この人ならいけるか!?帝さま!!(五)
「ついに、ついに夢にまで見た官職が!!」
お爺さんは官職を与えてもらったことに対し、諸手を挙げて喜びました。どうせお金のことを考えているに違いありません。
お爺さんは此処で帝に自分の財力を見せ付ける為に、盛大な宴会を開きました。お爺さん一家に仕えてる人などを呼び集め、皆にご馳走を振舞ったそうです。
まぁ、この財力というのはかぐや姫のおかげで出来たようなものです。この時点でかぐや姫は結構な親孝行をしてると思います。態度は些か悪い気もいたしますが、お爺さんとお婆さんが大好きなお金を与えているのですから問題は無いでしょう。
しかし、人間というのは強欲な生き物。お金が手に入ると今までの生活を忘れ、更なる富を築きたがるのです。お爺さんとお婆さんは、その典型的な例でした。
そんな宴会もお開きになる時間が来ました。
帝はかぐや姫をその場に残して帰るのを心残りに思い、まるで魂をその場に残したようにお帰りになるのでした。
そして御輿に乗った後に、かぐや姫にこんな歌を贈りました。
『帰るさの行幸もの憂く思ほえてそむきてとまるかぐや姫ゆゑ(訳*帰るのも足を止めて振り返ってしまうでおじゃよ。グーで殴られたあの感触、嗚呼、忘れられないでおじゃ。)』
それに対し、かぐや姫も返歌しました。
『葎はふ下にも年は経ぬる身のなにかは玉のうてなをも見む(訳*こんな蔓草が絡んでるような家に来なくても結構です!てか来んな!)』
今回は訳が大分間違っていますね。正しい訳は自分で調べましょう。
ともかく、帝はこの歌を見て、余計に帰りたくなくなってしまったのです。此処に居たいとも思いましたが、かぐや姫宅の敷地からは出てしまったし、こんな所で一晩過ごすのはさすがにキツイので仕方なくお帰りになりました。
帝は帰ってから、宮中に居る女官達の顔を良く見て回りました。
「あの者に比べると大したやつが居ないでおじゃ。」
「んまぁー、失礼しちゃうわ!!」
つまり、かぐや姫と女官達の顔を比較して回ったわけです。
普段懸命にお仕えしている女官達から見れば、帝のやっていることは最低ですし、屈辱的でもあります。大した奴が居ないなんて言われれば、女性なら誰だって怒ります。其処のところの空気が読めないのが帝様。思ったことがすぐに口に出てしまうようです。
何はともあれ、帝はかぐや姫がどれだけ素晴らしい女性かを再認識し、物思いにふけるようになっていったのです。
まぁ、ポテチの油を絨毯で落とすような奴、普通なら願い下げですけど、かぐや姫のそんなはしたなく、だらしない部分を知らない帝はかぐや姫が相当好きになってしまったようです。
―嗚呼、あの叩かれた時の感触、思い出しただけでも良いでおじゃるなぁ。―
……なんか違いますね。
叩いてくれる人なら誰でも良かったような気がします。それが偶々、かぐや姫というこの世のものではないような美しさを持った女性だったわけです。実際、この世のものではなく竹の(以下略)。
それから帝は夜を一人で過ごすようになりました。
よっぽどの事情がない限り、后たちの部屋にも行かなくなりました。「后が居たんかいっ!」と、ツッコミを入れたくなりますが、物思いにふける姿を見ると何だか可哀想になってきます。
おや?何か書いてますね。
『かぐや姫へ。元気にしているでおじゃか?麿はとっても元気でおじゃ。』
何ともまあ、ありきたりな書き出しの手紙を書いています。宛先はかぐや姫へです。しかも、喋った時の語尾がそのまま文面に出ています。教育係は何を教えてたんでしょう?
これを受け取ったかぐや姫はと言うと、一応返事は書いていたようです。
けれど、その内容というのは「うざい」とか「キモい」とか帝を罵るようなとっても失礼且つ不愉快な言葉ばかりでした。
しかし、寛大な(?)帝様はこんな言葉を喜々とした表情で受け入れ、四季折々の和歌など添えて性懲りもなく、かぐや姫に手紙を出すのでした。
いや〜、物好きも居るもんなんですねぇ。