第4幕 親子
俺が晩御飯が終わり、自分の部屋に行き休もうと準備した時親父に呼び出された。
「すまんな清十郎、少し話をしたかったんだ。」
「なんですか改まって?」
「なに少し雑談に付き合え。何か飲むか?ちなみに酒はダメだぞ。」
「いや、飲みませんから。普通に水でいいですよ。」
「何だいいのか?俺はちなみに飲ませてもらうぞ。」
「まあ、好きにしてください。」
それにしても、俺を呼び出して酒を飲むなんて初めてだな。
いつも親父は、何があるかわからないから酔っていられるかとかいう理由で飲むのを嫌っていたのに。
「なあ、清十郎。もしもだ、もしもお前の元いた組織のやつと出会ったらどうする?」
「親父なんだよ急に?」
「いや、ただなこの仕事だ。今すぐはないだろうが、いつかは出会うかもしれないだろ?」
「そうですね。かつて親父に引き取られてすぐなら、きっと誓いを破ってやつらとは、どっちかが全滅するまで殺しあったかもしれません。」
「・・・ほう、かつてはね。じゃあ今はどうなんだ?」
「今はやつらとやり合うより、依頼されている可憐の護衛の方が重要ですから、そちらを優先します。」
「・・・なるほどな、だいぶ変わってきたな。」
「そうですか?」
「ああ、いい意味で少し丸くなったな。」
「自分じゃわからないですね。」
親父がいう事だから、たぶん俺は少しづつ変わってきているのだろう。
それにしても、結局親父は何を言いたいのかわからないな。
「なあ、清十郎。お前護衛対象に自分の過去を話したのか?」
「・・・・・・いえ、話していません。必要がないとおもったので。」
「あまいな、いずれは話さなければ、今の関係が簡単に崩れてしまうぞ。」
「そうですか?」
「そうだ、秘密にしておくって事は、相手を信頼していないって事だ。それから生まれる不信感は致命的だから、気をつけておけよ。」
親父は俺に、人間関係はすごくもろいと教えたかったのか?
そうだな、一度信頼関係を失ってしまうと、再び取り戻すのはすごく大変らしいから注意はしておかないとだな。
「わかったよ親父、戻ったらすぐに話すよ。」
「おいおい、清十郎そういう事じゃないんだよ。」
「はい?」
「まったくお前相変わらずそういうところはダメだな。」
「どういうところですか?」
「まあ、打ち明けるのは護衛対象ともう少し仲良くなってからにしろよ。」
「わかりました。ところでどういうところがダメなんですか?」
「お前、自分で少し考えてみろ。」
「・・・・・・はい。」
なんか親父にダメ出しされたけど、俺にはさっぱりわからないな。
一体どこらへんがダメなんだろうか?
後でじっくり考えてみるか。
「しかし、清十郎お前そういえばまだあの時のナイフ持っているんだな。」
親父がいったあの時とは、親父と俺が初めて会った時の事だろうな。
確かに俺は今でもあの時のナイフは手入れをして取っておいてある。
まあ、誓いがある以上もう使う事はないが一種のお守りだな。
「ええ、今も部屋にありますよ。」
「気に入っているのか?」
「いや、どちらかと言えば記念品ですね。」
「そうなのか?」
「はい、あれのおかげで今があるので。」
「まったく、意外な一面があるもんだな。」
親父がため息交じりでいってきた。
「まあ、真面目な話をしておかないとだな。清十郎、体育祭当日は確実に敵が侵入してくるぞ。」
「何か確証があるんですか?」
「ああ、最近になって武器を大量に仕入れた組織がある。」
「なら先に抑えてしまえばいいんじゃないですか?」
「それは無理だな。」
「何故ですか?」
「清十郎、簡単な話だよ。今から抑えるためには準備がいる。そして抑える場所は条件が一切ない相手に有利な状態だ。一方体育祭に合わせれば、まず日にちを特定できるし、相手の出方がわかり、こっちが罠を仕掛けられるんだよ。」
そうか、今からであれば相手は何も気にせず攻撃ができてしまう。
そうなれば、相手もこっちも怪我人だらけだし、これが誘導で別の組織が体育祭を狙うとこっちは自然と人手不足になってしまうんだな。
「それじゃあ親父。当日まで泳がせておくんですね。」
「ああ、そうだ。そして今回の計画を成功させるためにも、清十郎お前の担当の競技ではかなりふざけろいいな?」
「その時に罠にかけるんですね。」
「ああ、意図的に騒がしくして、やつらが動きやすくして、動いたところで一網打尽にする。」
「了解です。」
「まあ、敵は俺たちでなんとかするから、お前も少しは楽しめよ。」
「?まあ、わかりました。」
当日楽しむってどういう事なんだろうか?
親父はそれで会話は終わりとばかりに、俺を部屋から追い出した。
てか、話している間に酒の瓶を2本もあけていたけど大丈夫なんだろうか?
いつも読んでいただきありがとうございます!
次回は2017/10/14に更新予定です。