2、平和と安息(2)
ついに、姿を現した。驚くことに、女性だった。動きやすい服装をしているが、なかなか高そうな服だ。背中には槍をしょっていて、左の腰にダガーがさしてある。けっこうきれいな顔をしていて、背はオレよりちょっと小さいくらいだ。
「誰だナン?」
女性は魅力的な声で言う。
「私は、ソラと言います。あなた方の名前は?」
オレたちは、順々に名前を言った。そのソラという女性は、みんなの顔をひととおり見て、言う。
「私は、旅の者です。旅のわけは話すことができませんけど、もしよければあなたたちと一晩ご一緒させていただきたいのですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。でも、今ちょうど夕食を食べ終わっちゃったんだ」
「いいえ、私も食料は持ってきてあるわ。心配しなくていいですよ、ソレイユ」
彼女がオレにほほえんで見せた。もう爆発寸前だ。目をそらそうとしても、気がつくとソラの方を見ていた。ぼーっとしているオレに、ソロイが気づいた。
「ソレイユ、どうかしたか?」
「……」
「ソレイユ?」
「……ん? 何だ?」
「いや、なんでもない」
どうしようもないじゃないか。完全に[ソラは]オレの好みなんだから。
ソラが食べ終わり、オレたちと話し始める。
「あなたたちはこれからどこへ?」
「私たちはこれから彼女、サリィの故郷であるエルフの森に行こうと思っています。だから明日はブラット・ワールドへ北上します」
「じゃあ、私と反対方向みたいね。私は明日、ここから南にあるマーナリンという砂漠にある城塞都市に行ってみようと考えているわ」
「そうですか」
その時だ。
「やっと見つけましたよ、すばしっこい小娘さん」
そっちを見ると、青白い顔にメガネをつけた男が立っていた。
「ふん。仲間に守ってもらうつもりですか。ずいぶん弱々しくなりましたね、王……」
男は、とっさに身をかわした。オレが、ライジングを振ったからだ。男は目を細めて言う。
「自己紹介がまだでしたね。私の名はファントム。彼女をつかまえるのが目的です」
「オレの剣を受けてみろ!」
だが、ファントムは軽々とオレの剣をよけている。
足を切りつけようとすると、後ろにジャンプして、呪文を唱えている。
「はっ!」
ソロイとナオがファントムに攻撃した。剣に当たる瞬間、姿が消えた。
「どこに行ったナン!」
そして、いきなり上空に現れて、呪文を使う。
「ビックバン!」
ファントムの人差し指に力がたまっていった。直径一メートルくらいの球になると、それをソラに投げつけた。
しかし、彼女は見抜いていたようだ。魔法の紙を取り出して叫ぶ。
「ハンド・イベリフォ!」
すると、彼女の手からオレの身長くらいでかい手がでてきた。飛んでくる球体をその手で包むと、ビックバンの呪文は消えてしまった。
「ちぇっ。まだ魔法の紙を持ってたんですか」
「まだ残ってるわ。少なくとも、呪文でダメージを受けることはない」
「計画が狂ってしまいましたよ。でも私には、いくらでも策があるんですよ、残念ながら」
そしてロングソードを抜いた。
「私は危険を察知する能力と、瞬間移動のできる能力を持った最強の騎士です」
またどこかに消えた。
オレはソラのところに行く。
「ソラさん、オレと背中合わせで立って」
「ソラさんはやめて。ソラと呼んで」
そしてファントムはオレの前に出てきた。彼の剣をなんとか防ぐ。そして、ファントムの体に電撃が流れた。
オレはチャンスを逃さずに、呪文を使う。
「エレキショック!」
「うぐっ」
ファントムは地面に倒れた。そこへ兄さんの剣が首につき刺さる。だがファントムからは血が流れず、[その代わりにやつの体は]砂になってしまった。
ソラが肩をすくめる。
「今戦ったのは、ファントムの分身にすぎないわ。本物は、マーナリンにいるの」
ザーロックが口を開く。
「じゃあ、マーナリンに行く目的は……」
「そう。分身ではなく、本物を殺しに行きます。そして、父さんの居場所を聞き出す。それが旅の目的です」
「だが、本物は分身よりもはるかに強いはずだ。死んでもいいのか」
兄さんの厳しい言葉に、ソラは少したじろぐ。
「どうやら、私の正体を知ってもらわなくてはならないようね」
「なんだと?」
「あなたたちは、私の真実を知る権利がある。私の名はソラ・ヘーレゴニー。私の父さんはヘーレゴニーの国王よ」
「ええーっ!!!」
うそだろ、ソラは国王の娘なのかよ。
「じゃあ、ファントムは国王の娘をさらって、さらにこの国におどしをかけるつもりだな」
「どういう意味だ、ファース」
「噂で聞いたんだが、国王がつかまっているのは帝王の城らしい。ファントムはきっと帝王の手下で、二人の王族をヘーレゴニーに対して人質を取り、支配力を強めるつもりなんだろう」
「くそっ、そんな未来にしてたまるかよ」
「それに、王位を継ぐ者がいれば帝王にとってやっかいな存在だろう。その気になれば、外国に助けを求めて軍隊を呼ぶのも可能じゃないか」
「ちくしょう……」
「実際、帝王の支配力は年々弱まってきているんだ。ロード・オブ・ドラゴンがいるだけでも問題になっているし、伝説のキングフェアリーや、三大賢者といわれる聖竜、フェニックス、ジャックフェアリーの勢力も影響している。それに加えて王位継承者が生きている事実が国民にばれたら、希望をもち、さらに支配するのが難しくなるってわけだ」
「でも、私が生きてるって噂になったら……」
「そうだ。きっと民衆をみな殺しにするだろう。まあ、ロード・オブ・ドラゴンもいるからあまり殺さないかも知れないが、活動範囲外なら別だ。エルフやドワーフの命も危険になる可能性があるから、行動を起こせない。そうだろう、ソラ王女?」
ソラは首を横にふる。
「王女だなんていわれる資格は、私にはない。今まで何度も行動を起こそうと思ったけど、どれもまるでダメだった。外国にも何度か助けを呼ぼうとしたけど、やっと十七歳になる私の話なんか、誰も信じようとはしなかった。そして、伝説のジュエル・ハンターズも探してみたけど、見つからなかった」
「ジュエル・ハンターズ? それなら、ここに二人いるぜ」
「えっ? うそでしょ、ソレイユ」
「本当だよ」
「それって誰?」
「オレと、サリィだ。信じられないっていうんなら、この宝石を見ろよ。苦労してやっと手に入れたんだ。他の仲間にも聞いてみろよ」
「ナオ、ソレイユの話は本当?」
「本当だナンよ」
「ザーロック?」
「本当だ」
「ソロイ?」
「残念なことに、本当なんだ」
「ファース?」
「右に同じ」
「信じるわ。本で読んだことがあるけど、ジュエル・ハンターズが宝石に触れると、まぶしい輝きを発するそうよ。念のため、やってみて」
オレとサリィは順番に宝石に触った。宝石は、すごい光をはなった。
「本当みたいだわ。これも運命なのかしら……。お願い、私も仲間にしてください」
「別にいいよ。じゃあ、マーナリンはエルフの森に行った後だけど、いいかな?」
「いいわ」
こうして、大陸の希望の王女ソラが旅の仲間に加わった。
「ふあー、子供はもう寝る時間だ。先に寝るから、見張りの番になったら、起こしてくれ」[とオレはみんなに言った。]
「わかった」
その時、ソラが近づいてきた。
「ソレイユは何歳なの?」
「十七だけど」
「じゃあ、私と同じか。実は四年前、ファントムの分身に追われるようになって……」
オレは疲れて、話の途中で寝てしまった。




