第3幕 咎
「なにうぐっ!」
ドサッという音と同時にターゲットだった男が自分の作った血の池に倒れた。
もう俺はどれくらいの人を暗殺してきたのかわからなくなってきた。
最初はかなり抵抗があったが、1人また1人と繰り返すうちに感情が麻痺をしてきてしまっている。
パチパチパチ
いきなり拍手をする音が辺りに響いた。
だいたいこういう時は虚像がやっている。
案の定振り向くとそこにはニヤけた虚像がいて俺に近づいてきた。
「毎度見事だな名無し。申し分ないな。」
「思っていないくせに。」
「そんな事ないさ。君は理想通りに育ってくれてるよ。あの臓物喰いや、解体屋だって感心していたしね。」
「・・・あいつらに感心されても嬉しくない。」
俺が自分を認識したあの日からこの人物虚像は様々な知識を俺に詰め込んだ。
まず俺は名無しという名前で、なんでも虚像にある日拾われてきたらしい。
もっともそれが本当かはだいぶ怪しいが。
次に今俺が所属しているのはスコーピオンという組織で、金さえ積まれればどんな事でも引き受ける闇組織だ。
そこで俺は生き続けるために様々な技をいろんな奴から教わっていった。
削りたての鉛筆での暗殺方法や、ピッキング、金庫破りの方法、罠の設置、高い場所からの無傷での落下方法、そんな色々な中で一番相性が良かったのがナイフだった。
当時はまだ子供だった事もあり、銃の射撃能力はあったものの持ち歩く事には適していなかった。
しかも銃は撃ってしまうと自分の居場所がバレてしまうので良くなかった。
一方ナイフであればいろんなところに隠せるし、虚像と鍛冶屋が俺のために確実に仕留められるように特殊なナイフを作ってくれていた。
そして、その相棒とともに虚像に言われた人物の暗殺を繰り返していった。
そんな時に可憐の両親である月城夫妻の暗殺を虚像が言ってきた。
俺はいつも通りに無邪気な子供のフリをしてターゲットに近づいて行ったが、なぜかそのターゲットの近くには虚像もいて、一瞬俺の方を見てターゲットに知らせてきた。
そこからは正直悲惨だった。
俺はすぐに月城夫妻の女の方に一瞬で近づいて右肺から心臓に向けて肋にぶつからないように差し込んだ。
女はこちらに驚いた表情をして動かなくなった。
月城夫妻の周りにいた人間たちも弾かれたように、その結果を見てから動き始めたが全てが遅い。
全部で何人を殺したのかはわからない。
俺は全員をありとあらゆる方法で殺しつくし後はターゲットの男だけになっていた。
あの人と最後に会話をしたのは印象的で良く覚えていた。
「僕もここまでか。君はなんて寂しい目をしているんだい?」
「・・・・・・」
「悲しいね。最後くらい会話してくれてもいいのにだんまりか。」
「・・・会話の意味がない。」
「なるほど、君は無知なんだね。だからか、だから君だけじゃなくて君しかいなかったんだね。」
「・・・どういう意味?」
「僕からのアドバイスだよ。思考を停止したらダメだよ!悩み続けなさい。」
この時も今もこの言葉の意味はなんなのかわかっていないが、なんとなく覚えていた。
その後、俺はこの人を心臓を刺して殺した。
死に際には、
「・・・いつか・・きっと・・・」
一体何が言いたかったのだろうか?
わからないままだな。
その後は俺はすぐにその場所を離れ組織のアジトへと帰った。
そういえば、なぜあの場所で虚像はあんな行動をとったのだろう?
結局真意はわからないまま、この件からしばらくしてから矢澤誠司の暗殺を失敗して今に至る事になった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
次回は2018/2/17に更新予定です。