すくすく育つかぐや姫
さて、この女の子を見つけてからというものお爺さんは竹やぶで望みどおり黄金の入っている竹を見つけるようになりました。
お爺さんは段々と裕福になり、お婆さんに「誰のおかげで飯が食えとるんじゃい。うどんにしろ、うどんに」と、うどんを強制的に作らせるようになれる立場になり、見事甲斐性無しから抜け出すことに成功しました。
女の子はというと、養育するうちに、すくすくという可愛らしい言葉は似合わないほど凄まじい早さで成長し、3ヶ月で人並みの背丈になりました。さすが竹から生まれた竹の子です。
お爺さんとお婆さんは、このあまりに早すぎる成長をあまり気にも留めず、普通の子と同じ様に、髪結いの儀式や裳を着せたりして、帳台の中から一歩も出さずに、ヒッキーな感じに育て上げました。
おかげで、生まれたときから少し我儘でしたが、ますます我儘になっていきました。
「あのさー、おやつにプリン食べたいんだけど。」
「これこれ、おやつはここに大福があるじゃろう。」
「プリン、絶対にプリン!!」
「仕方ない、買ってきてやろう。」
「100円で3つ入りとか嫌だからね!」
と、こんな具合に。
それでも可愛い女の子のためですから、甘やかし続けました。
俗に言う猫可愛がりです。
しかし、こんな性格ブスになりつつある彼女ですが、外見の美しさといったら比類がないくらいで、家の中も彼女がいるだけで暗いところがなく、光に満ちています。
美しいのは外見だけですが、それでもお爺さんもお婆さんも、苦しいことや辛いことがあっても、この子をみると慰められるのでした。
たまに、この子の性格にイラッとくることもありましたが、外見によって誤魔化されていました。
こうして、この間にも黄金の入った竹を取り続け、お爺さん達は財力の大きい、いわば大富豪になっていきました。
女の子はさらに成長し、背丈が大きくなったので、お爺さんとお婆さんはここでようやく女の子に名前を付けることにしました。いくらなんでも遅すぎです。
三室戸斎部の秋田というどっかのおっさんを呼びつけて名前を付けてくれるように頼みました。
すると、秋田は
「竹から生まれたんやろ?竹子とかじゃだめなん?あ、駄目ですか。ほんなら、“なよたけのかぐや姫”っていうのはどうやろ?うん、うん。あ、OKですか?じゃあ料金の方なんですけども……」
と、いたって簡単に名前をつけました。
『なよたけ』とは『弱竹』と書いて、若い竹を意味する言葉です。
どうしても秋田は「竹」にこだわっていたようですが、以後ずっとかぐや姫と呼ばれるので竹という字をつけても目立ちませんでした。虚しいですね。
まぁ無事に名前も付き、おめでたいということで3日間酒盛りをして楽しんだそうです。
詩歌や舞などを催し、男という男は誰構わず呼びつけ、まさに逆ハーレム状態のかぐや姫。
かぐや姫の美しさに男達は虜になって、なんでも言うことを聞くのでかぐや姫は益々付け上がります。
将来がかなり不安です。
「ところで婆さんや。そんなに厚化粧してどうしたんじゃ?」
「だって、女の人は二人しか居ないのにあの子ばかり目立ってるから私も若い頃にもどってみようと思って。うふふっ♪(ウィンク)」
「おぇぇぇぇぇ!!」