この人ならいけるか!?帝さま!!(二)
結局、房子さんは何の成果も上げられぬまま帰路につく事になりました。その顔は蒼白で、上の空で「プライドが、地位が…」とかぼやいています。
そして、帝にこの事をそのままお話しました。賢明な判断です、房子さんは何も悪くないのですから。帝もそれが分かったのか頷くと、
「そうか…それが多くの人を殺してのけた心というものおじゃか。房子よ、ご苦労でおじゃ。」
と言い、この話はそれっきりになりました。
さすが帝様、天に等しいと言われた帝様が襤褸屋の成り上がりの姫様にこだわることもないと言うことなのでしょうか?まことに賢い判断でございます。
――が、帝もやはり人の子でした。
帝と言えばその命令には誰も逆らわず、
「○○して参れ。」
と何か命令すれば、皆は
「ははぁ〜。」
と従いますよね?ですからこの帝にとって自分の命令に逆らう者など初めてなわけでございまして、「絶対負けねぇ」と闘争心に火が点いてしまったのでございます。
帝は作戦を練りました。そして「かぐや姫を陥落するにはまず周りから!」という結論に至り、早速お爺さんを呼び出しました。
「さてこの間、麿はそちの家に居るかぐや姫なる者の顔が見たいと使者を派遣したが、その甲斐もなく終わってしまったおじゃ。普通ならあるまじき行為、このままにはしておけないでおじゃる!」
語尾を気にせず、お爺さんがかしこまって返事という名の言い訳を申し上げることには
「この愚か者の親不孝者の娘は宮仕えなどしそうにありません。我々も手を焼いているのでございます。そう申していたと今から言付けて参りますおじゃ。」
あ、語尾移った。
これを聞いて、帝は首を傾げます。「何故、麿の語尾を…」ではなくて、
「そち達の娘であろうに、何故思い通りにならないのじゃ?」
お爺さんは口を噤みました。
帝はお爺さんがかぐや姫を庇っていると思ったのか、にやにやしながらある条件を持ち出しました。
「もしかぐや姫とやらを献上させることが出来たのならば、麿の力でそなたに爵位を与えても良いおじゃよ?」
爵位を与えると言うことは、貴族の仲間入りだということです。いくら大富豪になったお爺さんでも、この先あと何年この生活がせくか続くか保障されているわけではありません。爵位を貰えるとなれば、竹取生活ともおさらば。今以上の贅沢三昧が出来ることでしょう。こんな美味しい話にお爺さんが食いつかない筈がありません。今まで貴公子たちのように一時限りの贅沢品では到底得られないような地位なのですから。
お爺さんは諸手を上げて大喜びで家に帰って行きました。