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【本編完結済】加茂さんは喋らない 〜隣の席の寡黙少女が無茶するから危なっかしくて放っておけない〜  作者: もさ餅
"親友"の境界線

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異変

「あのお化け怖かったねー」

「こっちから来るって思ってたら後ろに立たれてて、心臓飛び出るかと思った……」


 お化け屋敷から出てきた女子二人が前を通りかかり、そんな感想を漏らして歩き去っていく。反応は上々らしい。

 時計を見れば、交代してから30分が経とうとしていた。


 ――バンッ!


 時折、教室内から何かを叩いたような大きな音が鳴っている。

 でも、そんな音が鳴るような仕掛けあっただろうか。似たような音が出る場所は予想がつくが、ここまで大きな音は出なかった記憶がある。


 ……何かあったのか?


「赤宮、次、入れて」

「っ、あ、ああ、分かった」


 教室内からひょっこり顔を出した小谷さんから指示を受け、俺は次の組を教室内に誘導する。

 ……まあ、俺の気のせいって可能性もある。小谷さんも何も言ってないし、今は自分の仕事をこなそう。


「お疲れ、赤宮」

「赤宮君、お疲れ様」


 次の組の誘導を終えた後に声をかけられそちらを見れば、見知った顔の二人が立っていた。


「おー」

「何だよ」

「二人って付き合ってるんだなーってことを再確認した」

「……あー……」

「あはは……」


 その二人……山田と桜井さんは恋人繋ぎをしたまま、照れ笑いを浮かべる。


 今まで、二人がイチャついているところを見たことがなかったこともあり、俺は少し新鮮さを感じていた。

 まあ、表立ってイチャついていないというだけなのだろうが。きっと、俺達の知らないところではそれなりに熱々な関係なのだろう。とにかく、関係が良好そうで何よりだ。


「それで、二人はどうした? 何か教室に取りに来たのか?」

「いや、近く通りかかったら受付やってる赤宮見えたから」

「当番頑張れーって言いにきたんだよね」


 どうやら二人の時間を削って、わざわざ俺に労いの言葉をかけに来てくれたらしい。

 嬉しい気持ち半分、申し訳ない気持ち半分といった具合で少し複雑な気持ちになりながらも、ひとまず二人に礼を言うことにした。


「ありが――」


 ――バンッ!


 再び教室内から響いた大きな音が、俺の言葉を遮った。


「こ、これ、何の音?」

「何かぶっ叩いたような音だったよな……?」

「そんな仕掛けあったっけ……?」


 既に当番を経験している二人が、揃って首を傾げている。


 もしかして、気のせいじゃなかったのか……?

 ここで俺はようやく、小谷さんに確認するべく教室の戸に手をかけることにした。


 ――そして、その戸は俺が手に力を入れる前に勝手に開いた。


「赤宮」


 戸が開くと、教室内から小谷さんが顔を出してくる。きっと、並んでいる次の組の誘導のためだろう。


「待って。まだ、入れちゃ駄目」


 俺が口を開こうとすると、小谷さんはその前に待ったをかけてくる。

 戸を開けたのは誘導のためではなかったらしい。となると、彼女が俺に声をかけた理由は他に一つしか思いつかなかった。


「中で何かあったか?」


 小谷さんは少し迷った後、ゆっくり頷き、言った。


「見て、確認、できてない」

「……でも、何か起きてるかもしれない?」


 小谷さんは、今度は即答するように頷く。そして、続けて言った。


「確証ない、でも、場所、分かる」

「それでいい。どこ」

「加茂さん」


 薄々、そうだろうなと思ってはいた。だから、驚きはなかった。

 あの大きな音は、音の大きさが違えどロッカーを開ける時の音に似ていたのだ。


 ――俺は山田と桜井さんに向き直り、訊ねる。


「今の話聞いてたか?」

「ああ、だから受付は俺達に任せとけ」

「赤宮君、いってらっしゃい」

「……え?」

「「え?」」


 そっち?


 中の様子を二人に見に行ってもらおうと思っていたのだが、二人は俺の代わりに受付係を引き受けるつもりらしい。


「赤宮、三分だけ、人、教室、入れさせない。行ってきて」


 そう言う小谷さんは、三分タイマーのストップウォッチを片手に用意していた。俺が行くのは決定事項らしい。

 ……まあ、いっか。俺としても加茂さんが心配だった。行かせてもらえるのなら、その厚意に甘えることにしよう。


「頼んだ」


 三人に言って、俺は暗い教室の中に足を踏み入れた――。

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