赤宮君に話したい
今日は嬉しいことがあった。
赤宮君が、私に初めて弱いところを見せてくれた。
赤宮君は時々厳しいけど、何だかんだで優しい人。勉強も運動もできて、欠点がない人。
私のペースに合わせてくれる人。一緒に居て、心地いい人。
彼はいつも私を助けてくれて、最近は少し憧れてたりもする。赤宮君みたいに、私も人の助けになれるような人になりたいって。
そんな彼が私に見せてくれた弱み。私に聞かせてくれた、過去の話。
赤宮君のお父さんのこと、初めてちゃんと知ることができた。赤宮君のお母さんに聞いたのは、お父さんが亡くなった話だけだったから。
赤宮君が自分のお父さんを嫌ってるって聞いた時は、ちょっとだけ悲しかった。でも、話を聞いて分かったんだ。
寂しかったんだよね。
やっと、恩を返せるかもしれない。
今まで私が貰った恩を、少しでも返せる……か分からないけれど、私は赤宮君の傍に居たい。傍に居て、その寂しさを紛らわせてあげたい。そう思った。
赤宮君は話してくれた。多分、話しづらいことを。
なら、私も話すべきなのかな。私の話しづらいこと……喋らない理由を。
私が人前で喋らない理由は、この学校では鈴香ちゃんだけが知っている。
赤宮君も気にはなっているんだと思う。分かるよ、それぐらい。でも、彼は聞いてこない。気を遣ってくれている。
人前で喋るのが怖くなった理由は、些細なことだった。理由を聞けば誰だって「それだけで?」って言うような、本当に些細な理由。
私自身でさえ、馬鹿らしいって思っちゃう。思っちゃうのに、それでも怖がって、声を出すのを拒む自分が嫌になる。
でも、いつかは。
赤宮君は、ただの友達じゃない。
親友、なんだから。
今はまだ、怖くて言えないけれど。
いつか、言えたらいいな。
赤宮君を長く待たせてしまう。まだまだ、優しさに甘えてしまう。
それでも、私が打ち明けられる日が来るまで、あなたは待っていてくれますか――?





