ヒロインよ、永遠に!(七
またもや、さらさらと手紙を書き始めたかぐや姫を見て、天人は
「遅い!」
と言いました。内心「いつまで待たせるんだよ、待ってる方の身にもなれよ。」なんて思っているようですが、元々神経の図太いかぐや姫はそんなことお構いなしです。
「五月蝿い人たちー、マジウザイー…っ、うっとおしいー。本当に人の気持ちの分からない人たちでございますわ、ほほほほほ。」
と、言いながら手紙を書き続けます。
地が出ているのを必死に誤魔化しているようですが、天人たちは地が出ていることすら気付いていません。やっぱり鈍い人たちの集まりなんでしょうか?
さて、かぐや姫は先程お爺さんに手紙を書いていました。ってことは一体今書いている手紙は誰宛なんでしょうか?
その答えは意外や意外、文通相手のあの人でした。
『こんなに沢山の兵動かして、私を引き止めようなんてー、お前にしてはいいことやるじゃん。まぁ、それも甲斐なく私は強制連行されちゃうんだけどねー。うん、笑えないよね…あはははは。私が今まで帝に仕えなかったのはこういう面倒な身だからだったんだよねー。じゃあね、確かにアンタは変態だったけど、私、嫌いじゃ無かったよ。私のこと悪く思わないでね?』
「兵を動かした」「変態」この言葉から連想できるのは、そう帝様です。
らしくもなく、乙女チックな文章を書いて、更に歌を添えました。
『今はとて天の羽衣着るをりぞ君をあはれと思ひいでける(訳*私馬鹿だね、アンタ以上に。天の羽衣を着て記憶が無くなるこの瞬間に、アンタの事好きだって気付くなんて。)』
どうやら帝の歪んだ恋は叶っていたようです。
しかし、かぐや姫の記憶はもうすぐになくなってしまいます。もっと早くに結ばれてしまっていたらもっと苦しい思いをしていたかもしれません。
でも‘苦しい’思いとか、痛そうなもの、帝って好きそうですよね?
何はともあれ、かぐや姫は手紙と歌に不死の薬を添えて、はい!お値段1万5千円!送料はジャパ(以下略)……ではなくて、頭の中将がたまたま近くに居たので、その人に帝に渡すように託しました。
あれだけ「不死の薬渡しちゃ駄目ー!」なんて態度に示していた天人があっさりオーケーしたのが不思議ではありますが、その辺は触れてはいけないようです。
頭の中将が品を受け取ったのを確認すると、天人たちはかぐや姫にすぐ天の羽衣を着せてしまいました。
さっきまで、お爺さんと離れたくないと思っていた感情も完璧に消え失せ、かぐや姫は他の天人と同様、心がなくなってしまいました。
そして、さっさと空飛ぶ円盤に乗り込み、月へと帰ってしまいました。
あっさりですねぇ。