12、アジトを探せ(2)
「起きろ、朝じゃ」
見ると、目をこすりながら立っているドスがいた。
「日差しがさしこんでこないから、すっかりねぼうじゃ。もう朝の九時じゃぞ」
「やばい、みんなを起こそう」
約五分後、ようやく全員が目を覚ました。出発しようとすると、ドルがオレに何かをくれた。
「この袋に、宝石を入れろ」
「ありがとな」
早速二つの宝石を中に納める。そして別れを告げ、宿から出た。
その時だ。急にぞくっと殺気を感じた。まさか?
立っていたのは、男だった。そいつはつぶやく。
「今から十分で都市の北にある爆弾のスイッチを止めろ」
「おい。今、爆弾って言ったか?」
「間に合えば、次の指示を出す。魔法は絶対に使うな」
男はどこかに走り去ってしまった。
「早く行かなければ、多くの人が死んでしまう」
「今いるのは都市の南側ですよ! 僕の足でも、スイッチを止めるのは不可能です」
「サリィ、ハーストの呪文を使ってみたら?」
「さっきの男が魔法は使うなと言ってたわ。ということは、使えばすぐ爆発させるんじゃないかしら」
「じゃあ、どうするんだ、くそっ!」
だが、オレには考えがあった。ESBを取って、言う。
「これをはいて、走れ。間に合うはずだぜ」
「でも……」
「いいから、全力で走るんだよ!」
ダイスはすぐにESBをはいて、北に走った。
「オレたちも、急いで向かおう」
オレたちも走り出した。ソラは、時計で時間を気にしている。
「大変。私たちが話してる時間だけで二分失っているわ。だから、残り八分……」
「がんばれ、ダイス!」
いくらか走り、残り時間が一分を切ってしまった。オレたちはまだ南の区域を走っている。道に迷うかと思いきや、ダイスの超スピードで市場のみかんが転がってたり、道にもブレーキの跡があったから、楽勝だった。
「あと二十秒!」
ソラの声が響く。ソロイは言う。
「爆発すれば、ダイスも死んでしまうぞ、きっと」
「それは、やばい!」
彼はジュエル・ハンターズなんだから、死んでしまえば終わりだ。ここまでの苦労が、すべて水の泡になってしまう。
「あと五秒よ! 四、三、二、一、〇!」
思わず耳をふさぐ。だが、爆発はしなかったようだ。ソラがうれしそうに手をたたいた。
「やった! 間に合ったのね!」
「オレたちも、早くそこに行こう」
夢中で走った結果、およそ一時間で着いた。そこには、ぐったりと地面に寝そべっているダイスがいた。
「ダイス、大丈夫か?」
「はあ、はあ、ちょっと、全力で、はあ、走りすぎました」
「よくやったな。じゃあ、ESBを返してくれ」
兄さんと違って、欲というものが彼にはないようだ。普通、すんなりと返すか? まあいいか。オレはESBをはいた。
すると、また同じ男がこっちに歩いてきた。
「まさか爆弾を止めるとはな」
「驚いたか?」
「まあまあ。それより、次だ」
男はオレに紙を渡してきた。みんなに見せて、読み上げる。
『今から十二時までに俺をつかまえろ。そうすれば、アジトへ案内する』
「つまり、鬼ごっこをやれと?」
「そうだ。この勝負は魔法を使ってもいいぞ」
「わかった」
「三十秒数えてから、オレを探せ。もちろん変な真似はするな。数十個の爆弾がたった数秒でマーナリンをふきとばす。もちろん、この勝負で負けてもそうなるが」
「お前にタッチすればいいのか?」
「そうだ」
「よし、じゃあ数えるぞ。ソラ、頼む」
彼女はうなずき、時間をはかり始めた。男はどこかに逃げてしまった。
「大規模な鬼ごっこだな。それも、マーナリンという人質付きでな」
「絶対勝たなくちゃな、みんな」
「そろそろ三十秒よ」
「いよいよだな」
「逃げた方向は南西ね」
「サリィさんは、男を探知する呪文を」
「そうね」
「三十秒になったわ」
サリィはそれを合図に唱え始めた。しばらくして彼女は叫んだ。
「ディレクトヒューマン!」
そういうと、南西に指差した。
「あっちに約三〇〇メートル先よ!」
「じゃあ、オレとダイスが男に追いつくから、ソロイとソラはサリィと一緒に男を追うんだ」
オレはそう言って、ダイスと走り出す。周りの市民が何事だ、と口をそろえて言っている。だが俺らはシカトした。
十分くらい走ったが、全然見つからない。
「どうする、ダイス」
「とりあえず南西の区域を探しましょう。おそらくまだこの区域にいるはずです」
その後も十五分走ったが、全くダメだ。
「あーっ、どうする」
「あっちにいます!」
見てみる。あ、さっきの男だ。オレたちがここにいるのを知らずに、オレらの方に走ってくる。
「見つけたぜーっ!」
「うわっ。逃げろ」
「追いかけるぞ、ダイス」
「もちろんです」
追跡を開始する。だが男の足はおそろしく速い。あっという間に消えてしまった。
「くそ、逃がしたか」
そこへ、サリィたちが来て、合流した。事情を説明すると、ソロイはうなった。
「それじゃあ、またダイスにESBを貸せばいいじゃないか」
「そして私の魔法で自分が空を飛びます。上空から私の視力で男を見つけて、メッセージの魔法で居場所をみんなに伝えます」
「ダイス、頼むぞ」
またダイスにESBを渡した。そして、男が逃げた方向に走っていった。
「オレたちはどうするんだ?」
「あなたは男が近くにいたら魔法で攻撃し、足止めして。ソロイ、ソラは二人で行動して、市民の情報を聞いて男を探してね」
「作戦開始だ!」
「おーっ!」
こうして、それぞれの行動に移った。
「フライ!」
サリィが空に舞い上がった。エルフの視力は抜群だと聞いた覚えがある。すると、頭に言葉が流れた。
『あなたの近くにいます。北から南に移動中。あなたが今いる道を通りますよ』
「よーし、やってやる!」
オレは建物の影に隠れて、チャンスをうかがう。やがて、だれかが走ってきた。タイミングを合わせて、呪文を使う。
「エレキフィールド!」
「ぐあっ」
辺りが電撃の流れるフィールドになった。男はまんまとひっかかり、俺がひそんでいるのに気づかず、こうしてあんたの負けになるんだ。男に触れるためにオレも雷フィールドに足を踏みいれようとした時だ。
「う、わあーっ! オレもしびれるーっ!」
なんとエレキフィールドは、魔法使用者にも効くみたいだ。しかも騒ぎを聞きつけて人々が集まってきたから、オレは呪文を無効化した。オレは剣を杖がわりにしてかろうじて立ち、男もよろよろしてたが、すぐ逃げてしまった。
市民の一人が話しかけてきた。
「おい。今の男は何だ?」
「作戦を思いついたぞ」
市民はよく分からない、という顔をした。しょうがない、このすばらしい作戦を発表してやるか。
「お前ら。この金貨が欲しくないか?」
「おおっ!」
市民の息を飲む音が聞こえる。
「さっきの男をつかまえた人にこれをくれてやる。だから、必死で探せぇーっ!」
「うおおー! 男を見つけろ! 金貨はオレのもんだ」
「オレがいただいてやる!」
「手に入れるのは私よ!」
「おいらだ!」
「ぼくだ!」
市民は言い争いながらも、手分けして探しだした。こんなだいたんな作戦にでるとは、あの男も考えなかったはずだ。まさか数千人の市民を敵にまわすとはな。
「うっ、さっきのダメージが大きいみたいだ。ちょっと休もう」
オレはそこらへんの道に座った。オレはうっかり眠ってしまった。
何分たったか知らないが、だれかがオレをゆすっていたから、目を覚ました。
いたのは、ソロイ、サリィ、ソラ、ダイス、そしてたくましい男、最後にあの逃げまわっていた男だ。ソロイが説明する。
「この人がつかまえてくれたんだ。どうやらソレイユと何か約束をしたらしいが」
オレは金貨をピーン、と指ではじいて、男に渡した。すると男はにやっと笑い、満足そうに歩いていった。
「ソレイユ! こんなにいい作戦があったのに、何で言わなかったのよー」
「いや、オレもついさっき考えついたんだよ」
「じゃあ、案内してもらいましょう」
「わかった。ついてこい」
オレたちは勝負に勝ち、ついにアジトへ進入した。




