17、謎と魔物と出会いと結晶(3)
オレたちが立っているのは、一つ目の『?』と書いてあった、とても謎めいた場所だ。ソロイの指摘通り、結界はなくなっていた。
「入るナンよ、みんな」
ゆっくりと中に入る。そこはずいぶんと明るい部屋だった。
真ん中に、頭に角があって背中に羽がある美しい白馬[がいたの]だった。
「ヒヒーン!」
馬が声を出すと、入り口に結界ができた。これでオレたちは、こいつと戦うしか道は残っていない。
「嫌な展開になりそうだな」
ザーロックのつばを飲みこむ音が聞こえた。そして白馬がオレの方に向かって突進してきた!
「よーし、死んでみよう!」
白馬が角を突き出す。しかしオレはそれを受け流して、足を切ろうとする。だがやつは飛んでそれをよけた。
「ショック!」
ナオの呪文で、雷が白馬の全身に流れた。しびれて動けないようだ。その間にサリィの呪文が完成する。
「フライ!」
「うおおーっ!」
うわっ。ソロイがとんでるぞ? 彼は自分の剣を白馬の方に向けて切りつけた。
「死ねー!」
ザクッ。しかし切りつけたのは足二本だけだ。切りつける瞬間に体をひねって攻撃をかわそうとしたんだな。白馬は血を流しながらゆっくりと降りてくる。そこにソロイが容赦なく切り捨てた。剣に当たったのは、首のようだ。白馬は地面に倒れると、なぜか消えてしまった[現実に存在する生き物ではなかったのだろう]。その場所で何かが光っている。ナオがそれを拾った。
「これは……結晶ナンか?」
「そうみたいだ。私の知識では、それはエレクトラムというものだ。主に大切な場所の鍵として利用されて、五つ集めないと魔力を発揮しないとか。ソロイ、地図で『?』はいくつある?」
「五つです。……ということは!」
オレが言葉をつなげる。
「全て集めれば、財宝が手に入るってことだな、ザーロック?」
「そうだ」
いいや、ザーロックは答えていなかった。返答したのは、オレの兄、ファース・ネバルだったのだ。
「兄さん、久しぶりだな!」
「ああ、お前が十三歳の時以来だな。あの頃とずいぶん変わったようだが?」
「そりゃあ、四年もすれば成長するよ。ところで、これを見てくれ。OSGにライジングソードだぜ!」
ファースはため息をつく。
「お前にそれが扱えるのか? いっそのこと、オレの剣とガントレット、交換してくれよ」
「やーだよ。そんなオンボロの使い古したやつなんて」
すると兄さんはにやっと笑う。
「ところで、この仲間はどうしたんだ?」
オレたちは順々に自己紹介していった。最後に兄さんが自分の名前を言うと、ザーロックは興奮した。
「あ、あなたはもしや、死域といわれるブラット・ワールドで、血の神といわれる怪物、ガーステンを一人で倒したという、伝説の魔法剣士、ファース・ネバルですか!」
「まあ、そういう事だな」
「な、なあザーロック、ターナグの町でいっていた、ブラット・ワールドの伝説って……」
「この方の伝説なんだ」
「ひえーっ!」
サリィが話に入ってきた。
「ところでファース、ポケットで光っているのは何でしょう?」
「これは結晶だ。ここの山で拾ったんだ。偶然、この山に登り、変な魔物からいただいた」
「結晶? もしやその魔物に会う前、結界がはられていませんでしたか?」
「その通りだ。大変だったよ、それを破壊するのは。至近距離から最強呪文を二発当てて、ようやく[結界の向こう側の部屋に]入れたんだからな。しかもそれを四回もくり返したから、死ぬ思いだったよ」
「じゃあ、兄さんが持っている結晶は四つなのか?」
「ああ、だけどあと一つが見つからなかったんだ。こいつは五つないとまるで使いものにならない、ただの石だからな」
おお、ザーロックと意見が同じじゃないか。だけど兄さん、残りの石は、オレたちが持ってるんだぜ?
そのとき、ナオが近づいてきた。
「あのー、五つ目の石はボクたちが持ってるナンよ」
すると、兄さんは少し感心したようだ。
「へえ、あの結界をこわすことができたんだ」
サリィがそれを否定する。
「いいえ。私たちはこの山の謎を解いて、結界をなくしたのよ。あなたは地図を持っているの?」
「いや、ない。……もしやお前たちが持っているのか?」
ナオが自分のリュックから地図をとりだした。兄さんはまたため息をついて言う。
「くそっ、これがあれば苦労しなかったのに。オレたちが今いるのは『四つに分かれし路』って場所だな。ん? 『宝道』だと……。そこに行ったが、宝じゃなくて、ルビーのように光った赤い目をもったネズミしかいなかったぞ」
「そうでしたか」
「よし。『隠された部屋』に行くぞ。そこがあやしい」
こうしてオレたちはそこに行くことになった。そこまで一分とかからず、侵入者を防ぐ結界もなかった。オレたちは兄さんを先頭に歩く。
この部屋の奥に、何かをはめる穴が五つ、あった。結晶をはめる穴みたいだ。足を踏み入れると、さっきと同じような声が聞こえた。
ジュエル・ハンターズよ
結晶をはめるがよい
「よし、ナオと兄さん。結晶をかしてくれ」
すると兄さんは驚きに満ちた表情で言う。
「ソレイユ……お前、ジュエル・ハンターズだったのか」
「え? 兄さんは、ジュエル・ハンターズを知っているのか?」
「噂で聞いた覚えがある。残念ながらオレは違うが、まさか弟がそうだったなんてな」
そしてオレは、サリィと協力して結晶をはめた。ふざけたナオが、結晶の一つをはめて、いきなり爆発して失神してしまうという事故[ジュエル・ハンターズ以外の者がそうした場合に被る罰のようなものだろう]があったが、それ以外は何事もなく穴にはめられた。そして、またあの声が響いた。
山の封印は解かれた
迷いし路の番人を倒し
財宝の眠りし部屋で裁きを受けるがよい
シューン!
オレたちは『迷いし路』に立っていた。前を見ると、『財宝の眠りし部屋』の入口と、やけに小さい番人がいた。
「あれは……スライムか?」
ソロイは笑いながら言う。
「がははっ。あんなのが番人なのか? このオレが切ってやる」
そう言って彼が剣をふり回そうとしたしたその時だ。兄さんが鋭い声で注意する。
「気をつけろ! 後ろだ!」
しかしソロイはそれを無視して切りつける。しかしスライムは消えて、一瞬でソロイの後方にまわり、呪文を使った。
「オーバードライブ!」
すると、スライムの頭のツノが光り、伸びてソロイの体を貫いた。
「ぐああ!」
「くそっ! ソロイ!」
兄さんは彼のもとに走る。オレは、剣をスライムへ向けて魔法を使う。
「エレキショック!」
バリバリッ。電撃が流れたが、まるできいてない。怒ったスライムはオレの方にすごいスピードで飛びはねてくる。こんなやつ、切ってやる! 剣をふると、うまくスライムの体に当たった。だが、やつは鋼鉄のようで、OSGでもダメージを与えられない。ちょうどそのとき、サリィが呪文を使う。
「マナミサイル!」
五つのミサイルがスライムに直撃した。でも、オレでも傷のつけられない体だぜ? やつはバカにしたようにわざと当たった。もちろん、なんともない。
その間、兄さんがソロイを抱いて戻ってきた。ザーロックが急いで回復させている。どうやら、背中を貫通したようだ。顔はすでに青白くなっているが、息はあるようだ。苦しそうにはあはあ言っている。
そういえば、いつのまにか周りをマグマが囲んでいた。どんどん地上がなくなっている。はやくこいつを倒さないと、死んでしまうかもしれない。
だが、スライムも命がけのようだ。オレたちをはやく殺さないと、自分も虫の息になってしまう。突然、スライムがしゃべった。
「死ねスラー!」
「ス、スライムが言葉を?」
兄さん側にスライムがジャンプした。だが、やつはもう一人の仲間に気づいてない。
「おりゃあっ!」
ナオだ。彼はスライムに抱きつき、地面にひきずり倒した。どっちもすぐに起きあがると、スライムがナオに向かってくる。
「くらえスラッ! スラスラアタック!」
なんと、スライムの体中を光が包み、最高速度で体当たりを試みる。それを見切ったナオは、横に転がってよけた。スライムはそのまま壁にぶつかり、マグマに沈んでしまった。
「……」
みんなあきれて、何も言えない。「おぼえてろよ……」という声が、聞こえたような気がする。
「……さあ、最後の戦いだ」
オレたちはついに『財宝の眠りし部屋』に入った。




