第2幕 臓物食い
放課後に学園の廊下を歩いていると、いきなり俺の近くに海馬が現れた。
「おい、柿崎。お前はしばらく敵の情報を探るようにとボスからの伝言だ。」
「海馬。」
「それだけだ。」
やっぱり海馬は俺の事を嫌っているらしく、ただそれだけを伝えるとあっという間に俺の近くからいなくなった。
「あいつと俺とで大丈夫なのかな。」
これからの事を考えると自然と愚痴が出てしまった。
「うん?そんなところでどうしたの?」
いきなり声をかけられ、聞こえた方を振り向くと、
「なんだ可憐か。自分はただふらついていただけさ。そっちはどうしたんだ?」
「そうなの?私は森崎先生に頼まれて海馬くんにプリントを渡そうと探しているのよ。」
「それならついさっきここを通ったよ。」
「どっちに行ったの?」
「あー、そこまでは気にしていなかったけど多分あっちだと思うよ。」
俺は可憐がきた方とは逆を指差して教えた。
「そう、ありがとう。」
「いなかったらごめん。」
「ううん、気にしないで。」
それだけ可憐は言い残して行ってしまった。
そしてその時にそいつは現れた。
けして油断などしていなかったのに、いつの間にかここにいたみたいだ。
「なるほどのう、あやつが言っておった通りじゃの。」
「!!誰だ!」
「久しいのう名無しお主が失敗していらいかのう。」
俺はその声、その喋り方をよく知っていた。
そして、体育祭の時に毒蛇がいたことから薄々感じていたが、今回の件にやはりスコーピオンは関わっていたのだな。
今回はよりによって一番危険な奴が来てしまったのか!
「久しぶりですね、臓物食いあんたがなんでここにいるんだ?それより姿を出したらどうです?」
「ふぇふぇふぇ、姿は勘弁して欲しいのう。そこら中に監視カメラが仕掛けてあるせいで建物内では見られたくないからのう。」
「なら姿はいいんで目的はなんですか?」
「教えるわけなかろうに、時期に開始するから楽しみにしておるんじゃな。」
その時わずかに気配が窓の外から感じたので、そこを急いで確認すると窓の外の部分に人がいた気配があるものの、すでに目的の人物はそこにはいなかった。
「いったいどうやってここまで気付かれずに侵入ができたんだ?前の一件いらいかなり厳重になっているはずなのに。」
そう、前に起きた間宮の一件いらい学園への出入りはさらに厳重になっているのに、奴は何事もなかったかのように自然にいた。
奴の言っていたもう時期始まるとはいったい何を企んでいるのだろうか。
まあ、その計画よりも問題なのは臓物食い本人である。
奴は渾名の通りで人の肝臓を異常に好んでいて、殺した相手のものを食べるといった狂った人物だ。
それ故にスコーピオン内でも奴の部下になりたいと思っている者はほとんどいなかった。
今回最悪なのは、奴が好んで狙うのが10代後半から20代前半の女性だということだ。
可憐はいうまでもなく護れるが、その周りを狙われてしまうと全員を護る事は難しい。
これはさすがに親父に助けてもらわないとダメだろうな。
そんな事を考えていた時だった。
「キャー!!」
「!!可憐の声だと!」
いきなり可憐の悲鳴が聞こえてきた。
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次回は2017/12/16に更新予定です。