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2、支配人の企み(1)

 狂った天気だ。オレたちは、ジオスの呪文で地上に戻ったとたんに雨の降ってるのを目撃したんだ。


「でも、水中を泳いだからすでにびしょぬれだな」


 シェードが言った。この人は、地底遺跡でオレを苦しめた魔術師なんだ。彼も「ルアンパバーンに行く」とか言って、同行する事となった。


「じゃあ、オレたちはもう行くよ、オスロ、ジオス」

「そうするがいい」


 オレたちは二人のフェアリーに別れを告げて、バイクに乗る。シェードは、中でも体の小さいダイスのバイクに乗ってるみたいだな。


「出発するぞ」


 ブウウウン。ブウウウン。顔に雨粒が当たってくるのをこらえながら、馬をはるかに超える速さでトムスク大草原をしっそうしていた。


 一時間ほどたっただろうか。突然坂になり始め、走るのがつらくなる。オレは気になってソラに聞く。


「なんか、山を登ってるみたいじゃないか。ここって、どこなんだ?」

「分からないわ。もしかして、道がそれてスパイン山脈の方に進んでるんじゃないかしら」

「スパイン山脈って、ヘーレゴニーで一番高い山々が集まってるところか?」

「そうよ」


 ひえーっ。じゃあ、一つ目の宝石があったファーザン・ドウアーの山なんて比べものにならないだろうな。道が間違っていると聞き、みんながバイクを止める。


 だが、シェードが言った。


「道は合ってるよ、みんな。知らないと思うけど、スパイン山脈だったらもっと坂が急だぞ」


 ソラがきいっ、とシェードをにらむ。


「それじゃあ、ここがどこなのか分かるのね?」


 彼はうなずいて言う。


「ああ。トムスク大草原の北は、アブシニア高原だ」


 高原? 山地にある、標高の高い平原で、空気がかわいていて、夏でも涼しいところの事か。涼しいといっても、雨が降っているからすでにひえびえとしていたけどな。


「高原にも町とか村ってあるのか、シェード」

「もちろん。ルアンパバーンもそうだが、なにより有名なのがグッグル城だ」


 ふうむ。聞き慣れない城だな。城っていう事は、昔は戦争とかで活躍したのか? よく知っていそうなソラに質問してみると、やっぱり知っていた。


「ええ。今から二五〇年前ぐらいの時に、ファンジャウがハイザックとヘーレゴニーに戦争をしかけたのよ。同盟国であるハイザックとヘーレゴニーの国王がファンジャウ国王を説得するために講和会議が開かれて、その時使われた場所がグッグル城だったらしいわよ」

「なんで王城を使わなかったんだ?」

「ファンジャウに近いから、講和会議の途中で襲撃してくる可能性があったからよ。海から攻めてくる場合を考えても、スパイン山脈が壁になってたから、グッグル城はうってつけだったのよ」

「へえ」


 けっこう有名だったんだな。だけど、今でもハイザックとファンジャウは仲が悪いんじゃなかったっけ?


「その会議の結果は?」

「……結局話がまとまらず、そこから長い長い対立、つまり冷戦が始まったのよ。最初のうちはヘーレゴニーも影響を受けてたけど、帝王が来てからは一切手を出さなくなったらしいわ」

「そうなのか」


 ひそかにこの話に耳を傾けていたダイスは、いきなり大声で言った。


「さあ、道が合ってるとシェードが言ったんですから、信じてこのまま進みましょう、みなさん!」

「じゃあ行くか、ソラ」

「うん」


 おっ。いつのまにか雨がやんでいたんだな。オレたちは夕日を左目で見ながら、バイクを走らせた。




「夜は冷えますね」


 ダイスが歩きながら言った。オレは城下町の広さ、そして行き交う娘たちの美しさに驚きながら言う。


「早めに宿を見つけないと。サリィ、この通りに宿はあるか?」

「ええ、あったわ。宿の看板が見える」

「よし。今度こそ……」


 部屋が空いてるといいんだけどな。グッグルの城下町に宿は大量にあったんだけど、すべて他の人で満員だったんだ。これでダメだったら……。


 しばらく歩くと、なにやら看板が見えてきた。オレはそこに書いてある宿の名前を見る。


『海賊の隠れ家』とあった。


「うわっ、いかにもおそろしげな宿だな……」


 シェードがつぶやく。だが、中へ入ってみると、それほど普通の宿と違ってるわけじゃなかった。オレだって、海賊しか入れない宿なんじゃないかと心配していたんだ。


 客は五、六人いるだけで閑散としている。見渡すと、見覚えのある男がいた。


「Cさん?」

「おお、ソレイユたちじゃないか」


 Cさんはうれしそうにこっちに来る。今ここで、あんたはマスターの一員だろ、なんて言えないだろうな。だけど、オレだってまた会えてうれしいぜ。ダイスはCさんにきく。


「バイクもないのに、どうやってこんなに速く着いたんですか」


 Cさんの目がキラッと光る。


「それは教えられない。しかも、そんなのよりもっと重要で大変な事態が起きているぞ」

「グッグル城で?」

「そうだ。まあとりあえず座ろう」


 オレたちは適当に席に座る。くそー、オレもCさんの移動手段が知りたかったのに。何か言えない秘密があるのかな?


 Cさんが話し始めた。


「グッグルにはグッグルランドっていう遊園地があるんだ。そこの支配人が名誉公爵のギザーガ・ドレン氏なんだが、噂によるとこいつは何人、いや何十人、何百人の住民を強制的に働かさせているみたいなんだ。しかも、つらく、厳しい長時間の労働をな」

「そいつは許せないな」


 シェードが深刻そうに言う。すると、Cさんが不思議そうな顔をする。


「君の名は? 前は見かけなかったが」

「シェードっていいます」


 Cさんはあやしむような目でシェードを見ている。だが、それも長くは続かなかった。


「話を戻そう。そのギザーガ・ドレン氏はグッグル城をむりやり一人占めにして、警備兵やその他の貴族も操っているんだ」

「くそっ、やりたい放題だな」


 シェードはくやしそうにテーブルを叩く。その姿を見たサリィは、全く理解できない、と首をかしげている。エルフは調和し合っているから、こういう人間たちの争いは興味深いはずだ。


 決心したオレは一つの提案をだす。


「明日、城に入ってみないか?」


 だがCさんは否定する。


「一言でいえば、無理。警備兵が通してくれなかった」

「試してみたのか?」

「もちろん」


 その時、今まで何もしゃべらなかったソラが言う。


「悪いのは公爵の方よ。私たちは絶対に城へ入らなくてはならないわ」

「というと?」

「耳をかして。ゴニョゴニョ……」


 ソラは全員に作戦を伝える。これを聞いた人の顔が次々と変わっていくのは見ていておもしろいな。だけど、みんなの反応を見るとオレも変わっているようだ。重役であるサリィとシェード、とくにサリィは青くなっている。


「この作戦は……あまりにも過激ね……」

「やってみる価値はあるけど……向こうに魔術師がいたら……」


 そしてもう一人の重役、ソレイユ・ネバルは言う。


「ほかに方法がないんだ。やるしかないだろ?」


 オレたちは明日の決戦にそなえ、はやめにベットで寝た。




「さあ、行くぞ」


 城の入口にいる警備兵はあやしい表情で近よるオレたちをにらんでいたが、そのうちの一人がついにがまんできなくなって叫ぶ。


「お、お前たちは何者だ!」


 答える代わりにシェードが呪文を唱えた


「メティス!」


 彼の目が赤く光る。すると、警備兵たちは全員眠ってしまった。地面に頭を打っても目が覚めないんだから、よほど眠りが深いんだろう。


「城への侵入開始だ」


 そう、オレらが選んだのは、無断潜入だ。どんどん出てくる兵士に呪文を使う。


「ライジング・シュート!」


 おりゃりゃりゃりゃりゃりゃ! 雷のボールを自慢の足でけって、兵士たちに命中させていく。すごいスピードで、しかも何発もとんでくるから平常心じゃいられないだろう。百五十人ほど倒したかな? 案の定、オレはヘトヘトだった。


「オレにまかせろ」


 Cさんは手を合わせて目をつぶる。オレの足をなでると、急に痛みがなくなった。Cさんって、聖職者だったのかよ!


「エーデルブローの在家プリーストだ。このくらい、一瞬で治せるよ」

「そうだったんだ……。あんた、何者だよ……」

「なーに。ただの大食いだ」


 オレたちは少し迷いながらも公爵を探しに城内をあらしまくる。ストレス解消にもいいし、最高だぜ!

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