ヒロインよ、永遠に!(四)
帝の派遣した兵や、自分のお付の者達が慌しく警護に当たり、お爺さんが「これは頼もしい」なんて頷いている様子を見て、かぐや姫は深く溜息をつきました。
「私を、こんな所に閉じ込めてー戦う準備したってー、マジ無意味だしー。矢とか絶対当たんないし。錠なんてあの人たちの前だと何でもないしー。今みたいに勇敢な気持ち持つ人も居ないと思うんだけどなー。」
自分の事で周りが一生懸命なっているというのに、かぐや姫の言い方はまるで他人事のようです。
これを聞いて、お爺さんが言う事には
「儂の金の生る木を…じゃなくて、儂の大事な娘を連れ去ろうなんていう不届き者は、この儂の長い爪で天から引きずり下ろし――いや、どうせなら目玉を抉り、髪を引っ張り引きずり下ろし、そいつの尻を引っ張り出して、皆の前に晒して恥を掻かせてやる!」
と、大層ご立腹な様子です。
でも、よく考えると言っていることが可笑しいです。ご立腹の様子は最初の言葉で十分に伝わるので、そこで止めておけばいいものを、後半は実に子供っぽいことを言っています。
それを聞いたかぐや姫は、顔を真っ赤にして
「は、恥ずかしい事言うなよ!外に丸聞こえだっつーの。マジみっともないし。まぁ、でもそれだけ私のこと大切にしてくれたのに、どうしても別れるなんてぶっちゃけ私も辛いんだよねー。」
「ならぬ、行かせぬぞ!儂の命に変えてもお前を守ってやる!」
「気持ちは嬉しいんだけどさー。いやぁ、実はさ、じじぃたちに何も恩返し出来て無いじゃん?そんな状態で月に帰るの私も心苦しいしー、だから縁側に出てもう一年だけでもこっちに居られるように、お星様というお月様にお願いしたんだけど、あいつら物分り悪くて頭カッチンカッチンだしー。月の都の人って、見かけ綺麗で老いる事もないんだよねー。羨ましいって思うでしょ?とんでもない、あいつら感情無いわけ。そんな奴らのところに私も帰りたくないしねー。老後の面倒みてやりたいとこなんだけどさ。」
まぁ、見かけは綺麗で中が何とかだっていうのはかぐや姫を見ていれば想像がつきます。
けれど、そんな中でもこちらに居る事で感情が芽生えたみたいです。悪びれていますが、本当は優しいのかもしれません。
これを聞いてお爺さんは、
「寂しい事を言うんじゃない。どんな人が来ようと儂が守るんじゃ!」
と、天の使者を忌々しいと思っているようです。