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俺様的な大伴御行の大納言(四)

 はてさて、大伴御行の大納言自身が龍の頸の玉を取りに出掛け、失敗して帰ってきたということを風の噂に聞いた家来達は、あんな君主でも少しは心配になってなのか、あるいはどんな痛い目にあって戻ってきたのか見たいが為なのか、君主のところに戻る事にしました。

戻ってきた家来達が、言う事には


「龍の頸の玉を取る事が出来ませんでしたので、今まで戻ってきませんでした。大伴御行の大納言様も『玉を取る事は不可能だ』とお分かりになったようなので、もうお咎めはないだろうと屋敷に戻ってまいりました。すいませんでした(棒読み)」


正当なことを言いつつ、身の保身もしています。そして加えて棒読みで「私は悪くない」というのをさり気無く主張しています。

この家来達は結構やり手のようです。まぁ、こんな暴君に仕えているのだから自分達がしっかりしていないといけないでしょうし、当たり前の事とも言えましょう。


それを聞いて大伴御行の大納言は体を起こして、


「おお、お前達よ。よく持ち帰らないでいてくれた。あの頸の玉を取ったらどのような災いが起こるか分からぬよ。あの頸の玉を取ろうと考えただけでこのような目に合ったというのに…おぅ、おそろしや。こうなったのもあのかぐや姫とか言う悪党のせいだ。顔も見せないくせに人にあれやこれを取って来いと言い、殺そうとしてるのだ。お前達も気をつけろ、二度とあの家の前を通るでない。俺様も気をつけよう」


そうです、良く気付きました。すべては我儘姫のかぐや姫が諸悪の根源なのです。

未だに自分のことを俺様と言うのは直っていませんが、かぐや姫が悪いという事を良く理解したのは登場人物の中でもこの大伴御行の大納言が一番でしょう。

その点は誉めてもいいのかもしれません。

大伴御行の大納言は十分に反省し、戻ってきた家来達に褒美を渡しました。


 こんな話を聞いて、別れてしまった奥さんは大笑いです。

糸を葺かせて造った屋根も、鳥に巣の材料として持っていかれてしまいました。

大伴御行の大納言は殆んどのものを失ってしまったのでした。



世間の人たちが言うには


「大伴御行の大納言は龍の頸の玉を取りに行って戻ってきたそうじゃないか」


「いやいや、身につけていたのは二つの眼に李のような玉だよ」


「ああ食べ難いことを」


と言いました。この「食べ難い」が「耐え難し」の語源で、常識外れで出来ない事を指すようになったんだとか。

詳しい事は分かりませんがね。



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