第5幕 高柳家
すみません!
体調を崩してしまい遅れました。
「先ほどは取り乱してしまいすみませんね。」
俺たちは家の中へと案内されて、話をするために談話室みたいな場所へと連れていかれた。
「親父この人は?」
俺は親父に小声でたずねた。
「ああ、この人は高柳翔悟さんだ。どんな人かは話せばわかる。」
親父はそれだけ教えてくれると後は何も話してくれなかった。
「さてと、確か矢澤さんはあなたですか?」
「ええ、そうです。いきなり昔の事件の話を聞きたいなんて連絡をしてしまいすみません。」
「いえいえ、あの事件を覚えてくださった事の方が良かったですよ。ただ、儂が心の整理がついているものの、妻はまだなもので申し訳ないが席をはずしているよ。」
「いえ、お話いただけるだけで助かります。」
2人の会話がいまいちわからないな。
いったいあの事件ってなんなんだろうか?
「しかし、そちらの人は息子に目と鼻の形がよく似ていて驚きましたよ。話し始める前に名前を伺っても?」
「自分は・・・柿崎清十郎です。」
「・・・そう・・・ですか。」
高柳さんはどこかガッカリしたように返事をしてきた。
「まあ、そうですよね。っと!それじゃあ話を始めましょうか。」
そこからは高柳さんによってかつて起きた事件についての話が始まった。
なんでも事件での被害者は高柳さんの息子の直昌さん、その妻の霞さん、そして直昌さんと霞さんの子供である幸哉君の3名だったらしい。
事件は見通しの良い一直線の橋で起きたらしく、車に3人が乗車した状態でわたっているときに橋が老朽化のためか突然壊れてしまい車は転落により破壊されてしまったらしい。
下は川になっていたらしく、車は川底に沈んでしまって引き上げるまでにかなりの時間を有したらしい。
結果的には死体は両親のみ発見されて、子供は見つからなかったらしい。
この件では橋の老朽化が不自然だった事もあり事件として始めは扱われていたが、結局なんの証拠も見つからなかったために事故として処理をされてしまったらしい。
その後はいくら遺族が再調査を願っても行われないままに今にいたるとのことだった。
「本当に今でも信じられませんよ。老朽化していたなら何故立ち入り禁止にしておかなかったんだ!もし、なにか状況が違っていれば。ひょっとしたら孫は死体が見つからないのは生きているからかもしれない。今でも儂たちの助けを求めているかもしれない。そんな事を何度も何度も何度も何度も考えてきましたよ。」
高柳さんは強く拳を握りながら話してくれた。
俺はその話を聞いて気づいたことがあった。
橋はひょっとしたら・・・。
親父を見ると、親父は無言で首を振った。
「はぁ、すみません熱くなりすぎました。まあ、事件はこんな感じでしたね。」
「ありがとうございます。色々と参考になりました。」
「いや、こちらこそ愚痴みたいなのに付き合ってくださりありがとうございます。この後はひょっとして現場か墓にですか?」
「ええ、現場はさすがに今日は無理そうなので、墓の方に行こうかと。」
「場所はわかりますかな?」
「ええ、大丈夫です。」
「柿崎君だったね?」
「はい。」
「また、顔を見せてくれないかな?今度はうちの妻がいる時にでも。」
「時間がありましたら。」
「うむ、それで構わないよ。」
その会話で終わりになり、俺たちは高柳さんの家を後にして、事故で亡くなった直昌さん一家の墓へと向かう事になった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
次は2018/3/3に更新予定です。