どうか私の嫁になって下さい!(二)
お爺さんは、この五人の足下を見…いえ、熱心な求婚ぶりを見て、かぐや姫に
「仏のように大切な儂の子よ、仮にこの世に来た変化の人といっても、これほど大きくなるまで養った儂にそろそろ恩返しを……」
と言いました。
言ってることが唐突かつ、最低です。
これを聞いたかぐや姫は
「何かチョームカツクんですけど。でも、まぁ育ててくれたのは事実だし、何か聞いてやってもいいかな〜。確かに、私人間とちょっと違うけど、じじぃ達のこと親同然だし。」
何かますます口が悪くなっています。
足投げ出しちゃったりなんかして態度も悪いです。
それでもまだまだ容姿に騙されているお爺さんは、態度と口の悪さなんて何のその。
汚い言葉も美化されて聞こえてきます。
「恩返しを…じゃなくて、儂のことを親だと思ってくれてるなんて嬉しいのう。儂はもう70歳を越えた。とっくに定年してる歳だし、竹取るのもきついし。もう疲れ果てていつ死ぬか分からないくらいですじゃ。だから、早くどっかに嫁いで玉の輿になって、もっと安定して安心できる生活をさせてくれんかのう?国からの年金もあてになんないし。」
かぐや姫は、その話を聞いてすごく不機嫌そうです。
まあ無理も無いでしょう。
半分以上はお爺さんの私欲ですし、そのために嫁がされるなんてたまったもんじゃありません。
かぐや姫じゃなくとも怒りたくなります。
「はぁ?それじじぃの私欲じゃん!私行かないし、何でそんなのに付き合わなきゃいけないの?マジムカツク!!」
もっともな意見です。
しかし、お爺さんも一歩も引きません
「かぐや姫よ、お前は変化の身だけど一応女だ。儂が生きてる間はこうやって居られるかもしれないが、五人のあの貴公子たちの事も考えて誰か一人と結婚しておあげなさい。そして儂に安定した生活を送らせてくれ、頼むから。」
「一応女って何さ!一応って!?でもさ、じじぃの言ってるあいつらって結構金持ちなんでしょ?それで金にもの言わせて浮気とかしたら困るじゃん?いくらさ、貴公子だとか言っても、その辺訳わかんないしさ、どの程度の志でストーカー行為してるんだか分からないじゃん。だからイヤ!」
「随分なことを言うものだ。こうして夜を明かしてまで来てくれてるというのに。それだけだって皆、志が深いことは一目瞭然じゃろ!この親不孝者め!!」
お爺さんはいつも一言余計です。
そしてかぐや姫もお爺さんの口煩さと気合に押されて遂に折れました。
ただし条件付で。
「じゃあいいですよ、嫁いでやりますよ。ああ、嫁いでやりますとも。でもー、ただ嫁ぐだけじゃつまんないしー、相手も決められないからーちょっとしたテストしようと思うんだけどー。私が見たいと思うものを持ってきてくれたら、まぁ嫁いでやってもいいかなーって。」
お爺さんはこれを聞いて、暫く考えましたが
―まぁ、どの貴公子も金持ちだし金で買えないものは無いだろう。儂もやつらの財力の確認をするか―
と、さらに悪巧みを重ね、かぐや姫に「よろしい」と言いました。