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15、死闘(3)

 きたぞ! タコのようにのたうちながらソロイに一本、オレに二本、サリィに一本、ダイスとソラに一本きた。残りの男の顔は攻撃してこなかった。


「おい、ダイス、ソラ、危ない!」


 オレの声に導かれるように上に高く飛んだ。おかげで男の手は空を切った。


 サリィはすばやい身のこなしで腰に差してあったダガーをうまく手に刺している。ソロイもロングソードで軌道をそらした。尾は結晶にたたきつけられた。


 そしてオレに迫ってきたのは、巨大な二本の丸太のような足だ。これじゃよけられない。ソロイみたいに軌道をOSGの力で変えようとしたが、力の格がありすぎた。思いっきりふっとばされた。


「ぐあっ」


 なんとか着地したが、手がビンタしようとしていたから、しゃがんでよけた。すぐに尾がオレの背中をバシンと打ってきた。


「痛いっ、なんでオレばっかり」


 いや、そうでもない。オレが倒れたのを確認すると、今度はソロイに向って行った。どうやら一人ずつ始末するらしい。


「背中がヒリヒリするが、仲間がピンチだ」


 ソロイは大きな傷を受けてるから、どうも動きが安定しない。他のサリィたちも、自由自在に動く手によってソロイを助けられない。


「助けなくちゃ」


 そう言った瞬間、オレは見てしまった。


 ソロイが剣を落としてしまい、尾で足を打たれ、手のツメで顔と首、胸や腹をひっかかれ、両足に右腕をはさまれ、ボキッと骨のくだける音がして、何も語らずに倒れたのを。


「ソロイ!」

「…………」


 大声で呼んでも、返事がない。まさか、死んだのか? おい、ソロイ、起きてくれよ。生きて、またおいしい料理を食べようぜ。生きて、宝石を手に入れる手助けをしてくれよ。


 ソロイ……?


「貴様、よくもソロイを」


 剣をこっちに来る足に向けた。そして、怒りの一撃がさくれつする。


「ライジングビーム!」


 バチバチという音の直後、光線が目の前の足を粉砕した。その足は、もう動かなくなった。


「ファイヤーボール!」


 おっ、サリィも魔法を使ったのか。火に燃やされた尾はゆっくりとけていった。


 遠くでは、男の顔がわあわあ言っている。


「私のしっぽと右足をやってくれたな」

「あんただって、ソロイを殺したじゃないか」

「えっ? そうなの?」


 サリィ、ダイス、ソラはようやくぴくりともしない彼に気づいた。三人が歩み寄ると、生き残りの両手と左足が行く手をふさいだ。オレは口唇をかんで言う。


「仲間に手を出したら、体に魔法をくらわせるぞ」


 だが男は余裕の表情だった。


「残念。私の体はドラゴンの鱗と同じくらい硬くできている。魔法は効かん」

「じゃあ、この拳で殴ってやるぞ」

「私に近寄れば、手足が黙ってるとでも?」

「五分間だけ時間をくれ。作戦を考えたい」

「いいだろう。待っててやるから、虫の息にならんようにしろよ」

「わかった。みんな、ソロイのところへ」


 こうして、作戦会議が始まった。まずオレがさっきの出来事を話す。


「あいつの体は、OSGとかじゃないとダメージはないらしい。だから結局、オレが接近しなくちゃいけないんだ。そこに行く間、やっかいなのが男の触手(?)だ」

「じゃあ、私たちがあいつの手足の動きを止めればいいのね?」

「そうだ」


 そのとき、サリィが手を挙げた。


「私の重力の呪文で手を足を封じるわ」

「じゃあ、まかせたぞ。二人は、どうする?」

「僕は、ソレイユさんを弓で援助します。もしかすると、男の顔が何かをしかけてくるかも知れませんから」

「私は、みんなをサポートできるような呪文を使う。もう、誰かが死ぬのなんて見たくない」


 それは涙声で言った。ソロイは今も全然動かない。


「そろそろ五分だ。作戦は決まったか?」


 男は馬鹿にしたように言った。そういえば、やつの足と尾は再生したようだ。


「作戦実行だ!」

「グラビムド」


 サリィの声がすると、両手両足と尾は足元の結晶(クリスタルか? まあどっちでもいいが)にべったりはりついた。彼女は力を最大限使っているから、長くはもたないだろう。オレはESBの力を借りて走る。


 男は声を震わせた。


「こ、こいつら!」


 サリィは全身から汗をだらだらとたらしている。彼女を始めとする他の仲間もがんばったんだ。その苦労を水の泡にするわけにはいかないだろう。やつの体が間近に迫ったとき、男は唯一自由な頭を上下に動かしながら言う。


「命令変更だ! そこの王女も道連れにしてやる!」


 男の首がシュッとソラにむかう。


「ソラー! 逃げろー!」

「えっ?」


 彼女が気付いた頃には、もう二メートルも離れていなかった。ダイスたちもあまりに速い出来事だったから、反応するのが遅く、あの距離じゃ助けにいけない。ソラが死んだら、オレは……。


 ドン。ガブリ。ぐああっ!


 うつむいていたオレは、今の三つの音に耳を疑った。最初の音は、人をつきとばしたような感じの音で、二つ目は肉を食いちぎる、おぞましい音で、最後のは明らかに誰かの叫び声、それも男(戦闘している相手の『双子』じゃないぜ)の声だった。


 ソラが立っていたところを見て、今度は目を疑った。


「ソロイ……?」


 そう、ソロイだ。ソロイの腹には大きな穴があいている。すぐそばではソラが倒れていて、男(『双子』の事)の首はソロイがむんずとつかんでいる。けがをし、腹に大穴をあけたソロイの腕は決してゆるがない。ソロイ、さっきは死んでなかったのか? そんな質問はあえてせず、彼を見る。


 ソロイは、笑っていた。顔の表情が彼の言いたかったであろう言葉を語ってくれた。


(あとはまかせたぞ、ソレイユ)


 最後の最後に、あんなかっこいい姿をしたソロイがにくらしいぜ! オレはジャンプして言う。


「ソロイの命にかけて! 死んでみよう!」


 剣は、怪物の体をまっぷたつに切った。少しじたばたしていたが、すぐに動かなくなった。


 ソロイはその直後にもう息をしていなかった。彼の居場所にみんな集合する。


「本当に……本当に、ありがとう……」


 泣きまくったソラは、鼻水を流すという王女の品格が下がる事件をひきおこしたが、彼女自身そんなのはどうでもいいと、行動で示してくれた(彼女はソロイをゆっくりと寝かせた)。


「ファントムを消したあと、市長に頼んで墓を作ってもらおうぜ」


 オレの言葉に、ソラたちは賛成した。彼女が大きな声で言った。


「さあ、ファントム、出てきなさい!」

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