しあるよね(゜ω゜)
次話は今度こそ二人でゲームします(゜ω゜)





