3、エルフの救出
オレはあんな事を言ったが、剣法の練習以外では、[OSGを]愛用していた。なにせ便利だからな。オレは今ソロイと酒を飲んでいる。
「最近はどうだ、ソレイユ?」
「なんか最近、おもしろいことがないんだよ。酒を飲むとおもしろいというか、楽しい気分になれるけど」
「ははあ、やっぱり洞窟に冒険してきた事が原因か?」
「うん。今のところ、ファーザン・ドウアーに行きたいと思ってるんだけど、親父が反対して」
「じゃあ、このオレが連れてってやろうか?」
「本当か、ソロイ!? じゃあ、いつ頃が空いてる?」
「来週の日曜なら、お前も休みだし、オレもその日は空いているぞ。そういうことでいいな?」
「オッケーだ。じゃあ、来週の日曜に西門で待っているから、おくれるなよ?」
その時、オレは不吉な感覚に駆られた。ソロイもおやっ、とした顔で言葉にする。
「これじゃあ、オレらはまるで恋人どおしみたいだな」
「ぎゃああぁぁぁ!!」
一週間がたった。オレは西門でソロイをいらいらと待ち続ける。まったく、何時間待たせるんだよ。いいかげん待ちきれなくなった。
その時だ。
西門側、つまりファーザン・ドウアー方面から、だぶだぶのマントや衣服を着ていて、手には杖を持った男が歩いてくる。やがて西門に到着して、オレを無視しながら領地の中心部へ歩こうとする。ここで声をかけなかったら、オレじゃなくなるだろ。
「ここらじゃ見かけない顔ぶれだけど、どこから来たんだ?」
すると男はオレをにらみつけた。その男を観察する。すると、驚くべき事実が明らかになった。
その男には、片腕がなかったのだ。男は苦笑いしながら言う。
「お前の質問は結局なんだ?」
「へっ?」
「さっきお前はどこから来たのか、と質問した。だが、なぜ片腕がないのか、と目で聞いてきた。私は、一体どちらの質問に答えればいけないんだ?」
「できれば、どっちも答えてくれよ」
「私は東の地、ヴォストーク[「悠久の森」の北にある都市。ソレイユたちの住むウルベーンから、大砂漠を挟んで南東の方角に位置している]から来たんだ。そしてこの腕は、昔冒険をしたときに切られてしまったんだ。君の質問はこれだけか?」
「じゃあ、名前を教えてくれよ。オレはソレイユ。ソレイユ・ネバルだ」
すると男はびっくりしたように顔をゆがめた。
「そ、そうか。私の名はシュナイド。魔術師だ」
そう言うと、領地の中心へと走っていってしまった……かに見えた。そのシュナイドとかいう男は言う。
「……君とはまた会うことになりそうだな」
こう言って、走り去ってしまった。すると、ソロイがやっと来た。ソロイははあはあ言いながら言う。
「す、すまない。準備に手間どってしまって。ところで、さっき話していた男は誰なんだ?」
「あの男はシュナイドといって、魔術師なんだ。はるか遠くのヴォストークから来たんだって」
「ふむ。なぜそんなところからここの領地に来たんだろう」
そういえばそうだ。だが、今はそんな事どうでもいいだろうが。
「そんな事、あとでいいじゃないか。早くファーザン・ドウアーへ行こうぜ!」
「分かった。行こう」
今の季節は春だ。だが、照りつけてくる太陽は真夏のものに近い。
「うー、なんでこんなに暑いんだろう」
「そんなこと、オレが知ったことか。水、飲むか?」
「ああ。ごくごくっ。ふう、生き返った。あと何分くらいで着きそうだ?」
「約三〇分だ、あ!?」
ん? 今の言葉は何だ? その瞬間、オレはその言葉の真実を知ることになる。
向こうの約五〇メートル先で、女性が数匹のオークにおそわれている。
大変だ! オレとソロイはものすごい勢いでそこへ走る。そして、一番手前のオークを切りつけた。オレの技はこうだ!
「ネバルクラッシュ!」
この技は、剣を一秒間に何十回も振りまわす技だ。不意打ちをくらったオークは、ひめいもあげられずに切りきざまれてしまった。
「そこのオークども! そこの女性から離れな!」
ソロイが言った言葉だ。オークどもは、その言葉よりもオレの剣さばきに恐怖を感じているようだ。オレが剣を振りまわすと、オークたちは一目散にどこかへ行ってしまった。
オレとソロイはすぐにその女性のもとにかけよって声をかける。
「大丈夫でしたか?」
「ええ、私は大丈夫よ。ファーザン・ドウアーに来る途中、オークに追われてしまって」
「そうでしたか」
「そう。魔法で追いはらうこともできたけど、あいにく魔法はすべて使い切ってしまったのよ」
「あのー、ファーザン・ドウアーに行くんですよね。実はオレたちもそこへ向かおうとしているんです。そこで、行動をともにしませんか?」
ちょっと早計な言い方だったかな。しかし、その女性は言う。
「そうですね。この恩をあなたたちの願いを聞き入れるということで返すことができますね。あなたたちの名前を教えてくれないかしら?」
「オレはソレイユ・ネバル。ソレイユって呼んでくれよ」
「オ、オレはソロイ・グラブドです。あ、あのう……あなたのお名前は?」
すると女性はとまどいがちに言う。
「私はサリィ・ハイブラクと言います。サリィと呼んでくれればけっこうです」
「なぜここの山へ?」
「名前が気に入りました。偶然ここの近くを通ったので、登ってみようかと思って」
「そうですか。では、そろそろ行きましょうか、サリィ?」
オレの言葉にソロイは「ああー、オレの出番をとりやがって」とでも言いたげな顔をする。サリィがそれに答える。
「ええ。行きましょう、ソレイユにソロイ」
しばらく歩くと、ついにファーザン・ドウアーに到着した。




