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ヒロインよ、永遠に!(二)

 八月十五日近く、いつものようにかぐや姫は縁側に座り月を眺めていました。けれどその様子は、いつにも増して酷いものでした。

何が酷いかって?もう人目も気にせず大声を上げ泣いている事です。

声は近所迷惑になるくらいの音量ですし、涙でメイクがとれかかっています。涙と一緒に付け睫毛が流れる光景なんて滅多に見られないでしょう。


こんな姿を見て、やはりただ事ではないなと、お爺さんとお婆さんはもう一度泣いている理由を尋ねて見ました。

すると、かぐや姫は此方が泣きたくなるような答えを返してきたのです。


「前にもー、言おうと思ってたんだけどー言っちゃうとじじぃ達が動揺するかなーと思って言えなかったんだよねー。てか、じじぃ達のせいで言うタイミング逃してたって言うかー。でもーこのまま言わずには過ごせないっぽいしー。」


「じゃから、泣いている理由は何なのじゃ?」


「ぶっちゃけー、私って人間じゃなくて月の都の人なわけー。色々あってー此処に来たんだけどーそろそろ帰んなきゃなのー。迎えも来るっぽいしー。それが今月の十五日なわけ。時間無いじゃん?あと何日か後じゃん?それまでの間ーじじぃ達の暗い顔見てるのも嫌だったからさー、春頃から悩んでたわけー。それって避けられない事だし〜。」


どうやらかぐや姫はかぐや姫なりに、お爺さんとお婆さんに気を遣って本当のことが言い出せなかったようです。

いつもギャル語を使い、態度はでかく、2人のことを下僕のように扱っていたかぐや姫ですが、実はお爺さんとお婆さんのことを親のように思っていたらしく自分も辛いようです。

性格がひん曲がっている様に見えますが、根は良い子なのです。

 お爺さんはというと、この言葉を聞いて大層衝撃を受けました。


「何ィィィ!?竹の中から貴女を見つけ、育て始めてから何年も経ちましたが、貴女に会ったその日から大判小判がざっくざく。そんな金の生る木……いや、幸運の女神のような貴女を迎えに来るなんて一体何処のどいつじゃ!けしからん、誠にけしからん!儂の安定した老後の生活を奪いにくるとはぶぇっ!!」


かぐや姫との別れより、お金と別れなければいけないことを悲しんでいるようなお爺さんの鳩尾に、かぐや姫の鋭い肘鉄がクリティカルヒットしました。


「じじぃ、金のことしか頭に無いのかよ!もーやだよー、私だってじじぃ達の事心配して中々言い出せなかったのに。えーんえーん(棒読み)」


2人とも大声で泣くわ叫ぶわ、どうしようもない状況です。

え?かぐや姫の声が棒読み?いやいや、そんなことあるわけないじゃないですか。本当ダヨ?


「私さー、月の都に本当の両親が居るのー。僅かな間だからとか言われてこっちに来たけど、何か騙してたっぽくて、こんなに時間が経っちゃったわけ。そんな酷い本当の両親忘れてー、じじぃとばばぁのこと本当の親みたいに思ってた。月に帰れるとか言っても悲しいだけで全然嬉しくないんだよねー。」


月の都の人といえど、かぐや姫は、お爺さんと、いつの間にかいたお婆さんと抱き合い、酷く泣いてしまいました。

この屋敷に仕えている人たちも、かぐや姫が居なくなると思うと寂しくなり、湯水も喉を通らず、お爺さんとお婆さんと同じくらい悲しい気持ちになりました。


「なんかさぁ、かぐや姫が月の都へ帰るらしいよ?(ボリボリボリボリ)」


「マジで!?あいつ宇宙人だったの?(パリパリパリ)」


「あいつ呼ばわりなんて無礼ですよ?(ゴクゴクゴク)」


「あー、ポテチうめぇ。オレンジジュース最高!」


……あれ?

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