おやつは300円分!(完)
その後、お爺さんとお婆さんは、血の涙を流して悲しみました。
大事な娘が去ってしまい、おまけに財産は減る一方、これじゃ泣きたくもなりますが、泣いてどうにかなる事じゃないのですから、仕方ありません。
かぐや姫の書き残した手紙を、お付の者が何度も読み聞かせるのですが、
「もう命など惜しくは無い。富も名誉も今となっては何の意味も無い。あの親不孝者の――いや、大切なかぐや姫よ…そなたが居ないのに、惜しむものなどあるだろうか。もう、何も意味がないのじゃ。」
そう言って二人とも起き上がろうともせず、薬も飲まずに病の床にふせっています。
あんなに威勢が良くて、金のことを四六時中考えていたお爺さんとお婆さんも、こうなってしまうと可哀想です。
この世にはお金には換えられないものがあるという大切な教訓になる光景ですね。
中将鷹野のおおくには、「俺達意味無いじゃん」とかぼやきながら、兵を引き連れ帰って行きました。
その後、帝に出来事を事細かに報告しました。
「だーかーらー、引き止めようと皆精一杯頑張ったんですが、この世のものではない人たちに全く攻撃が通用しなくて、かぐや姫は強制連行されちゃったんです。」
「う、嘘でおじゃ!麿は認めないでおじゃよ!」
確かに、中将は「攻撃したけど通用しなかった」と言い張っていますが、実際は手も足も出ず、その場に倒れ込んでいただけでした。
「ああ、そうそう。かぐや姫から手紙と怪しい薬を預かりました。何でも不老不死の薬だそうで。」
「寄越すおじゃ!」
乱暴に中将から品物を受け取り、早速帝は手紙を読み始めました。
「こ、これは……」
帝はその手紙に大きく心を動かされ、その日から何も食べず、音楽を奏でたりという事もやめ、お爺さんとお婆さんのように無気力になってしまいました。
そりゃそうです。もう二度と会えなくなってから、両思いだと分かるなんてそんな悲しいことがあるでしょうか。
何日か経ったある日、帝は大臣などの位の高い家臣たちを呼び集めました。
「ここから一番近くて日本で一番高い山はあるでおじゃか?」
「一番近くて一番日本で高い山なんて無理なことおっしゃらないで下さいよ。一番近くでないところで良いのなら駿河にある山が、何でも日本一高いらしいですよ?」
帝はこれを聞いて「そうか、天に一番近いのでおじゃな。」と一人納得したように頷き、歌を詠みました。
『逢ふことも涙に浮かぶわが身には死なぬ薬もなににかはせむ(訳*もう二度とあの痛みを味わえないと思うと涙がとまらないでおじゃ。麿の事を叱ってくれるそなたが欲しかったのに、不死の薬なんて麿にとっては価値の無い物でおじゃ。)』
その歌と、かぐや姫がくれた手紙、不死の薬を使者の調のいわさかと言う人に渡しました。
「これを持って駿河の山へ行くおじゃ。ちょ、ちょっと待つおじゃ。人の話は最後まで聞いてから行くおじゃよ!そう、其処にもう一度座るおじゃ。おほん、これをその山の頂上で燃やしてきてほしいおじゃよ。」
「えー、面倒ですよ。なんでそんな物の為に頂上まで?麓じゃ駄目なんですか?」
「麓じゃ意味がないおじゃ!それと大切なものなんだから、そんな物とか言うでないおじゃ!」
調のいわさかは、「そんな大切なものなら燃やすなよ。てか、自分で行きやがれ。」と内心文句を言いつつ、それらを持って、共を引き連れ、駿河の山に向かいました。
おやつは300円分……持って行ったか定かではありませんが、調のいわさかは帝に言われたとおり、その山の頂上で不死の薬とかぐや姫からの手紙を燃やしました。
そんなわけで「富士の山」は「不死の山」から来ているそうです。
その煙は未だに雲の中に立ち昇っているそうですよ。
めでたし、めでたし……なのか?
いかがでしたでしょうか?竹取物語をギャグ小説にして見ましたけれど、原作のイメージを大きく傷つけてしまったことにはお詫び申し上げます。
では、感想待ってます。