第1幕 委員会
「今日から、このクラスの担任になる森崎恭子よ!よろしくね!それと私に年齢なんて聞いてきたら・・・」
恭子さんは手に持っていた短鞭、確か馬の尻を叩くやつだっけか、をブンブン振りながら、
「こいつでしばくから。」
教室中がシーンとなった。
そもそもなぜ今こんな事になっているのかというと、この前起きた間宮の事件が関係していた。
あの件でガーディアン11である彼によって、捕まえた2人の尋問は速やかに行われ、あっけなく情報をはいたらしい。
それによると、間宮は完全に利用されただけで、月城可憐の件には関係していなかった。
むしろもう1人が、本命で何処か別の組織から依頼をされていたらしい。
いまは、他のガーディアンが情報収集に動いているらしい。
それと、他の複数の組織が動いているのもわかった。
その結果この学園に人員を増やす事になり、ガーディアン5の森崎恭子さんが間宮の空いた担任に入ってきた。
ただこの恭子さんは、軍人気質だから微妙に性格に問題があるんだよな。
まあ、あの事件の時にクラスのみんなは姿を見ているからすぐに納得したらしい。
「こら!柿崎!なにボーとしている!」
「っと!すみません。」
これからますます面倒そうだな。
「よし、話を続けるよ!今度この学園の体育祭がある。そこで各クラスで実行委員を2人選ぶ事になった!」
「ええ、なにそれ。」
「だるそうだな。」
「てかあたし、部活あるから無理だし。」
教室のあちこちでひそひそ声が聞こえてきていた。
何だろうか?
体育祭とはどんなものだろうか?
それに実行委員?とやらは、どんな関係があるのだろう?
「こら、お前達静かにしろ!どうせ立候補する奴はいないんだろ?」
「先生!私やりますよ。」
可憐が勢いよく手を挙げていた。
「おお!流石だな月城!おい男子はいないのか?」
男子は、俺も含めて誰も立候補はしなかった。
俺はなにをするのかわからない以上、今回はパスだな。
「まったく情けないな!今なら実行委員の担当には私もいるんだぞ!」
やっぱり恭子さんが、実行委員の担当教師になっていたのか。
これで俺がいなくても大丈夫だよな。
「仕方ない、それなら誰にするか?」
恭子さんは教室中を見渡したり、名簿を見たりした後、
「よし、柿崎お前がやれ!」
「はぁ?自分ですか?」
「ああ、そうだ!お前の顔がやりたさそうだったからな!」
「いや、どんな顔ですか?」
「そんな顔だ!」
うわー、そうだったこの人いつもこんな感じで、他人に仕事を振ってたな。
確かあれは、書類仕事を溜めすぎて大変だった時だったな。
「霧島、お前なんか環境みたいな顔だからこの書類やっといて。佐々木お前は後始末の星に生まれたんだ、これを片しておいてくれ。木下お前は悪そうだ、この書類を片しておけ。」
そんな風に部下をこき使って片していた事があったぐらいだからな。
「という事で実行委員は決まったからな!今日の放課後から集まりがある、場所はホームルームの時に伝えるよ。」
それだけ伝えると、恭子さんは教室を出ていった。
「なんや清やん、大変そうやな?」
「響也か、実行委員ってなにやるんだ?」
「うーん、あかんわいもわからん。」
「可憐なら何か知っているかな?」
「おや?」
「?どうした?」
「いやいや、なんでもあらへんよ。そうやね、月城さんなら知っとると思うで。」
「後で聞いてみるしかないか。」
「よし、授業を始めるぞ!」
そういえば、最初の授業は社会か。
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「・・・・・・という事が昔あったんだ。ところでみんなは、お茶がいつから日本にあったか知っているかな?」
社会の先生は、よく歴史においての雑学を話すのが好きな人だった。
前の時はミイラの作り方だったもんな。
「先生!お茶は日本が発祥じゃないんですか?」
「はは、それは違うよ。お茶は日本じゃないんだよ。お茶は、日本が中国の進んだ制度や文化を学び、取り入れようとしていた奈良・平安時代に、遣唐使や留学僧によってもたらされたと推定されているんだ。平安初期の『日本後記』には、「嵯峨天皇に大僧都永忠が近江の梵釈寺において茶を煎じて奉った」と記述されているんだ。これが、わが国における日本茶の喫茶に関する最初の記述といわれているんだ。お茶は非常に貴重で、僧侶や貴族階級などの限られた人々だけが口にすることができただけだったんだよ。このころの茶の製法は、「茶経」にある餅茶であったらしい。」
「それじゃあ、平安の時に中国から来たんですか?」
「それなんだが本格的に伝わったのは、1214年、栄西が広めたって説の方が有力なんだよ。」
「なんですかそれ?」
「まあ、簡単にいうと一部の記述だけでは、後世の人が書き足してしまった可能性があるんだよ。有名なものでは、日本にモンゴルが攻めて来た元寇の絵があるだろう?あれは馬に乗っている人物以外は、後で書き足された落書きだったなんて事があったんだ。要は、情報を一方だけを信じないで複数集めた方が正しいって事だよ。」
相変わらずこの先生の言っている事は、置き換えて考えると結構ためになるな。
そうだよな、たとえどんなに信用できる情報であっても、全部鵜呑みにしてはいけないんだな。
そんな事を考えながら残りの授業を受けていたら、気づいた時には帰りのホームルームになっていた。
しくじったな、昼にでも可憐に聞こうと思っていたのに、仕方ない集合場所に着くまでに聞いておこう。
お茶の歴史はひょっとしたらミスがあるかもしれません。
次回は2017/9/23に更新予定です