第1幕 裏切り者
「それで親父、今はどんな状況なんです?」
俺たちは来た道を急いで戻っている途中で、俺は親父に今起きていることの説明を求めた。
「・・・今日俺たちがここに来たのには2つの目的があったんだ。1つは清十郎お前に別の道を示すため。もう1つは組織内の裏切り者をあぶり出すためだったんだ。」
「裏切り者をですか?」
「ああ、どんな組織でも必ずしも一枚岩ではないんだ。それで早めに処分するために組織内の全員にそれぞれ罠を仕掛けたんだ。それがついさっき裏切り者が罠に引っかかったらしい。」
「それなら何故可憐が危険なんですか?」
「予想外のやつが裏切り者だったせいだ。もっとも可能性が低いと思って組んでおいた作戦を使わざるおえなくなった。・・・月城可憐を囮にした。」
「なっ!親父!何故そんな事を!」
いくらなんでも、裏切り者をあぶり出すためだとしても、護衛対象を危険に晒すなんて何故そんな事を!
しかし、逆を言えばそれだけ信頼していた人物が裏切り者なのか。
「そして、その結果月城可憐を人質にとられた。相手の希望は清十郎お前との決闘だ。」
!!
俺との決闘を希望しているって事は、海馬聖也なのだろうか?
いや、親父はあいつをそこまで信頼をしていないはずだな。
「親父、結局裏切り者は誰だったんですか?」
俺はおそるおそる親父に尋ねた。
すると親父からは予想外の名前が告げられた。
「・・・清十郎、ためらうなよ。裏切ったのは・・・今野達也だ。」
えっ!
そんなはずはない!
だって今野さんは、何度も俺と一緒の仕事をしてきたし、組織に世話になるようになってから色々教えてくれた人だぞ!
今回だって仕事を始める前に俺の事を心配していろんな注意をしてくれたんだ。
「親父、本当なんですか?」
「ああ、俺だって耳を疑ったさ。だからこそ保険としての計画だったのにそれを実行する事になった。」
親父でも予想外の事が起きるのか。
「清十郎、もう少ししたらあいつが指定した工場跡に着く。決闘で蹴りがつくまでは月城可憐には何もしないと誓っていたから、心配しないで今野のバカを止めてくれ。」
・・・今野さんの今までの性格からも、その約束は守られるだろう。
ただ、どうして俺との決闘を望んでいるのだろうか?
しばらくすると、どうやら今野さんが指定した工場跡についたようで車が止まった。
「清十郎、必ず今野を生かして倒せ。裏切り者の処断は俺がする。」
裏切り者の処断。
組織の内部情報を他に書いて教えられないように、まずは両腕を切断する。
次に誰にも伝えられないように、舌を切り取る。
最後に目で伝えられないように、両目を潰す。
これが方法であった。
「親父、必ず今野さんを止めるよ。」
「用心しろよ。」
俺は武装はしないで、用心しながら工場跡の中へと入っていった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
体調不良が続いてしまっていて、他の作品が更新できずすみません。
次回は2018/3/17に更新予定です。