敢え無い!阿部のみむらじ!!(一)
右大臣安部のみむらじは、財力があって一族が繁栄していました。
有名な、言わずと知れたお金持ちのお坊ちゃんなのです。
そんな彼が、かぐや姫から頼まれた品は‘火鼠の皮衣’でした。
―そんなもの、日本にあるわけ無いよな…。もしあれば私の一族が手にしているはずだし…―
と思い、その年にやってきた唐の貿易船の持ち主である王慶という人に
『今、日本にとてつもない美人で美しい姫がいるんです。彼女を娶る為には‘火鼠の皮衣’とか言うのが必要なんです。是非それを買ってきて送ってください。』
とお手紙を書いて、信用の置ける小野の房守という人を手紙に添えて派遣しました。
房守は、
―げっ!?なんで俺が行かなきゃなの?自分で行けよ!―
と思いながらも中国に行き、王慶に手紙と金を渡しました。
王慶は手紙を広げて「美人」と「美しい」は同じ意味じゃないですか?ということはあえて指摘せずに、返事を書くことにしました。
『そんなものこの国でも噂だけで見たことは有りません。もしこの世にあるなら人がこの国にもってきてもよさそうなものです。非常に難しい商いです。ですが、ひょっとしたら天竺のお金持ち辺りが持ってるかもしれません。尋ねてきましょう。もし無いのなら頂いた金は返します。それと、貴方のよこした使いの者が毎日愚痴を言ってうるさいんですけど、どうしたらいいですか?』
その唐の国からついに船がやってきました。
「小野の房守が帰朝して、京へ上ってくる」ということを右大臣安部のみむらじは聞いて、急いで自慢のスポーツカーを走らせて迎えに行きました。
途中、スピード違反に対する検問をやっていて、追いかけられましたが、振り切ってきました。
まぁ、この駿馬ならぬスポーツカーのおかげで房守は筑波から7日間で帰ってこれたわけです。
「ただいま、帰りましたー。これ手紙と例のものですー。」
そう言って、それらを差し出す房守に
「お前、散々向こうで愚痴漏らしてたろ?」
と言って拳骨をくれて、それらを受け取りました。
そこに書いてあることには
『やっとのことで‘火鼠の皮衣’の皮衣を手に入れました。ひー疲れた。全く年寄りになんて重労働を…まぁ捜したのは家来で私は何にもしてないけど(^_^)容易に手に入れられるものじゃ有りませんでした(>_<)「昔々、天竺の聖職者がこれを身につけて唐にやってきて、それが唐の山寺にある」と聞いて、やっとのことで買い取ってのお届けです(゜ω^* )♪「対価の金が少ない」とか言われましたが、そこは私が立替ときました(´Д`)ですからあと五十両のお金を頂戴したいのです(´・ω・`)もしお金を下さらないのであれば皮衣を返してくださいm(_ _)m』
と、書いてあるのを見て右大臣安部のみむらじは
「何をお思いになるのか。あと少しのお金ではないか。嬉しい限りだ。」
と言って、唐の方角にお辞儀をしました。
「ところで小野の房守くん?」
「へい、なんでしょう?」
「向こうで王慶さんに顔文字教えてたでしょ?相当暇してたんだね。」
「いえ、そんなことはヾ(´゜Д゜`;)ゝ」
「いいよ、バレバレだから……」