俺様的な大伴御行の大納言(二)
さてさて、家来達が旅に行ってる間に大伴御行の大納言は
―かぐや姫を迎え入れるんじゃ普通の家では見苦しいかな?―
なんて、迎えることが決まったわけでもないのにしょーもない心配をして、屋敷を劇的に改造することにしました。
改造というより、建て直しです。
立派な建物を作り、漆を塗り、蒔絵で壁を作り、屋根を装飾し、とても言葉では言い表せないような素敵な家にしました。
こんな家に住まわしてくれるとなれば、どんな女性でもイチコロで結婚を承諾するでしょう。
ところで、大伴御行の大納言には妻…いえ妻達が居ました。
かぐや姫を迎え入れるとなれば、妻達は目の上のたんこぶ、非常に邪魔です。
大伴御行の大納言は妻達に高額なお金を渡し、家から追い出してしまいました。
あんまりです。
ですから、大伴御行の大納言は立て直した豪華な屋敷で一人吉報を待っていたのでした。
――ところが
何日経っても、年が明けても、家来達からは何の音沙汰も有りませんでした。当然といえば当然です。
待ち遠しくて、居ても経ってもいられなくなりまして大伴御行の大納言は自分の足で難波に行くことにしました。
身分がばれないように、変装して其処に行くと、其処に船人が居ました。
「もしそこの船人よ、大伴御行の大納言の家来が龍の頸の玉を取ったという噂などを聞いていないかね?」
と、たずねると
「変なことを言うんですね。そんなこと出来るわけありませんよ。そういった船の噂も聞いてませんし」
と言われてしまいました。
大伴御行の大納言は馬鹿にされたと思い
―俺様の身分も知らずになんという無礼なことを言うのか。私ならば龍を殺して玉を手に入れられるものを―
と考え、ついに臆病な家来など待たずに自分で行こうと決意しました。
船に乗って、あっちこっちに揺られ、進み、随分先に行ってから行き先を筑波の方に定めたそうです。
どうしてお金持ちは先に自分で行動しないんでしょうねぇ?