第4幕 家族
「・・い、おい清十郎!」
昔のことを思い出していると、親父が話しかけてきた。
「ああ、すみません。なんですか?」
「まったく、しっかりしろ。」
どうやら知らないうちに目的の場所へとついていたらしい。
「ところでここは?」
「・・・ここにな、清十郎お前に会わせたい人と見せたいものがあるとりあえず車を降りて移動しよう。」
「会わせたい人と見せたいものですか?それはいったい。」
俺に親父が会わせたい人なんているのだろうか?
それに見せたいものって一体なんだろうか?
「・・・なあ清十郎、もしもだ、もしも別の人生を歩んでいけるとしたらお前はどうする?」
「想像できないですよ。そんなもしもは俺にはないですよ。」
そうだ。
俺にはそんな事を考える資格さえないのだから。
「なーに、たとえ話だよ。なんかこんな事をしたいとかないのか?」
「そんな事を言われても。」
「かったいやつだな。俺は今までお前には護衛者としての事のみを教えてきた。お前は今そのせいで悩んでいるのだろう?」
「・・・はい。」
自分の過去と今のせいで、俺はどうすべきなのか迷っている。
その結果前回は危ない目に可憐を合わせてしまった。
「まあ、お前の場合は仕方ないのかもしれないが、ここいらで一度自分の原点を見つめ直すのもいいだろうからな。」
「げんてん?ですか。」
「そうだ。自分がどんな存在なのかを知るんだ。」
俺はどんな存在なのか?
そんな事はわかっている。
今は護衛者として生きているが、その前は暗殺者として生きてきた。
それを見つめ直す意味なんてあるのだろうか?
「その顔は、意味がわからないみたいだな。」
「はい、正直必要性を感じないです。」
「そうか。ならお前は何者だ?どこの誰だ?」
「そんなの自分は柿崎清十郎ですよ。」
「違うそれは俺が与えた名前だろ。」
確かに今の名前はあの事件の後に貰った名前だ。
「名無しです。」
「それも違うだろ。お前は拾われたんだろ?ならば本当の名前や両親は?」
「・・・知らないですよ。」
俺の両親なんてどんな人達なのかなんて知るわけない。
「違うな。お前は知らないじゃなくて知ろうとしなかったんだろ。」
「・・!」
そんな事はない!
知ろうとしなかったのではなく、知る手段がなかったんだ。
「まあ、今まで気づいていたのに放置していた俺も悪いんだがな。その結果お前は今の状態になってしまった。自分の中に確固たる決意が無いせいで些細な事で迷っちまった。」
「・・・・・・」
俺は何も言い返せなかった。
「だからな清十郎、お前には一度考えて欲しい。全てを知った上でお前の意思で決断して欲しい。この先をどう生きて行くのかをな。」
「・・・・・・」
「そのための情報をお前に渡そう。」
やがて俺たちの前に一軒家が見えてきた。
「あそこにお前に会わせたい人がいる。」
「・・・」
やがてその家の前につき、親父は玄関の近くのチャイムのボタンらしきものを押した。
しばらくすると、玄関に歩いてくる足音がして扉が開いた。
「はい、どちら・・・・・・直昌?」
扉を開いてくれた人は俺の顔を見るなり、誰かの名前を言うとその場で涙を流し始めた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回は2018/2/24に更新予定です。