2、パーシュダル流剣法術
「そら! もっと速く剣を動かせ!」
「またまた! 足がさぼってるぞ!」
「思いきりやれ! 力をぬくな!」
うー、頭がズキズキする。何度も親父のまねをしようとしても、思うように動かないんだ。基本動作でさえ、難しくてうまくいかない……親父は得意げにしゃべりだす。
「まあ、最初はこんなもんだろ。お前は腕の力をもう少しきたえなきゃだめだな。足の動かし方もバラバラだ。明日からもっと練習の時間をふやすからな。いいか?」
「とりあえず、今日はこのくらいにしてくれよ、親父」
「分かった。今日はここまで。自分で腕たてふせでもやっておくんだな。剣も振れないんじゃあ、剣士として情けないぞ」
オレは言い返す言葉もない。オレが両手でやっとのことでふりまわせる剣を、親父は片手でビュンビュンふりまわしている。自分でも情けなくなってきた。とほほ。
家の練習メニューは、月曜から土曜までみっちりけいこして、日曜が一週間で天国の日だ。オレは『ドラゴンの口笛』でソロイや他の警備兵たちと酒を飲んでいる。
「ぷはー。苦労のあとの酒は最高だぜ!」
するとソロイが言う。
「ネバル家の練習時間は、オレら警備兵でも驚きだな。一日の約半分が練習じゃないか。体は大丈夫か……」
「ああ。最初はきつかったけど、今はもう平気だ。なんでこんなに練習するんだろう」
「ネバル家は、チーフとかいうやつから剣術を教え始めたらしい。その剣術は、オレらにとっても高等技術なんだぞ?」
オレは、酒をがぶ飲みしている。
「あー、ちょっと飲みすぎたな。また明日も練習があるから、今日はそれくらいにしておくよ」
オレはそう言って、店を出る。なんだか道がいつになくくねくねしているぞ? オレはそんな事を考えながら道を進むと、家が見えてきた。夜おそい時間だったから、親父はすでに横になっていた。オレもすぐにベットに入る。そしてすぐ寝てしまった。明日からまた練習だ。くそ、明日が恐い。
練習、練習の毎日がもう三ヶ月。オレの腕はたくましくなり、剣もよゆうでふりまわすことができた。剣さばきも上達し、親父もそれを認めてくれた。
オレはときどき警備兵とガチンコで戦うこともあった。ソロイにはまだまだおよばないが、そこらのやつらとは、けっこうやりあえる。警備兵たちは皆「あんなんじゃあ、ネバルさんがどういうけいこをしたのかまったく分からないな」とくやしそうに言うばかりだった。
オレはふと、領地内の西にあるウルベーンの洞窟へ行こうか、という気になった。あそこなら弱い魔物なら出てくるし、一度でいいから中に入ってみたいと思っていたからだ。オレは親父といっしょに行くという条件で、洞窟へと向かった。
中は暗い。オレは親父と話しながら中へ中へと奥に進む。帰りはどうするのかって? オレらはちゃんと、剣でゆかに傷をつけているんだ。オレらは注意しながら前へ前へ行く。
時々敵が現れる。最初はスライムやチビゴブリンなどがでてきた。スライムは剣でたたき切って倒し、チビゴブリンは頭をぶった切ってやった。オレは言う。
「この先には何があるんだろう」
「たぶん、宝物とそれを守っている怪物だろう。まったく、ここでオレらは死ぬのか?」
「いや、死なないさ。ネバル家はドラゴンに殺されることになってるんだから」
そうおしゃべりをしていた時だ。
突然、広い場所にでた。そして、そこには、親父の言う通り、怪物がいた。
「ガルルルル……」
狼の声だ。親父が言う。
「うむ、狼の声と体、手には杖を持っている。マジカルウルフだな」
すると、マジカルウルフは言った。
「私の名はカルだ。ここに来る者はすべて殺す!」
カルは呪文を唱える。
「マジカルシュート!」
しょうげきはが親父をおそう。しかし、親父の剣がものすごい速さで動くと、しょうげきはは消えてしまった。
「ダブルシュート!」
ちっ。今度は二つのしょうげきはだ。オレと親父、二人が同時にねらわれた。親父が叫ぶ。
「ソレイユ! 力を入れずに切るんだ!」
本当か? オレはその言葉通りやってみた。しょうげきはは消えてしまった。
「やった! オレにもできた!」
うかれているひまはない。すぐに魔法がくる。
「オーバードライブ!」
カルの杖がばかでかい剣になった。ちくしょう。親父が言う。
「お前は後ろから切りつけろ! オレは前で戦う」
そう言うと、カルの正面につっこんだ。オレもまけじと走って後ろにまわる。
親父は自分がおとりになって、息子に殺すのをまかせるつもりなんだ。オレは走った勢いで、カルの背中に[剣を]つきさした。
「グガァァァ!」
カルはおそろしいうめき声をあげながら、動かなくなってしまった。
オレたちは、マジカルウルフを倒した。親父は腕でオレの首をしめながら言う。
「このやろう。おもしろいくらい芸術的な殺し方だったな、私の自慢の息子よ?」
「それより、宝物はどこだ? まさか、ないんじゃ?」
「いや、それはないな」
親父はある方向を指さした。そこには、前まではなかった道が、マジカルウルフを殺したことで現れたのだ。オレと親父はその道を進む。
奥へ奥へと進むと、宝箱があった。
「やったぜ、親父! やっと見つけた!」
「いや、ゆだんはするな。宝箱を開けようとした瞬間に上からトラップが落ちてくるかもしれんからな」
どきっ。オレの手は宝箱を開けようとしていた。あわてて手をひっこめるオレの姿を見て、親父はにやりと笑った。
でも、これじゃあ、どうしようもないじゃないか。そこで俺の剣で宝箱を開けることにした。ついに、宝箱が開いた。トラップは……落ちてこないな。オレと親父は中身を見た。そこには……
「ありゃ? これは何だ?」
そこには、ガントレットと手紙が入っていた。オレは手紙を読む。
私の勢力はもう限界だ。だから子孫にこのガントレット、「OSG」[オーガ・ストレンジ・ガントレットの略。手に装着するだけでオーガのような力を出すことができるようになる]を受け継がせる。ちなみにこれはある魔術師、バーンの言葉に従って、ここの洞窟へとかくしたんだ。じゃあな。私のずっと未来の子供たちよ。
チーフ・ネバル
「この手紙は……」
その瞬間、オレは何もしゃべれなくなった。なぜかって? チーフ・ネバルはオレがもっとも憎んでいるやつだからだ。




