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俺様的な大伴御行の大納言(一)

 ‘龍の頸の玉’なんていう最もありそうにないものを頼まれた大伴御行の大納言は、自分の家に居る人たちを呼び集めて


「龍の頸に五色の光を放つ珠があるらしい。それを取って献上する者がいたら願いを叶えてやってもいいかなー」


と言いました。

どうやら大伴御行の大納言は自分で取りに行く気なんて更々ないようです。お金持ちは面倒臭がりなんでしょうか?

その話を聞いて家来達は


「何でも叶えてくれるというのは有難いチャンスでございます。しかし‘龍の頸の玉’ですって?本当にそんなものあるのでしょうか?というより仮にあったとしても相手は龍ですよ?とる前に命を落としたりでもしたら妻や子供達が悲しみます。無理です。もっと簡単なものにしてください。」


と言いました。

「そうだ、そうだー」という声が家来達の声が聞こえる中、大伴御行の大納言は着物の裾から一枚の紙を取り出し、家来達に見せ付けました。


「皆のもの、これが目に入らぬとは言わせぬぞ?」


「そ、それは!!」


一枚の紙、それは家来達との契約書だったのです。

大伴御行の大納言は、ニヤリと笑って契約内容を読み上げ始めました。


「この契約書にはなぁ『主君に仕えるという事は主君のために命を投げ出す覚悟を決めて仕える』とか『主君の命令は絶対』とかその他色々書いてあるぞ?まさか読まずに契約したわけではあるまいなぁ?」


「ま、待ってくれ!本当にそんなこと契約書に書いてあったか?」


皆が不満や疑問でざわざわと騒ぎだしたところに、これが証拠だと言わんばかりに一人一人が交わした契約書を配り始めました。


「ちょっと待ってくれ、そんな事は一言も書いてな――」


「ふん、お前達の目は節穴か?目を凝らしてよーく見るがいい。」


目を凝らしてみても何も見えないと言う不満が聞こえてきたところで大伴御行の大納言は虫眼鏡を配りました。

虫眼鏡で契約書の下のほうを見ると、なんと先程大伴御行の大納言が言ったことが書いてあるではありませんか!!


「さらに炙り出しで契約内容が浮かび上がるようになっているから消そうとしたって無駄だぞ。」


何と姑息な!

暴君です!悪徳商法じみてます!!


「どうだ、分かっただろう?お前達が俺様に仕えるという事は命を君主のために差し出しても構わんと言う事だ。この国にもない、かといって唐や天竺のものでもない。何故なら龍は動き回るものだからだ。遭遇確率もある。取るのは他のものが出された課題より簡単かと思われる。これでも行けないと申すか!行けないなどといったら打ち首だ!」


正真正銘の暴君です!

走れメロスに出てくる王様もさすがにこの人には敵わないでしょう。

家来達も仕方なしこの命令に従う事にしました。


「そういうことなら、仕方ありません。例えどんな困難が待ち受けていようとも命に代えて任務を遂行しましょう。」


「そうだよなー。この私に仕えていると世間の人は知っているし、もし俺様の命令に背いたとしたら世間からはどういう目で見られるのかちゃーんと分かっているよな?」


「め、滅相もございません!!」


「なら宜しい。あーはっはっはっ!」


すっかり機嫌が良くなった大伴御行の大納言は大口を開けて笑っています。

家来達は相当頭にきていたのですが、ここで打ち首になったり職を辞めさせられてしまえば家族が路頭に迷う事になるので逆らう事が出来ませんでした。


 家来達は任務遂行の為の旅支度をし、門の前に集合しました。

大伴御行の大納言は、いつもの派手な着物を着て門の前で皆を待ち、皆が揃ったところで食糧やお金などを渡しました。

そうです、旅支度もしないで皆に物資を配ると言う事は、しつこいようですが、この人は旅に行く気なんて更々ないのです。

それを裏付けるかのように


「俺様は家で潔斎でもしていよう。あ、お前ら龍の頸の玉取ってくるまで帰ってくんなよ?」


潔斎とは酒や肉食などを謹んで心身を清める事です。

旅に出る家来達に比べればなんと楽なことでしょう。

家来達は、嫌な顔をしつつも屋敷から出発しました。


とは言うものの、何処にいるか分からない龍を探しに行くのですから、当然どっちに行ってよいか分かるはずもありません。

そこで家来達は


「『龍の頸の玉を取るまで帰ってくるな』なんていうのだからこの際どっちの方向でも構わない。思い思いの方向に歩いてみよう」


と言って適当な方角に歩き始めました。


「なんと、無茶な事をいうものだ」


「考えなしだ。」


「こんなしょーもない命令をするなんて納得できない」


と、悪口を言いながら旅路を進んで行ったことはいうまでもありません。

何でこんな主君に仕えちゃったんでしょうね?

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