おみくじ
本編終了直後の元旦のお話。
初詣に来た俺達は参拝を済ませた後、皆でおみくじを引いたのだが……。
「げっ、大凶かよ」
「え」
「…………(ぱちくり)」
「マジで? ……おお、マジだ。俺、大凶とか初めて見た」
絶対大吉が出てほしいなんて高望みはしていなかった。しかし、いくら何でもこれはないんじゃないかと思ってしまう。
「秀人は?」
「小吉。嬉しくも悲しくもねー微妙なやつ」
「俺よりマシだからいいじゃねえか……」
「それ言ったら多分ここのおみくじ引いた殆どの奴がお前よりマシだろ。大凶引く確率とかどれくらいだよ」
そこは俺も気になるところではある。大凶なんて人生で初めて引いたどころか、直接目にしたのも初めてのレベルだ。きっと、かなり低い確率だとは思う。
まあ、ここの神社だけ特別大凶の割合が多いとかなら話は変わるが……。
『大凶初めて見た』
「ま、まあ、逆に考えれば大凶ってそれだけ珍しいってことだし運が良いんじゃない?」
毎年ここの神社に来ているらしい九杉達ですらこう言ってる時点で、残念ながら俺の運がよっぽど悪かっただけということが確定してしまった。
「鈴香達は何だった?」
「私は吉ね」
「…………(ふふーん)」
「加茂さんは大吉かー。いいなー」
「おめでとう」
「…………(ぎょっ)」
「いや"何で見せてないのにバレたの"みたいな顔してるところ悪いけど全部顔に出てるから」
そんな如何にも良い結果でしたみたいな顔してたら誰でも分かると思う。本当、分かりやすくて可愛い彼女である。
「というか、赤宮君って意外とおみくじとか気にするのね」
「意外とって……まあ、いつもはそんなに気にしてないけど。でも大凶出たら流石に気になるだろ」
自分が引いたおみくじを改めて見る。病気は"つらみ"失せ物は"無理ぽ"学問は"ヤバみ"といったようにド直球にマイナスな言葉のオンパレードだ。
……この神社の神様ってギャルか何かなのかと突っ込むべきだろうか。あまりにも言葉が軽すぎるというか、現代に染まり過ぎだと思うのだが。
「光太のおみくじだけ何かやたらギャルじゃね?」
「……神社の人も疲れてたんじゃない?」
『でもちょっと
新鮮で面白いかも』
「今年何かあったら俺、このおみくじ思い出すのか……?」
そういえばおみくじにヤバみって書いてあったなーとか、ちょっと……いや、だいぶ嫌だわ。馬鹿らしすぎて。
「ま、引いちまったもんは仕方ないしとりあえずさっさと結んで屋台見て回らね? そんで美味いもん食って忘れようぜ」
「あんたは自分がお腹空いたから食べたいだけでしょ」
「おう」
素直な秀人に神薙さんはため息を吐く。まあ、でも、秀人の言うとおりかもしれない。
「…………(うずうず)」
屋台と聞いて、九杉もそわそわしている。好きだもんなぁ。
「俺も腹減ったし、行くか」
「…………(わーい)」
「いぇーい」
九杉と秀人が示し合わせたかのようにハイタッチする。食欲に関して言えば、この二人の思考って似てるのかもしれない。
「この辺にするか」
おみくじかけの場所に着いた俺達は、横に並んで自分のおみくじを結んでいく。
「おみくじって地味に結ぶのむずいよなー」
「そうね」
そう言いつつも、秀人と神薙さんは特に苦戦することもなくおみくじを結んでいた。
「…………」
しかし、俺の隣にいる九杉の手は止まっていた。
「どうした?」
「…………(ふるふる)」
結べないのだろうか。そう思って訊ねてみたのだが、"何でもない"とでも言うように九杉は首を横に振る。そして、未だに彼女は自分のおみくじを結ぼうとしない。
結べないのなら素直に言ってくれればいいのに。そんなことを思いながら俺が先に自分のおみくじを結び終えると、彼女は不思議な行動に出た。
「え?」
何故か、九杉は俺のおみくじの上から自分のおみくじを結び始めたのだ。
秀人も神薙さんもそんな彼女の珍行動に呆然としている。他の結ばれているおみくじを見る限り、この神社特有の結び方という訳でもなさそうである。
「なあ、何でそんな結び方――」
おみくじを結び終えた九杉に訊ねようとすると、彼女は俺が聞くよりも早くにボードにペンを走らせていた。
そして、俺は理由を知った。
『こうしたら赤宮君に私の大吉
分けてあげられるかなって』
彼女らしい、心までぽかぽかになるようなとても優しい理由を。





