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【黒歴史】ジュエル・ハンターズ ~八つの宝石~  作者: 水野 洸也
第二章 運命、選ばれし存在
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18、最凶の敵(前偏)

「よく来た」


 強大だ。強大すぎる。限度のないパワーは、腕をひと振りしただけで山全体がくずれてしまう。オレたちは、中心で椅子に座っている若者をにらみつける。


「ほおっ、ジュエル・ハンターズがたったの二人か。そんな数で山に入ってくるのは、理解できないな。もしや、ジュエル・ハンターズがなんなのかを知らないか」


 若者の髪はぼさぼさだ。かっこうもうす汚ないが、この世に存在しないほどの威圧感がオレたちの体力を奪う。立ってるのがやっとの状態で、戦うことができるのか?


「私を倒せば、その秘密を教えてやろう。私を殺す気でかかってくるのだ」


 すると、若者はドラゴンに変身した。いや、小さいドラゴンだ。そうはいっても、ゆうに五メートルは越している。変身した瞬間から、オレたちを苦しめた威圧感が消えた。自由になり、剣を抜く。


「私の名はハドルゲドン。ドラゴンといっても、私は作られたドラゴン、つまり人造ドラゴンだ。さあ、おしゃべりはこのくらいにして、パーティーを始めようじゃないか! 出すメニューの材料はお前たちだ!」


 ハドルゲドンは動かない。


「だが、始末するのは私ではない。まずは実力を見せてもらおう」


 そう言うと、ハドルゲドンは足を踏みならした。すると、部屋の奥から大量のバティーミウスがでてきた。ふうむ。トライデントの数から見て、およそ三十匹か[バティーミウスはそれぞれ小さめのトライデント(三つ又の槍)を装備しているのだ]。だがあいつら、前に見たやつらよりでかいぞ? ザーロックがつぶやく。


「あいつらは、フォーバーだ。バティーミウスが進化したもので、体は大きく、知能も優れていると聞いたことがある」


 話の途中で、ナオが兄さんとこそこそ話している。いったい、何をしてるんだ? すると、兄さんが呪文を唱えた。


「インビジョビリティ!」


 ナオの姿が消えた。どこからか声がする。


「みんな、心配するなナン。ファースの呪文で透明になったんだナン。さあファース、次の準備を」


 もうすでに兄さんは唱えていた。なぜこんなことをしてるんだよ。早くしないと、フォーバーどもが襲ってくるのに!


「ハースト!」


 何の呪文だ? ナオはどこにいるのか分からない。フォーバーは何かを仲間と話している。まだ、オレたちが敵だってのを認識してないのか? 突然、手前の一匹が苦痛の声をあげた。そして、むしゃむしゃという音がした後、そいつは消えてしまった。状況のつかめないオレたちに兄さんが説明する。


「まったく、ナオも大胆なやつだよ。腹が減ったからって、フェアリーを食うなんてな。それを知らないおろかなフォーバーたちは、おとなしくナオの胃袋におさまるってわけだ」


 そ、そんな作戦にでるとは! ナオはすでに、半分以上のフォーバーを食っていた。ハドルゲドンはわけのわからない言葉を叫びながら、ナオへ攻撃している。しかし、どんどん食われている。


「なあ兄さん、後にかけたハーストってのは、何なんだ?」

「スピードを十倍にしてくれる呪文だ。透明でしかも超高速だ。さすがのドラゴンも手も足も出ないさ」


 おしゃべりをしているうちに、すべて食いつくしたようだ。おそろしいな、ナオ・チャンは……。すると、ナオにかかっていた呪文が解けたようだ。姿がぱっと現れ、速度も普通に戻ったみたいだ。よたよたとこっちに走ってくる。だがナオは、背後で牙をむいているハドルゲドンに気づいていないようだ。[ナオは]手に変な紙をもっていて、彼はそれを口でひきさいた。顔には、ちょっとしたよゆうというか、遊び心が現れていた。その時、ハドルゲドンがナオをふみつぶした。


「ナオー!」


 オレはそこに行こうとするが、兄さんが肩をつかんだ。


「兄さん! 離してくれ!」

「おいおい。今あっちに行くと、確実に死ぬぞ?」

「だって……ナオが……」


 その瞬間、みんなの様子が変なことに気づいた。いや、ソロイも「助けにいくぞ!」とサリィやザーロックに言っているが、まったく反応がない。いや、どうもあの二人、笑いをこらえているようだ。


 オレは兄さんの手をふりほどき、ザーロックの胸ぐらをつかんだ。


「おい……ナオがどういう状態なのか、分かっているのか?」

「ちょっと、ソレイユ?」

「ソロイは黙っててくれ。ザーロック、お前は今、ナオがドラゴンにふみつぶされるところを見ただろう!」

「ああ、見た。いや、厳密にいうと見ていない」

「どういう意味だよ!」

「あそこを見ろ」


 いまにも笑い出しそうな彼が指さしたのは、ハドルゲドンの激しい攻撃で壁がくずれてできた岩だった。そこでおもしろい顔がひょこっとのぞいている。オレは息を飲んだ。ハドルゲドンは、まだおもしろい顔に気づいていない。[ナオを踏みつぶしたことで]満足そうにほえているだけだ。彼[(ナオ)]はとことこ走ってきて、全員の顔を見渡す。彼がにっと笑うと、兄さんとサリィとザーロックは大笑いした。オレは彼につめよる。


「オレは、てっきり[お前が]死んだのかと思ったよ!」

「ぎゃはは。ボクはそれをずっと見ていたナン。ソレイユがザーロックに話していた時、後ろで変な顔をやっていたナン。ザーロックは笑いをこらえるのに必死だったナンね?」

「ははは。ソレイユ、ナオが持っていた紙は、魔法がつまったマジックペーパーだ。これを使えば、すぐに魔法を使用することができる。ふみつぶされる瞬間にナオはこれを使い、テレポートしたんだよ。その後の状況は……あわれなくらいおもしろかったよ! ぎゃあはははは!」


 ザーロックはそのあとも大笑いした。


「じゃあ、ふみつぶされたのを見たけど見てないっていうのは……」

「ははは。はっはは、ぎゃはは!」


 彼はそれに答えることができず、死にそうなくらい笑った。ソロイもみんなにつられて笑っている。笑ってないのは、オレとドラゴンだけだ。


 ハドルゲドンはこっちを見て、呆然としている。オレたちヘーレゴニーの戦士は、死にそうなときでも、おかしいときに笑えるんだぜ?


「この私を怒らすと、ひどい目にあうぞ! ギシャー!」


 すごいでかさの声が部屋全体に響いた。大笑いしていた五人はやっと笑うのをやめ、戦闘態勢に入った。ここでオレの決めゼリフだ!


「さあ、ここからが本番だ! 楽しもうぜ」

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