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【本編完結済】加茂さんは喋らない 〜隣の席の寡黙少女が無茶するから危なっかしくて放っておけない〜  作者: もさ餅
新しい友達、手探りの距離感

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加茂さんは子供っぽい

 席に戻ってきた俺達は、事の顛末を二人に白状した。


「そんなことだろうと思った」


 神薙さんはため息を吐く。

 その反応は怒っているようには見えない。むしろ、酷く呆れているように見える。


「それで、主犯は赤宮君?」

「ああ。だから、加茂さんを責めないでやってくれ」

「どっちにしろ九杉は責めないわよ。赤宮君の監督責任じゃない」

「それは意味が分からん」


 もし加茂さんが主犯でも俺が責められるという、とんだ理不尽を垣間見た。

 やはり"加茂さん至上主義者"という俺の認識は間違っていないのかもしれない。


 しかし、今回に関しては俺の責任なので、そんな冗談みたいな理不尽にも目を瞑ろう。

 そう諦めた時、加茂さんが俺と神薙さんの会話に入ってきた。


『赤宮君だけじゃないよ!

 私も共犯!(´・△・`)』


 一緒に罪を被ろうとする加茂さんの優しさに、心が痛くなる。

 俺は彼女にその必要がないことを伝えようとすると、その前に神薙さんが口を開いた。


「九杉は悪くないわ。きっと、お菓子に釣られたのよね」

『その勘違いは

 非常に不服!( ゜д゜)』


 加茂さんは目にも留まらぬ速さで文字を書き、神薙さんに抗議する。

 それに対し、神薙さんは無言で微笑み返すのみ。子供扱いされている気がしなくもない。


 ……まあ、その勘違いはどうでもいいんだ。そんなことより、俺も聞きたいことがあった。


「とりあえず、この話は置いといて」

『置いとけないよ!?』

「置いとけ」

「…………(むー)」


 加茂さんは不満げな顔で俺を見てくる。俺はそんな彼女をスルーして、秀人と神薙さんに訊ねた。


「二人は仲直りしたってことでいいのか?」

「仲直り……は違うわね」

「誤解が解けたってところだな。悪いの俺だし」

「そうね、まさか寝坊だったなんて思わなかったけど」


 ジト目の神薙さんに対し、秀人はバツが悪そうな顔になる。

 何を話したのかは二人にしか分からない。それでも、話が悪い方向に転がらなかったことだけは分かった。


「んで、この後どうすんの? このまま解散?」

「決めてない」

「おいおい……」


 今日は"二人にゆっくり話をさせる"ことが目的だった。

 それに、元々二人を会わせる前に俺と加茂さんは離れて様子を見守るつもりだったこともあり、その後のことは何も考えていなかった。


 時計を見ると、短い針は午後の三時を示している。丁度おやつの時間帯だ。


「時間も時間だし、食べながら決めるのは?」

「そういえば、まだ何も食べてなかったわね」

「せっかく来たし、そうだな。何か食うか……って、メニューは?」


 秀人に言われて、机の上にあった筈のメニューが見当たらないことに気づく。


「既にご執心な子が一人いたわ」


 神薙さんの言葉に、俺達は神薙さんの隣に目を向ける。

 ――加茂さんは一人、熱心にメニューを見つめていた。


「加茂さん、俺達もメニュー見ていいか……?」

「…………(はっ)」


 声をかけると、加茂さんは顔を上げてメニューを机の上に置く。そして、ボードに文字を書いて俺達三人に見せた。


『苺のスペシャルパンケーキ』

「ちょっと待て早い」


 加茂さんの中では、おやつを食べるのは決定事項だったらしい。




 * * * *




 俺達はカフェでスイーツを堪能した後、店を出た。そして、加茂さん提案の、駅の近くにある映画館に向かっていた。


「映画館って久々だなー」

「俺は小学校以来だ」


 あの頃は見ていたアニメが映画化したものを家族で観に行ったりしていた。

 しかし、中学以降はませ始めたというか、なんというか。家族で行くことが恥ずかしくなって、行かなくなってしまった。思春期特有の気持ちの変化である。


 それもあって、最近は映画に関心もなかった。学校の近くに映画館があったことも、今日初めて知ったことだ。


「二人はよく来るのか?」

「私は九杉が観たいものに付き添うことが多いわね。でも、結構楽しめるものよ?」

「なら安心だな」


 何かのシリーズ物だと、特殊な設定が多すぎて肝心の話が頭に入らない……なんてものもざらにある。

 だから、映画にあまり行かない俺達でも楽しめるというのは大きい。今日観る映画もその映画熟練者(加茂さん)のチョイスなので、期待は膨らむ。


『到着!』


 映画館に着くと、加茂さんはテンション高めにボードを掲げる。


「ノリノリだな」

「そうね」

「俺達、保護者みたいになってね?」


 秀人の軽口もあまり否定できず、俺と神薙さんは苦笑いを浮かべた――。




 受付で時間を確認すると、その映画――【もふもふはざーど】は丁度開演30分前。マイナーな映画らしく、空席だらけで四人並んで席を取ることができた。


 受付でチケットを購入後、ポップコーンやジュースも購入。そして、四人で上映されるシアターに向かう。

 廊下を歩いていると、壁に並ぶ現在公開中の映画のポスターが目に入る。その中には、これから観る【もふもふはざーど】のポスターもあった。


「ん……?」


 そのポスターの前で、なんとなく足を止める。そして、眺める。

 ポスター一杯に描かれているのは、ハムスターやモルモット、カピバラ等のもふもふな動物達。おかしなところは何もない筈なのだが、俺はそのポスターに違和感を覚えた。


「何か変なような……」

「光太ー、どうしたー?」


 秀人の声に振り向けば、三人は既にシアターの入り口で俺を待っている。

 細かいことが気になってしまうのは俺の悪い癖だ。きっと、この違和感も気のせいだろう。


「何でもない、今行く」


 違和感の正体も分からないまま、俺は小走りで三人の元に向かった。

映画館初心者な作者ですので、映画館の用語に違和感あったらお知らせくださいませ!!!!!

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