20、秘密
「なぜ、あんたがここにいるんだよ?」
シュナイドはこっちに歩きながら話す。
「私は君に興味をもった。聞けば、君はネバル家の一人だそうじゃないか? 昔、君の家系とちょっとかかわりがあってね」
「それは?」
「ちょっと待ってくれ。まず邪魔を始末しなければ」
そう言うと、手をハドルゲドンの方にゆっくりと向ける。そして、ごちゃごちゃした呪文を使う前の言葉は唱えず、いきなり言った。
「カルバトロ」
ハドルゲドンは倒れた。なぜかって? 数十本のビームが、やつの体をきれいに貫通したからだ。勝負は、一瞬でついた。いいや、これを勝負と呼んでもいいのだろうか。
「これが、格の違いというやつか。ところで、さっきの話の続きだけど?」
「ん? ああ、君も聞いた覚えがあるかも知れないが、君の先祖が帝王をたおしに仲間と冒険した話、あるだろう?」
「もちろん、知ってるぜ」
「それで、最後に魔術師に助けられた場面があっただろう? その魔術師というのが……私なんだ」
「ええー!」
あまりのショックで、言葉が浮かんでこない。だって、あの話は百年以上も前の話だぜ? それが、なんでこんなに若々しいんだよ? オレはそのことをシュナイドに質問してみた。
「それは言えない。だが、これは本当の話だ」
「じゃあ、片腕がないのは……」
「そう。帝王の手下にかみつかれてしまったんだ。そいつらは、ギリギリで殺せたがな」
「じゃあ、バルダっていう名前は……」
「もちろん、うそだ。昔はそう名のっていたが、今はこの名前で生きている」
シュナイドは、傷から煙がでて動かないハドルゲドンを見てから言った。
「あのドラゴンをここに呼んだのは、誰だか知ってるかい?」
「いいや。ただ、伝説に値する賢者が作ったらしいけど」
そこへナオが問いつめる。
「で、誰なんだナン? その賢者ってのは?」
シュナイドは落ち着いた声で言う。
「私の友人、ハンドルートだ」
ソロイが慌てて話す。
「待ってくれ。なんでハンドルートが、ヘーレゴニーなんかで人造ドラゴンなんかを作ってるんだ? いや、その前に、なんでお前とハンドルートが友人どおしなんだよ」
「今は教えるわけにはいかない。教えられないんだ」
「なぜ?」
「ハンドルートともう一人の友人がその話を別の場所に封じこめてしまったんだ。知りたいなら、二人に頼んで呪いを解いてもらわなくてはならない」
「もう一人の友人って、誰なんだよ」
ソロイも相当しつこいな。だが、オレも気になってたんだ。シュナイドはためらったが、みんなの熱い視線にたえきれず、口を開いた。
「ルクシーノだ」
ルクシーノ・ハイザック。今から約五百年前、ハンドルートとともに[ハイザック]国を統一した人物。小さい頃から親父にいろんな昔の話をたたきこまれてきたから、ルクシーノ大王のことは知っている。だけど、ハンドルートと違って、もう死んでいるはずだ。生きている理由は……。
「まさか、ルクシーノ大王もバンパイアにかみつかれたのか?[バンパイアにかみつかれた者はバンパイアになってしまう。そして、バンパイアという生き物は寿命が長いのである]」
「ソレイユ、なんでバンパイアなんだナン?」
「ナオ、ちょっと黙っててくれ」
「はい、そうやってー! もういいしー!」
そう言って、ナオは部屋のすみっこでいじけてしまった。だが、そんなのはどうでもいい。オレは、シュナイドと話してるんだから、ハイザックの歴史に何の関心もないナオなんか、いなくてもいい[ハンドルートがあるバンパイアに誘惑されて自らをバンパイアにしてしまった逸話は有名なのである]。シュナイドは笑いながら答える。
「つまり、ハンドルートと同じ道を歩いたと?」
「もしそうだとして」
「君は人というものを考えたことがあるのかい? こんなに大勢の人の目があるのに、噂になっていないのは、おかしいだろう。森や洞窟に隠れていても、結局食料があるのは町だ。ハンドルートも、ここ百年でずいぶん有名になってしまったんだよ」
「そうか、そうだよな。だとしたら、何でこの時代まで生きてるんだ?」
シュナイドはためらってから、首を横に振る。
「私の口からは話せない。だが、その時が来たら教えよう。これは、ルクシーノの許可がなければ、死んでも話せない。話した瞬間、私は殺される」
ま、まじか? どうしても聞きたいが、死んでも話せないんだったら、しょうがないだろ。歴史にくわしいソロイや兄さんも、とても残念そうだ。ザーロックは、ナオを必死に元気づけようとしている。だが、ナオは岩のように動かない。まったく、この連中ときたら……。
そんな時、サリィがみんなに言う。
「ところで、みなさんは財宝の存在を忘れていませんか?」
財宝と聞いたナオは、一番のりで奥の部屋へ進んでいった。オレたちも、やれやれと思い、後についていく。
シュナイドの登場に衝動が大きすぎて、お宝のことをすっかり覚えていなかった。歩きながら、シュナイドはオレに話しかける。
「ところで、ジュエル・ハンターズはだれだ?」
「オレとサリィっていうエルフだよ。そういえば、互いの自己紹介がまだだったよな。あっちから順に、ファース兄さん、サリィ、ザーロック、ソロイ、そしてオレ。走っていったのはナオというんだ。ところで、ジュエル・ハンターズって、何だ?」
シュナイドは、みんなに自己紹介していて、話を聞いちゃいなかった。そこでもう一回質問してみた。すると、こう言った。
「後で話す」
ちくしょう。もったいぶってないで、さっさと話せよ。後で話す理由なんかないだろう。そんな事を考えていると、前方に立ちすくんでいるナオが見えた。さらに奥を見てみる。
そこには、財宝ではなく、宝箱が一つ、ぽつんと置いてあった。いったい、今までの苦労は何だったんだ? まさか、ハンドルートが宝箱一つを除く金銀の山を、すべて自分のものに……。
オレはシュナイドの方を見る。目で、開けてみろ、と言っているようだ(オレにとって見えるだけだ。もしかしたら宝を自分のものにするために、どうやってソレイユどもを殺そうか、と心をはずませているかも……)。そして、自分を信じて、宝箱に近づく。ナオはすでに箱を開けようとしているが、固くて開かないようだ。自分のもてるすべての力を腕にこめているが、まったく動かない。だが、その箱を見ても、それほど厳重に守られているわけでもない。後ろでシュナイドの声がする。
「その箱はジュエル・ハンターズしか開けることはできないぞー」
「はい、そうやってー! もういいしー!」
また、いじけてしまった。ナオはほっといて、箱に手をかける。宝箱はかんたんに開いた。
中に入っていたのは、美しい銀色の輝きをはなっている宝石だった。
手に持った瞬間、オレは意識を失った。
気がつくと、周りがすべて白の空間にいた。ふと横を見てみると、サリィがいた。彼女はぼーっとした目で前を見ている。オレはゆっくりと顔を前に向けた。
そこに、天使がオレたちを見ていた。すると天使はにっこり笑い、話し始める。
あなたたちは選ばれし存在
他の誰にもその使命を受け継がせるわけにはいかない
残る宝石はあと七つ
残るジュエル・ハンターズはあと六人
見つからなければ世界は滅びる
見つかったとき
最強の輝きを味方につけることができるでしょう
あなたたちに幸運を……
シューン!
いつのまにか、現実の世界に戻っていた。みんなが心配そうな目でオレとサリィを見つめている。オレは言う。
「必ず世界を救ってやる。必ずだ。残りの七つの宝石と六人のジュエル・ハンターズを見つけて、この大陸を守るんだ!」
そして、自分でもかっこいいと思うような口ぶりで言う。
「オレは、選ばれし存在だ」




