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【本編完結済】加茂さんは喋らない 〜隣の席の寡黙少女が無茶するから危なっかしくて放っておけない〜  作者: もさ餅
いつまでも、ずっと隣で

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加茂さんと仲直り

 加茂さんと碌に顔を合わせることができないまま、迎えた帰りのホームルーム。


 ――このままじゃ駄目だ。

 彼女を怖がらせてしまったのは俺だ。俺から何か言わないと。でも、何を? 考えても分からない。


「赤宮君っ」


 声をかけられて顔を上げれば、心配そうな表情の桜井さんが。


「加茂ちゃん、帰っちゃったんだけど……」

「え?」


 隣の席を見やれば、既に加茂さんの姿はない。それどころか、鞄もなくなっている。

 気がつけば、帰りのホームルームは終わっていた。しまった。ぼーっとし過ぎた。


「お、追いかけてあげてっ」


 すると、桜井さんに頼まれる。


「ごめんね。余計なお節介かもしれないけど、で

も……」

「分かった。ありがとう」

「え?」


 俺は鞄を持って廊下へ飛び出した。

 そして、駆け出す。下駄箱を目指して。


「おいごらぁ! 廊下走んなぁ!」

「ごめんなさい!」

「謝んなら行動に示せぇ!」


 厳しいことで有名な学年主任の先生の怒鳴り声が背に聞こえ、それが段々と遠ざかっていく。

 今度会った時のことを考えると少し憂鬱になるが、今は考えるのはよそう。今はとにかく、加茂さんに追いつかなければ。


 加茂さんは今日、どういうルートで家に帰るのか分からない。だから、彼女が学校を出るまでに追いつかなければならない。

 もしも追いつけなかったら……どうしよう。彼女の家に向かえば確実に会えるだろうが、そこまで追いかけるのは流石に控えた方がいい気がする。やってることストーカーと一緒だし。


「……追いつくしかないか」


 俺は心の中で祈りながら、ただただ走った。




 * * * *




 そんな俺の祈りは天に通じたらしい。


 俺が下駄箱に着くと、彼女はその先の外に出る一歩手前で立ち尽くしていた。

 何をしているのだろう。声はかけずに近づいて軽く観察してみれば、彼女は片手だけを外に出している。

 外は雨雲が空を覆っており、しとしとと雨が降っていた。どうやら、彼女は雨の勢いを確かめているらしい。


「加茂さん」

「…………(びくっ)」


 加茂さんは驚いたように肩を震わせた後、ゆっくりとこちらを振り向く。

 彼女は俺を見るなり少し強張った表情になる。彼女が外に出していた手を見れば、それなりに濡れていた。


「傘は?」

「…………(さっ)」


 分かりきったことを俺が敢えて訊ねれば、彼女は気まずそうに目を逸らす。

 雨の予報は元々あった。しかし、朝は晴れていたので、持ってこなかったのも仕方ないといえば仕方ない。


「…………(ちらちら)」

「行かせねえよ?」

「…………(わわっ)」


 加茂さんが何やら外に飛び出しそうな雰囲気を醸し出していたので、腕を掴んでこちらに引いておいた。




 * * * *




 ――二人きりの帰途が叶った。

 しかし、会話はない。そのせいで、ぽつぽつと傘に当たる雨音だけがいやに響いて聞こえる。


 彼女は顔を俯かせて、黙々とスマホをいじっている。学校を出てからずっとこんな調子だ。

 こちらから画面は見えない。というより、覗こうと思えば覗けるが、状況が状況なのでわざわざ覗くのも気が引ける。


 とはいえ、だ。

 このままでは、加茂さんを家まで送って「また明日」になってしまう。それでは加茂さんを追ってきた意味がない。


 俺が、何か言わなければ。


「…………(ぐいっ)」

「わっ」


 制服の裾を引っ張られて、足を止める。


「……加茂さん?」


 気づけば、彼女は涙目で俺を見つめていた。


「…………(ぐいぐい)」

「え、ど、どうした?」


 更に、彼女は裾を引っ張るのをやめようとしない。俺にはその理由が分からなかった。


「…………(すっ)」


 加茂さんの行動に困惑していると、彼女はスマホの画面をこちらに向けてくる。


[ごめんなさい]

[ごめんなさい]

[ごめんなさい]

[本当にごめんなさい]

[ごめんなさい]


 見せられたのはライナーのトーク画面。沢山の謝罪の言葉が送信されており、その送信先は俺だった……え、俺?

 急いで鞄からスマホを取り出す。画面を点ければ、そこには怖いぐらいの量のライナーの通知が。


「……ごめん、全然気づかなかった」

「…………(ぱちくり)」


 加茂さんから一番最初にライナーが送られてきたのはお昼頃。時間帯からして、昼休みの終わり際だ。

 その後は、一時間程の感覚が空いている。五時限目、六時限目の授業後にも送ってくれていたらしい。


 そして、彼女は今も俺にライナーを送っていた。


[気づいてなかった?]

「ほんとごめん」


 これは完全に俺に非がある。

 いくらマナーモードにしていたとはいえ、サイレントにしていた訳ではないのだ。だから、通知の際のバイブは機能していた筈。その上で無視なんてされたら、泣きたくもなるだろう。


[未読無視されてるのかと思った]

「……ライナーで謝られるとは思わなかったから」

[直接言えなくてごめんなさい]

「……ごめん、言い方悪かった。いいんだ、俺も悪かったから。たかが傷見られた程度で怒りすぎた。ごめん」

「…………(ふるふる)」


 朝の件についても謝る加茂さんは首を横に振る。


[赤宮君にとって「たかが」じゃないなら、それは「たかが」じゃないんだよ]


 続けて、覚えのある言い回しで打たれた文が送られてきた――。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 話すなら、なるべく顔を合わせてがいいですね(´・ω・`) こういう事があり得るから(←) 画面が「ごめんなさい」で占められてるとギョッとしますね。笑
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