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どうか私の嫁になって下さい!(一)

世間の男性達は、身分など関係なく、皆かぐや姫を手に入れたい、妻にしたいと思うようになりました。

中には噂に聞いただけなのに恋い慕い、思い悩むロマンチストな妄想壁さんも居るくらいです。

皆さん、かぐや姫の我儘ぶりを知らないので完璧に騙されています。

もう男どもは我慢しきれなくなりましてね、夜な夜な出掛けてはお爺さん宅に居るかぐや姫を一目見ようと、闇夜に穴を抉り、覗き込むほど夢中になっていきました。

この頃から女に求婚することを「よばひ」と言ったとか何とか役に立つ様な立たない様な無駄知識ですけども。


家の周りをくるくる回って、人の気配が無いようなところも覗いて見たりもしますが、やっぱり何の成果も出せず。

はたまた、家の人たちに言付けようとしても


「またですか。いい加減にしないと警察呼びますよ?いいですか、貴方のやってることはストーカー行為と大差ないんですから!てかそのものです!」


と、言われて相手にされません。

それでも尚、家から離れようとしない貴公子たちは夜を明かしながら過ごすものも多く、その意気込みは引退間際に犯人宅を張り込む刑事のようでした。

この男達の中でも志が大したこと無い人たちは


「必要も無い出歩きは無駄だ無駄だ。随分お高くとまってらっしゃるけど、きっと我儘姫に違いない。」


と言って、二度と来なくなりました。

ある意味大正解です。



しつこい貴公子たちの中で、特にしつこく言い寄ったのは色好みと評判の五人。

どうしても恋心が止まらずに夜中問わずやってきました。

このしつこいストーカーたちの名は、石作の皇子、庫持の皇子、右大臣安部のみむらじ、大伴御行の大納言、中納言石上のまろたり、と何とも憶えづらい名の方たちでした。

しかし、皆、身分の高い者たちだったのです。

身分の高い割には暇人のようですが。

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