16、謎と魔物と出会いと結晶(2)
ボーンソルジャー三体がオレに向かってくる。一番手前のやつを直突きで首をとばした。しかしそいつはそんな事気にならないと言っているように、首なしのおぞましい形でオレの足をねらう。なんとか察知してジャンプしてよけたが、残る二体が襲いかかってくる。
「危ない、ソレイユ!」
ぴったりのタイミングで相手の剣を防いだソロイが言った。彼は流れるような動作で[相手の]腰を切った。そしてもう一体はオレが始末する。
「エレキショック!」
バリッ。ライジングの呪文をオレが唱え、骨を黒こげにする。山に入る前にザーロックに聞いた話を思いだす。
ソレイユ。その剣は世界中でも三つ四つあるかも分からない、魔法剣というものだ。人間と同じとまではいかないが、一応自我を持っている。だから、剣の持ち主の心の置き方一つでまるで性能が変わってしまうんだ。お前が力が欲しい、と思えば剣は成長し、新しい技とかも勝手に使えるようになるんだ。つまり、お前の心の大きさと剣の力の大きさは比例するってことだ。初めはあまり理解できないかも知れないが、剣が導いてくれるだろう[つまりソレイユは、ライジングソードによって魔法が使えるようになった、ということ]。
おっと、よけいな事を考えていた間に、サリィとザーロックがピンチだ。彼らは天井が低いのが原因で、大きな攻撃呪文が使えない。もし天井がくずれて出られなくなる可能性があるからな。だから小規模の魔法や防御呪文で敵を追い払っている。だが、骨の数が二十体以上もそこにむらがっているから、二人のエネルギーが無くなったらおしまいだ。オレはそこに行こうとするが、ソロイとナオを見て、息をのんでしまった。
二人のコンビネーションは抜群だ。骨がいくら多くても、実力の差は目に見えている。ソロイは一体ずつ的確に切りきざんでいる。ダンスのステップを踏むかのようによく動く足は、つねに敵の死角へ移動し、よゆうで剣を振り回している。
ナオはというと、自身の魔法で強化したのか、光っている剣でスパリスパリと切っていく。彼も体格なんて関係ないといわんばかりに足を必死に動かしている。なぜ全く疲れないのか、という疑問は彼らには通用しないだろう。
「すっげえや」
その光景にうっとりしていると、いきなりソロイがこっちを見た。その顔が青くなる。
「ソレイユ! 後ろを見ろ!」
何だって? オレはとっさにふりかえる。その時に見たのは、剣を上にかかげていつでも振り下ろせる状態のボーンソルジャーだった。
「うおおー!」
とっさに反応し、相手の両手を切り落とした。そしてそのすきに、久しぶりの技が発動だ!
「くらえ、ネバルクラッシュー!」
一瞬でばらばらになった。前方で骨がこっちに向かってくる。オレは理性を失い、倒れた骨どもの剣を拾って、力いっぱい投げつけた。
ドシュッ。正確に三本全部が骨の体を貫通した。OSGをつけているから、速さがハンパじゃなかった。オレが投げたのと、相手につきささった時間が同じに見えたぐらいだ。ようやくサリィたちが戦っている場所へ行くことができた。
「オレは……仲間たちを助けたい!」
次の瞬間、剣が光った。ザーロックの言う通り、剣が成長したのだ。そして、自然とオレは口を動かしていた。
「アンチ・アンデット!」
すると上から眩しい光が部屋全体に行きわたる。そして骨どもはわけのわからない叫び声をあげて、こなごなになった。仲間たちになんの影響もなく、数十体の骨をオレ一人で倒したのだ。みんながあ然とした顔だ。オレは元気よく言う。
「さあ! 次に行こう!」
オレたちが今いる部屋は『四つに分かれし路』だ。全員で探索した結果、『?』と『隠された部屋』には立ち入る事ができなかった。道はちゃんとあるけど、結界のようなものでふさがれている。そこでオレたちは少し休憩した後、予定通り『謎解きの近道』に入る、という結論になった。
サリィとザーロックはほとんど力を使ってしまったようだ。ぐったりし、すぐに眠りについた。
「おいソレイユ。お前も少し寝といたほうがいいぞ。オレが見張っているから心配するな」
「ああ。ありがとうな」
ソロイの言葉に従い、毛布の上にねころがった。何分かたったか分からないが、いつのまにか眠ってしまった。
オレに似ている少年が言う。
「おい。オレはあんたのせいで力を使いはたしてしまったんだ。責任はとってもらうぞ」
他の仲間はボーンソルジャーと戦っているから、こいつと暇つぶしに話してもいいだろう。となりでサリィがしゃべる。
「そうよ。あなたのせいで私は力を使いはたしてしまった。骨をなぜもっと早く殺してくれなかったの?」
オレの後ろで魔術師が話をしている。前に出会ったシュナイドとかいう男だ。
「私だってもう力がない。全て君のせいだぞ、チーフくん?」
ん? 今、誰だって言った? 見しらぬ男から渡された鏡におそるおそる顔を写してみる。
オレの顔は、ウシュナルク・オロドムの顔だった。
「うぎゃあああ!」
「おい、どうした? 大丈夫か?」
ザーロックの声で意識をとり戻した。
「いきなり大声出すから、思わず飛び起きちゃったナン。いったい、何のさわぎナン?」
「いいや、何もないよ。ただの夢だったんだ」
ふらふらと立ち上がった。ずいぶん寝たから、体がかなり回復していた。サリィとザーロックも充分休めたようだ。
「さあ! しっかり休息をとったから、敵と戦えるだろ? あの部屋でまた骨が来るかも知れないからな」
みんなそれぞれ不満を言いながら、屈強な戦士二人を先頭にして歩きだす。それほど長い距離ではなかったが、一歩一歩が重い。そして入り口の前まで来た。
初めにソロイがすっと入り口に入る。多少びくつきながらもナオがそれに続く。その後ろを緊張感ただよう魔法使い二人が剣士のあとについていく。最後はオレだ。剣を構えてゆっくりと入る。さあ、敵よ来い! ……あれ? 期待外れなことに、この場所に骨も魚も人形もなかった。
そのかわり、奥に光輝くモンスターの石像があった。見たことのない魔物だな? 首をかしげながらその近くによってみる。
そこには文字が書いてあった。
選ばれしジュエル・ハンターズよ
石像にふれるがよい
最低でも二つの心がふれるべし
その時 隠されし道が開くであろう
「ジュエル・ハンターズって、何だナン?」
ナオが深刻な顔でザーロックに質問する。
「私も聞いた覚えはない。石像の言葉をかんたんに説明すると、そのジュエル・ハンターズとかいう人間が二人以上ふれなければ謎は解けないらしいが……。一人ずつ、さわって確かめてみるか?」
「そうしよう。まずオレからやってみる」
そう言ってソロイは石像に手をつけてみた。だが、何の変化もないみたいだ。彼はがっくり肩を落とした。
「どうやら、オレじゃないみたいだな」
そのあとザーロックもふれてみたが、とくに変わったことはないようだ。残るはオレとサリィ、そしてナオだ。
「ジュエル・ハンターズが人間だけとは限らないかも知れないわ」
次はサリィか。ゆっくりと手でふれる。しかし結果は同じだった。ダメか……そう誰もが思った瞬間だ。
一瞬、光が強くなった。そして、部屋中に声が響いた。
選ばれしジュエル・ハンターズよ
残るはあと一つの心のみだ
「ま……まさか、サリィ?」
「……ええ。どうやら私がジュエル・ハンターズのようだわ。残りの心は、あと一つ」
彼女はオレとナオの方を向いた。オレが石像の近くに行こうとした時、ナオが先にふれていた。
「ナオ……!」
「ありゃ? 全然ダメだナン。最後はソレイユだけだナン」
ふー。ナオは最後がイヤだから、先にさわったんだな。オレはさほど期待しないでふれてみる。
そして、光が強くなった。
選ばれしジュエル・ハンターズよ
仲間とともに歩みを再開するがよい
な、何だってー! オ、オレ、ジュエル・ハンターズだったのか?
「おいおい。この石像、感知能力が鈍ってるみたいだぞ? このオレが? ジュエル・ハンターズなわけ、ないだろーが!」
近くの壁を思いっ切り殴りつけた。そこだけぽっかり穴があいてしまった。
「ソレイユ、落ち着け」
「オ、オレ……」
「この事実は、受け止めるしかないだろう。否定したからって、何も変わらないんだ」
「だけどオレ……サリィみたいに強くないんだぜ!」
「いいや。強さはここでは重要ではないだろう。ここで大事なのは、この真実をしっかり理解することだ。お前のおかげで、財宝を手に入れられるんだぞ? 誇りに思わないのか?」
「うっ……」
オレは何も言えなくなってしまった。確かに、ザーロックの言う通りだ。ちらっとサリィの方を見る。すると彼女はオレの視線に気づき、こっちに寄ってきた。
「この前のオークに助けてもらった時の出会いは、ユピネーが定めたものみたいね」
「……そうみたいだな」
ソロイがオレの肩に手を置いた。
「まあ、先に進めるんだから、いいじゃないか。よし、みんな、まずはさっき入れなかった所に行ってみよう」
そう言うと、彼はさっさと部屋を出た。オレたちも無言でそのあとについていった。石像は、力強く輝いていた。
少年よ
強くなるがよい
「今、何か聞こえなかったか?」
「いや、全然」
オレがザーロックに質問したが、聞こえなかったらしい。どうやら、オレだけに石像がメッセージを送ったんだ。強くなれ、だと? よーし、強くなってやろうじゃないか。オレは喜んで、この定めを受けいれてやるぜ!




