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この人ならいけるか!?帝さま!!(四)

 「まぁ、というわけで『宮仕えしたら死ぬ』なんて言うものですからどうする事もできませんでした。申訳ございません。」


かぐや姫から逃げるように帝のところへ参上したお爺さんは、先程の出来事を帝に話しながら、あのドスの効いたかぐや姫の声を思い出し、たいそう顔色が悪くなっておりました。


「実はですな……あれは実の私の子ではございませんでしてな。竹の子なんですじゃ。いえ、土から出てきたのではなく竹を切ったらあれが出てきましてな。ですからきっと気性も普通の人ではないんでしょうな……恐ろしや」


「成る程、でおじゃ。ところでそちの家は山の麓に近いそうでおじゃるな。狩りに行くフリをしてかぐや姫を見るというのはどうでおじゃかな?」


お爺さんの話に適当に相槌を打ち、狩りに行くフリをしてまでもかぐや姫に会いたいなんて余程かぐや姫のことが見たくてしょうがないんでしょう。それと「おじゃ」の使い方が何か変です。無理矢理の気がします。


「まぁ、ぼーっとしている所へ不意を突いて行けば見れるかもしれませんよ?」









 なんて事をお爺さんが言ったものですから、後日帝は突然


「麿は狩りに行きたいおじゃ!てか今すぐ行くおじゃ!」


てな感じで我儘を言い出し、そう言ったにも関わらず狩りそっちのけで、かぐや姫の家にずかずかと入っていきました。今までの貴公子たちの中にはストーカー行為をやってから不法侵入なんて人も居ましたが、何の前触れもなくずかずかと家に入る人は帝が初めてです。この傲慢さといい、家来を振り回す我儘さといい、かぐや姫といい勝負かもしれません。

 一歩家に入ると、家の中は光で満ちていました。この光とはかぐや姫が放っている美のオーラです。え?家の中の至る所に照明が?そんな馬鹿な。

更に奥へ進むと、素晴らしく美しい姿で座っている人が見えました。手には何か持っています。


―この人がかぐや姫で間違いないでおじゃな?―


と、その時かぐや姫と目が合ってしまいました。


「何かキモイのが家の中に居るしー!じじぃとか誰か居ないのー!?生理的にこういう顔の人嫌なんですけどー!!」


目が合うなりかぐや姫は言いたい事を言いたい放題叫び、違う部屋へと隠れようとしました。

しかし帝も此処まで来たならもっと良くかぐや姫を見たい、あわよくば連れて帰りたいと思い、その袖を掴みました。

 

「ま、待つでおじゃ!」


「ひぃー!!触られたー!マジキモいー、おじゃとかキモイしー!てか私のおやつのゼリー落としちゃったじゃないよー。ウザさMAXみたいなー!!」


かぐや姫は本当に帝のことが嫌いなようです。それと手に持っていたのは、おやつのゼリーだったみたいです。色気より食気ですね。

一方帝はと言うと、かぐや姫の美しさを大層気に入ってしまいました。美しさが気に入ったのか、或いは性格が似ているので気に入ったのかは定かではありませんが、とにかく気に入ってしまったのです。

その袖を掴んで決して放そうとはしませんでした。


「放さないでおじゃよ!(ニヤニヤ)」


その時の帝の顔といったら大変はしたなく、とてもゴールデンタイムに放送できるような顔ではありませんでした。まるで時代劇に出てくる悪代官のような顔で、仮に放送するなら昼メロの時間帯か、深夜帯です。どんなに酷い顔なのかはご想像にお任せします。

そんな酷い顔の帝にかぐや姫が耐えられるはずもなく、喚き散らしています。


「放せ、放せっつーの!どこの誰だか知らないけれど、私とアンタじゃ生まれた所が違うの!てか根本的に何もかも違うし!こんな薄汚いボロボロの雑巾みたいな奴と一緒の出身とか思いたくもないし!最低!マジ最低!放せ!!」


ボロボロの雑巾みたいな奴――よっぽど酷いのでしょうね。

普通帝にこんな事を言えば死の宣告は免れませんが、帝は莫迦……ではなくて、心が広いお方なので敢えて聞き流しました。


「嗚呼、良いでおじゃるよ。もっと麿を罵っても良いでOJARUYO☆」


――て、こんな言葉は真に受けてるし!そして喜んでいます。帝様はそういう趣味のお方なんでしょうか?深入りするともっと嫌なものを見そうなのでこの辺にしておきましょう。

 罵られながら、そして足蹴にされながらも帝はこの外見だけは(そう、外見だけは)美しい姫君を連れて帰ろうと、待機していた家来に命じ、御輿を持ってこさせましたが、その途端かぐや姫はするりと帝の手から逃れ、影だけのものになってしまいました。

此処でようやく帝は気付きます。


「誰かが言っていたおじゃ、かぐや姫は土から生えた竹の子だと。成る程、普通の人ではないのでおじゃな。」


誰かって、それを話した相手はお爺さんです。しかも色々と間違って覚えています。話を中途半端に聞いていると思い込みで恥を掻く良い例ですが、天下の帝様には誰も逆らいませんし突っ込みません。そう、帝と対等に張り合えるのはこの人だけなのです。


「誰が竹の子だっつーの!!」


ほらね。かぐや姫は元の姿に戻り、帝をグーで思いっきり殴りました。




後日、帝はお爺さんに官職を与えたそうです。

別に与えなくても良いのではないかと思うのですが、帝は大層機嫌が良く、かぐや姫に殴られて出来た痣を嬉しそうに撫でていたそうです。

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