第6幕 中継
いよいよ体育祭の当日となった。
それにしてもこの行事には疑問が多くあるな。
最初にやる選手宣誓とは、俺からしたら意味がわからない。
本当の戦いには、フェア精神なんてものは存在しない。
いざとなれば、どんな卑怯な手段をとろうと勝てば正義だからな。
さらには次の準備体操も謎だな。
なぜに運動前に体操をするんだ?
いつでも動けるようにしておくのは基本中の基本だろうに。
しかもその後に体育祭における注意の連絡があるなんて、準備体操した意味ないよな。
そうこうしているうちに、体育祭のプログラムは順調に進んでいった。
途中では、保護者同士の喧嘩や親父が突然現れて、話しかけてきたりと少しアクシデントはあったものの問題はなかった。
そして、いよいよ俺たちの考えた障害物走の順番がきたときだった。
「すみません、ここに柿崎君いますか?」
実行委員の1人がうちのクラスの応援席にやってきた。
「自分はここですけど?何かありましたか?」
「それが森崎先生が呼んでます。」
「何かあるのかな?」
「さあ?私はただ呼んでくるように言われただけなんで。」
このタイミングで呼ぶなんてなんか問題でもあったのだろうか?
仕方ない、言われた通りにするか。
「どこに行けばいいんだ?」
「ごめん、言ってなかったね。放送器具のあるテントに来てほしいって言ってたよ。」
「わかった。連絡ありがとう。」
俺は伝えてくれた実行委員の生徒に礼を言うと、1人でそこに行こうとすると、
「清十郎君どうしたの?」
「ああ、可憐。なんでも森崎先生が自分を呼んでいるみたいだから、ちょっと会ってくるよ。」
「何か競技に問題でもあったのかしら?」
「うーん、まったくわからないんだよな。」
「なら、私も一緒に行くよ。」
「いや、自分1人で大丈夫だよ。」
「競技に問題があったとしたら、1人より2人で行った方がいいわよ。もしなんでもなかったらそれはそれでいいじゃない?」
どうするべきだろうか?
もし、恭子さんが俺を呼び出した理由が仕事関連だったら、可憐を連れて行ったらまずいよな。
俺がどうするべきか悩んでいると、
「ほら、清十郎君早く行こう。」
「ちょっ!可憐待って。」
可憐に腕を引っ張られて、テントに向かって連れて行かれてしまった。
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テントについて俺はすぐに恭子さんの近くへと行き、小声で話しかけた。
「すみません、遅くなりました。」
「やっと来たの?ってなんで月城さんまで来てるの?」
「恭子さんすみません。なんかついてきちゃいました。」
「別に大丈夫だけど、ちょっと意外ね。今までのあなたなら考えられない行動ね。」
「そうですか?」
「そうよ。」
恭子さんには、そう言われたが自分の変化は自分ではわからないというぐらいだから、俺自身はわからないな。
「あのー、森崎先生。何か問題でもありましたか?」
「そうじゃないから大丈夫よ月城さん。ただね次の競技内の実況を柿崎君にしてもらうだけだから。」
「「え!」」
「あら、息ぴったりね。」
「いやいや、なんで自分がやるんですか?」
「だってあなたが考えたんじゃない?責任持ってやりなさい。」
「森崎先生、さすがに清十郎君にいきなりすぎませんか?」
「あら、きっと大丈夫よ。それにもう始まるから今から変更は無理よ。」
「はあ、わかりました。俺1人でやればいいんですか?」
「大丈夫よ、私と2人よ。月城さんもせっかく来たんだから、ついでに横にいていいわよ。」
「・・・そうですね。そうさせてもらいます。」
なんか恭子さん上手いこと可憐をここに留めたって事は、現在進行形で何か問題が起きているんだな。
ひとまずは、そちらは今ここにいないメンバーを信じて、全てを任せておこう。
しかし、実況中継ってどんな風にやればいいのだろうか?
恭子さんは、障害物の説明をしていけば大丈夫って言っていたが、基本的にこの人は面白ければ全て良しだしな。
どことなく不安なんだよな。
そしていよいよ選手入場が始まった。
テントでは放送器具の場所に恭子さん、俺、可憐の順に座り入場が終わり切るまで待っている。
無事に入場が終わり、ついに第1レースが始まる時が来た。
いつも読んでいただきありがとうございます!
次回は2017/10/28に更新予定です。